2010年11月28日日曜日

口腔ケアの定義再考を:日本口腔ケア学会

昨日は、第7回日本口腔ケア学会のシンポジウムで、「口腔機能へのアプローチ-リハビリテーション栄養の視点から」という発表をしてきました。

・栄養ケアなくして口腔リハなし。
・口腔リハにとって栄養はバイタルサインである。
・栄養を評価できなければ、口腔機能訓練(筋トレなど)はやめてください(口腔清掃は可)。

をポイントとして、口腔のサルコペニアの話などをしました。

ただ同時に、口腔ケアの定義再考を、という問題提起もしてきました。その内容を記載します。

日本口腔ケア学会のHPを見ると、口腔ケアの定義として以下のように掲載されています。

口腔ケアとは、口腔の疾病予防、健康保持・増進、リハビリテーションによりQOLの向上をめざした科学であり技術です。具体的には、検診、口腔清掃、義歯の着脱と手入れ、咀嚼・摂食・嚥下のリハビリ、歯肉・頬部のマッサージ、食事の介護、口臭の除去、口腔乾燥予防などがあります。

リハを理解している人が見れば、この定義に疑問を感じますよね。口腔ケアの中に嚥下リハが入ってしまっています。

リハとは、機能障害の改善を目指すだけでなく、能力障害あるいは社会的不利を起こす諸条件の悪影響を軽減させ、障害者の社会統合を実現することをめざすあらゆる措置を含むものです。そうすると、
機能訓練はリハのごく一部でしかない。
口腔ケアもリハのごく一部でしかない。
ということになります。

摂食・嚥下リハの例として以下のようなものを紹介しました。

認知、頸部・体幹、呼吸機能を評価しこれらと摂食・嚥下障害を改善させる。
食事の時の姿勢を調整する。
嚥下調整食を作成して提供する。
嚥下調整食の配食サービスを行う。

これらは口腔ケアと言えるでしょうか。私は言えないと考えます。

したがって、日本口腔ケア学会の口腔ケアの定義は誤っていると言わざるをえません。というようなことを発表してきました。

その後、複数の方から口腔ケアの定義を作って下さいよと言われましたが、さすがに私にはできません(笑)。ただ、日本口腔ケア学会の定義から、私が不適切と思うところを削除すると以下のようになりました。異論は多々あるかと思いますが、ここに記載します。

口腔ケアとは、口腔の疾病予防、衛生状態保持・増進をめざした技術です。具体的には、検診、口腔清掃、義歯の着脱と手入れ、口腔機能訓練、歯肉・頬部のマッサージ、口臭の除去、口腔乾燥予防があります。

まずは口腔ケアと摂食・嚥下リハの違いを理解すること、リハ、栄養、リハ栄養の概念、考え方、重要性を理解することが大切だと私は考えています。ですので、多くの歯科医師、歯科衛生士に「リハビリテーション栄養ハンドブック」を読んで学習していただければと思います。

今度、12月1日(水)19時30分から大和歯科医師会会館(大和市深見西2-1-25)で「摂食・嚥下障害のリハビリテーションと栄養管理」という講演をしてきます。平日の夜ですが、多くの歯科医師、歯科衛生士の方に参加していただけるとありがたいです。よろしくお願い申し上げます。

2 件のコメント:

  1. DR.ARICA11/28/2010

    口腔ケアには,基質的口腔ケア(今まで言われていた歯磨き,プラス舌や粘膜も含めた清掃)と機能的口腔ケア(ケアですから医療ではない.口の機能のケア)がある,と10数年前に元ボスが色々な所でお話ししていたのが,口腔ケアの中に摂食・嚥下リハがあると思われてしまった様に思います.学会のHP拝見しましたが,役員の上の方のお名前の方は障害者歯科には長く携わっていらっしゃいますが摂食・嚥下リハには後から入ってこられた方なので,ぶれてしまっているのかと感じました.歯科の中でも間違った理解をしている方もいる様に感じていましたので先生のご指摘は一石を投じたものと思います.

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  2. DR.ARICA11/28/2010

    口腔ケアには器質的ケア(いわゆる歯磨きプラス,舌や粘膜の清掃も含めたケア)と機能的ケア(ケアなので治療ではなく,口の役割,機能のケア)がある,と十数年前に元ボスが話していた事から口腔ケアについての誤解が生じた様に思います.歯科関係者の中にも口腔ケアの中に摂食・嚥下リハがあると勘違いしている方々もいらっしゃる様に感じる事があるので先生のお話は一石を投じたものと思います.ありがとうございました.

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