日本老年医学会雑誌に栄養障害の総説論文が掲載されています。第52回日本老年医学会学術集会記録Meet the Expert 1:老年症候群の見方をまとめた論文です。
荒木 厚:“栄養障害”.日老医誌 (2010); Vol. 47: 530-533
下記HPで全文見ることができますので、ぜひご一読ください。
http://www.jstage.jst.go.jp/article/geriatrics/47/6/530/_pdf/-char/ja/
低栄養に対する栄養治療のエビデンスとして、「高齢者に対して蛋白とエネルギーの補充を行うと,急性期病院では約34%の死亡率の減少が見られている.とくに低栄養の患者,後期高齢者,400 kcal 以上補給した患者で有意な死亡率の減少が見られた.」とあります。
悪液質の定義として、Evansらの定義が紹介されています。「基礎疾患の存在下に少なくとも12カ月以内の5% 以上の体重減少(またはBMI:20 kg m2未満)に加えて以下の3 つの基準を満たすことを悪液質の定義としている15):①筋力の低下(最低3分位数),②疲労,③食欲低下(通常の摂取の70%以下),④除脂肪体重の低下(MAC またはDXAで定義),⑤生化学検査の異常:a)炎症マーカーの増加(CRP>0.5mg/dl ,IL-6>4.0pg/ml ),b)貧血(<12 g/dl),c)血清アルブミン<3.2g/dl」
悪液質を何らかの定義で診断することは、とても重要です。私は普段、前悪液質の診断基準を使用していますが。
悪液質の治療として、「今後注目すべき薬剤としてω-3脂肪酸,グレリン,メラノコルチン4-受容体(MC4-R)拮抗薬が挙げられる.」とのことです。ω-3脂肪酸とグレリンはこのブログでも何回か紹介しています。
メラノコルチン4-受容体(MC4-R)拮抗薬は私は初めて聞きました。「腺癌を移植したマウスに経口で選択的MC4-R 拮抗薬(SNT207858)を投与すると,食物摂取が増加し,体重,除脂肪量,脂肪量の減少を防ぎ,悪液質に対して有効であることが明らかとなっている」そうです。人での臨床研究はこれからのようです。
悪液質に対して単純な栄養サポートだけでは改善は困難なので、このような薬物療法や運動療法を組み合わせた包括的治療が重要です。これは、COPDに対する包括的呼吸リハに似ている気もします。
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