2010年11月3日水曜日

摂食・嚥下に関わる筋肉群とサルコペニア

今日は、摂食・嚥下に関わる筋肉群とサルコペニアの関係について考えてみます。

摂食・嚥下に関わる筋肉群は大きく分けて7つあります。

表情筋
咀嚼筋
舌筋
舌骨上筋
舌骨下筋
口蓋筋
咽頭筋

サルコペニアではこれらの摂食・嚥下に関わる筋肉の筋力と筋肉量が減少することで、摂食・嚥下障害となりえます。

表情筋、口輪筋のサルコペニアで口の開閉や咀嚼時の食塊保持が困難となることがあります。

咀嚼筋のサルコペニアで咀嚼機能が低下します。神経性食思不振症で咀嚼困難を訴える方がいます。

舌筋のサルコペニアで舌の運動機能が低下しますので、食塊形成や食塊の咽頭への送り込みが困難となります。

舌骨上筋のサルコペニアで開口や舌骨の挙上が困難となります。サルコペニアによる嚥下障害で一番問題となるのは、舌骨や喉頭の挙上が少なくなることで咽頭残留や誤嚥を生じることだと私は考えています。

舌骨下筋、甲状舌骨筋のサルコペニアで甲状軟骨の挙上が困難となります。

口蓋筋、口蓋帆挙筋のサルコペニアで軟口蓋の挙上が困難となり、鼻咽腔閉鎖不全となることがあります。

咽頭筋のサルコペニアで咽頭の挙上や咽頭腔を狭くすることが困難となり、嚥下圧が低くなり咽頭残留の増加につながります。

摂食・嚥下は多くの筋肉による協調運動ですので、これらの筋肉がサルコペニアになれば当然、摂食・嚥下障害となります。ただ臨床では、舌骨や喉頭の挙上が少ないことと咀嚼機能の低下が目につく印象です。その他の嚥下に関わる筋力低下も重なって、食塊形成困難、咽頭残留、誤嚥につながっているのだと思いますが、サルコペニアの影響が出やすい筋肉と出にくい筋肉があるのかもしれません。

摂食・嚥下に関わる筋肉のサルコペニアによる嚥下障害の治療として、安易に筋トレ、レジスタンストレーニングに走ってはいけません。サルコペニアの原因が、加齢、活動、疾患、栄養のどれなのか複数なのかを評価したうえで、それに見合った治療方法を選択することが必要です。

低栄養によるサルコペニアに対して筋トレをすれば、適切な栄養管理がなされていない限り、筋肉量はさらに低下して嚥下障害は悪化します。サルコペニア=廃用ではありませんので、十分な留意が必要です。筋トレをしてよい状況であることを確認してはじめて、各筋肉の筋トレを行ってください。

2 件のコメント:

  1. 先生、こんなページを持っていらしたのですね。
     今日は午前中の講義、ありがとうございました。 
     かかわっている方に、咽頭がんの治療後から嚥下障害になり、主治医からは胃ろうにしないならもう診ない(トある大学病院)と、とんでもないことを言われ、誤嚥性肺炎でしょっちゅう入退院を繰り返している方がいます。 私は何とかリハビリできないのか、と考えていましたが、もちろん低栄養、サルコペニアですね。
     栄養のこと、もっと考えていきます。
                         帰り際の質問者より

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  2. どうもありがとうございます。
    もちろんリハで機能維持をはかることも必要ですが、低栄養が著明でしたらリハによる機能改善は困難ですね。栄養管理しつつリハをどう進めるか、リハ栄養的に考えていけるとよいと思います。
    今後ともよろしくお願いいたします。

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