2011年1月3日月曜日

週刊医学界新聞:疫学研究

週刊医学界新聞の最新号(第2910号 2011年01月03日)で疫学研究の特集が組まれています。その中に、【新春座談会】疫学研究のこれから――いっそうのエビデンス創出をめざして、という記事があります。

「臨床と疫学の相互理解を深めるために」の中から一部引用します。以下、引用です。

上島 私は若いころ,臨床医の側から疫学を学びに来るべきだと思っていたのですが,それは間違いでした。お互いに意見を戦わせて理解し合うことから交流が始まるので,やはり疫学者側が臨床に出かけていくことも,今後は非常に大事になると思います。

 私自身,高血圧学会など臨床の学会に参加し,臨床医と交流するなかで疫学の重要性を伝えられたと思います。そしてそれが,疫学者も携わるガイドラインづくりにつながりました。

二宮 若い臨床医に話を聞くと,疫学自体に興味は持っています。ただ,疫学を体系付けて学べるシステムが医学教育にないことは問題です。

上島 確かにそれはありますね。

二宮 一つの症例報告がケース・シリーズとなり,ケース・コントロールからコホート研究へつながっていきます。学生には「いざ研究したいときに備え,勉強するように」とよく話していますが,公衆衛生学で統計を習うだけでは疫学研究を行うことは難しいでしょう。やはり一度,実際の臨床研究を経験するなど医学教育を充実させていく必要性があると思います。

以上、引用です。

自分の過去を振り返ってみても、学生時代に疫学や公衆衛生学に興味があったとはとても言えませんでした…。確か追試だった気がしますし成績も散々だった記憶があります…。

一定の臨床経験をしてから、EBMをある程度きちんと実践できるようになりたいなあ、臨床研究をどうせやるのならきちんとやりたいなあと思うようになったのが、臨床疫学に関心を持つようになったきっかけです。

ですので、若い臨床医が「疫学を体系付けて学べるシステムが医学教育にないことは問題」だと感じます。卒後3-10年目程度の臨床医がきちんと疫学を学びたいと思っても、School of Public Healthで私が知っているのは、東京大学と京都大学しかありません(違ったらすみません)。

東京大学大学院医学系研究科公共健康医学専攻専門職学位課程

京都大学医学研究科社会健康医学系専攻

何らかの科で専門医を取得する前後あたりに、疫学をきちんと学習できる場があればよいのですが、そのような場は少ないと思います。例えばリハ科専門医の場合、日本リハ医学会で疫学を学習できる場はほとんどありません。そのような場を作ってほしいと日本リハ医学会の学会誌に会員の声として提案したことがありますが、その後状況に変わりはありません。今でもそのまま通じるくらいです。

「リハビリテーション科医師のための臨床研究デザイン塾」の開催を

私は約6年前に「第1回プライマリ・ケア医のための臨床研究デザイン塾」に参加する機会があり、その後も合計4回開催された「プライマリ・ケア医のための臨床研究デザイン塾」にすべて参加することができましたので、疫学の基本的な知識を多少は習得できました(と思います…)。

もちろん5日間で習熟することはできませんので、今でも不十分な知識ですが、それでももし参加していなかったら…と思うとぞっとします。ただ残念ですが、「プライマリ・ケア医のための臨床研究デザイン塾」は第4回で休塾となっています。現在は、「腎臓・透析医のための臨床研究デザイン塾」が主となっています。

i-hope 臨床研究デザイン塾™

私に解決できる課題ではありませんが、若い臨床医が疫学を体系付けて学べるシステムがもっと世の中にたくさんあれば、質の高い臨床研究も増えるし、若い臨床医のキャリア満足度も高まるだろうに…と思います。

一方、医師以外の医療職に関しては、大学院による多少の違いはあるにせよ博士課程まで進学して卒業すれば、疫学の知識に習熟して、臨床研究を自ら立案・実施し、原著論文執筆まで行えるようになるはずです。この点では臨床医より恵まれていると私は感じます。興味のある方にはぜひ大学院に進学してほしいと思います。

2 件のコメント:

  1. 匿名1/14/2011

    SPHは東大、京大のほかにも、九州大学、大阪大学、長崎大学にあり、4月から帝京大学にもできると聞いています。

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  2. コメント、どうもありがとうございます。そんなにSPHが増えているとは知りませんでした。日本発の質の高い臨床研究が増えそうですね。

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