安岡正篤著、人生の五計 困難な時代を生き抜く「しるべ」、PHP文庫を紹介します。
http://www.php.co.jp/books/detail.php?isbn=978-4-569-66386-9
五計とは、いかに生き(生計)、身を立て(身計)、家庭を築き(家計)、歳を重ね(老計)、そして死を迎えるか(死計)です。人生に対する五計が重要であり、歴史からの教訓が数多く紹介されています。身に染みる部分も少なからずありました。
この中でも「身計」の教師憲章が気になりましたので、引用紹介させていただきます。以下、97頁からの引用です。
「教師憲章」
1、教育は職業的・社会的成功を目的とする手段ではなく、真の人間を造ることを使命とする。
2、子弟が将来いかなる地位に就いても人から信用せられ、いかなる仕事に当たっても容易に習熟する用意のできておる、そういう人間を造ることが教育の主眼である。
3、将来を担う子弟が、明日の行路を誤たず、信念と勇気をもって進むために要するものは、単なる知識・理論や技術ではなく、人間の歴史的・恒久的な原理であり、典型である。
4、教師は漫りに人を教える者ではなく、まず自ら善く学ぶ者でなければならぬ。
5、教師は一宗一派の理論や信仰を偏執して、之を子弟に鼓吹してはならない。
6、教師は学校と教壇をなおざりにして、政治的・社会的活動をしてはならない。
7、現代が経験している科学・技術・産業に於ける諸革命と相応する理性的・精神的・道義的革命が達成されねば、この文明は救われない。この「革命への参加」は、教師において、いかなる階級の奪権闘争でもなく、もっと内面的・霊的な創造でなければならぬ。
以上、引用です。医療系の講師をしていますので、教育というと専門教育、職業的教育、社会的教育になりがちでした。しかし、1から3をみると、職業教育の前提として人間教育が必要であることが明らかにされています。教育そのものが職業教育だと思ったら大きな間違いだそうです。
4に関してはまったく同感です。「人は教えるときにもっともよく学ぶ」といいますし、学生以上に学ばなければ本来、教えることなどできるわけがありません。
5は、教育の仕事というものは、自分の好きな菊や蘭を作るのと違って、これはいろいろな農作物(米、麦、菜っ葉、大根、蕪、人参など)を作るのと同じことだとあります。世界に一つだけの花に似ていますね。
7はやや難しいですが、104ページには以下のような記載があります。これを実践しなさいという意味に私は解釈しています。
志のある者が、それぞれの場において、自ら信じるところを実践するよりほかに世の中を良くする道はないのであります。伝教大師のいわゆる「一灯一隅を照らす」と言う、自ら一灯となって、自らの坐しておる一隅を照らす。
つまり、一燈照隅、万燈照国ですね。教育現場で学生をみていると、理想と現実は程遠いと感じることもありますが、それでも少しでも教師憲章に近づけるようにしないといけないと思います。来週から医学生の実習が再開しますので、少しでも実践できるよう頑張ります。
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