黒田裕子の看護研究 Step by Step 第4版を紹介します。第4版は医学書院ですが、第3版は別の出版社です。こんなこともあるのですね。
http://www.igaku-shoin.co.jp/bookDetail.do?book=84379
看護研究についてわかりやすく紹介されています。量的研究と質的研究のバランスもよいと考えます。質的研究ではリサーチクエスチョンがPECOにならないので、PECOの紹介がないのだと思います。臨床研究の初心者~初級者におすすめできる書籍です。
第17章の新しい看護研究の動向は、学ぶことが多かったです。特に混合研究法とメタ・シンセシスに関しては今回、初めてきちんと知りました。どちらも質的研究が関与する研究方法です。以下、混合研究法とメタ・シンセシスの紹介(引用)です。
混合研究法は、質的研究と量的研究の両者のアプローチを用いるものです。トライアンギュレーションデザイン、埋め込みデザイン、説明的デザイン、探究的デザインの4つの種類に分類されるそうです。
トライアンギュレーションデザインは、質的研究と量的研究を、同じテーマで別々に実施して、おのおの別の結果に基づいて解釈していきます。学際的な研究に向いているようです。
埋め込みデザインは、量的な研究方法論の枠組みの中に質的な研究を埋め込む、もしくは質的な研究方法論の枠組みの中に量的な研究を埋め込みます。メインは前者では量的研究、後者では質的研究になります。
説明的デザインは、まず量的なデータの収集と分析を行い、次に質的研究が、先の量的研究の結果につながるようにデザインします。
探究的デザインは、まず質的なデータの収集と分析を行い、次に量的研究が、先の質的研究の結果につながるようにデザインします。たとえば質的なデータから得られた内容から尺度を作り、調査票を使用した量的な研究を行う場合です。
メタ・シンセシスとは、複数の質的な一次研究の結果を統合して、ある目的について、新たな拡大された理解をもたらす一連の方法論的アプローチを意味します。要するに、質的研究のメタ・アナリシス(系統的レビュー)といえます。
メタ・シンセシスの方法論として、メタ・エスノグラフィがあります。これは看護でメタ・シンセシスを実施する際には、最も一般的な手法だそうです。
個人的には、質液研究を統合することに関しては、賛否両論がありそうな気もしますが…。
私が知る限りですが、JSPENや日本リハ医学会、日本摂食・嚥下リハ学会で、混合研究法やメタ・シンセシスによる発表は聞いたことがありません。今後もしばらくない気がします。私の守備範囲では、日本プライマリ・ケア連合学会なら聞ける可能性がると感じます。
目次
序
初版の序
第1章 エビデンスに基づく看護実践をめざす看護研究
近代看護の起こりから現代に至る看護研究の発展と看護実践とのつながり
EBNおよびEBNPと看護研究の関係
看護の研究って,何だろうか?
第2章 看護実践のなかから生まれる“研究疑問”
それは《研究》によって明らかにしなければならないような《疑問》だろうか
-研究疑問になりうるものとそうでないもの
研究に取りかかろうと考えたとき-看護の知識体系と看護研究の関係
研究テーマを明確にするまでのプロセスを踏んでみよう
研究テーマ絞り込みの実際例から-ナースQの場合
研究テーマの絞り込みプロセスを検討する
研究テーマの絞り込みで混乱してしまったナースQの場合
“研究”では一つひとつを科学的に探究する
研究対象にすべきこと,そして業務改善すべきこと
研究テーマの絞り込みで陥りやすい問題
研究テーマの絞り込み-研究プロセスの最初の大きな一歩
研究プロセス全体の時間的な流れ
第3章 看護研究を行ううえでの倫理的な問題とその対応
研究を行ううえで配慮すべき倫理的な側面の問題
インフォームド・コンセント-研究対象者の自由と意思の尊重,そのための情報提供
個人情報の保護,プライバシーの尊重
基本的な倫理原則
そのほかの倫理的な諸問題の対応
看護研究を行う理由についてのナースのモラル
研究指導者としてのモラル-研究指導者が研究者になってしまう危険
おわりに
第4章 研究にとって欠かせない文献検索と文献検討
文献検索と文献検討-それってなぜ必要?
文献って何?
一次文献と二次文献
インターネットでデータベースを使いこなす
文献検索するときのスキルって何?
一次文献を入手したら
もう一度,研究にとっての文献の必要性を考える
いざ,文献検討を実践しよう!
第5章 看護研究の方法を理解しよう
研究デザイン
量的な研究と質的な研究の特徴
量的研究と質的研究で使用される中心的な用語の比較
量的研究と質的研究のプロセスの大まかな流れ
量的研究と質的研究の厳密性(rigor)の違い
第6章 量的なアプローチの研究デザイン
量的アプローチの研究デザインを考える
《記述的な研究デザイン》は“実態探究型”
《相関関係的な研究デザイン》は「介入なし」「標本のコントロールあり」
《準-実験的な研究デザイン》と《実験的な研究デザイン》
第7章 多様な量的なアプローチの研究方法をみてみよう!
実験的なデザイン
非-実験的な研究
第8章 量的なデータの分析を試みる
分析のためのデータ処理と入力
質問紙のモデルを使って分析を行う前に……
分析:まず実施するべき“記述統計量”-一つひとつの変数の分析
対象者のデータから-母集団と標本
分析:この研究の目的である2つ以上の変数同士の分析-“推測統計量”へ
正しい統計処理と適切なデータ入力のために
第9章 データ収集の方法としての質問紙法
質問紙によるデータの収集
質問紙法によって得られるデータの分析とは?
データ収集を実施する前に知っておくべきこと
第10章 質問紙を自分で作成する
研究例の紹介-筆者の研究から
質問紙を開発する場合,開発しない場合の手続き
質問紙の作成-病気をもちながらの生活管理の場合
第11章 質的なアプローチの研究方法
質的なアプローチの研究とは……
質的な看護研究はどのように今日まで発展してきたか
どのような場合に,質的なアプローチの研究のタイプを選択するか
量的研究プロセスとの違い
質的研究の特徴
質的研究における“比較(comparison)”
質的研究における“研究の場(setting)”と“時間枠(timeframe)”
質的研究におけるサンプリング
質的研究におけるサンプルサイズ
質的研究におけるデータ収集
データ収集においてフィールドで出くわす問題
質的研究のデータ収集方法としての自己報告データ
面接によって質的なデータを収集する
参加観察法によって質的なデータを収集する
第12章 多様な質的なアプローチの研究方法をみてみよう!
事例研究(ケース・スタディ)
どのような動機で事例研究に取りかかるか
事例研究はどのようなステップをたどるか
グランデッド・セオリー法
エスノグラフィー
現象学的アプローチ
第13章 研究計画書を作成する
研究計画書を作成する意義
研究テーマを書く!
研究動機と研究目的を書く
研究しようとする問題の背景を書く
研究の意義を書く
研究方法を考える
役割分担を考える
研究経費を考える
研究計画書の作成例
第14章 研究論文としてまとめる
論文とは……
論文の全体構成を考える
論文の各部分を構成するうえで大切なこと
結果をまとめるとき
考察をまとめるとき
さまざまな約束事
第15章 量的なアプローチの研究を科学的な視点でクリティークする
研究のクリティークとは……
看護研究のクリティークの目的と知的クリティーク
看護研究の知的なクリティークの対象
量的な研究アプローチの研究論文に対する知的なクリティークの具体的な方法
論文例1
第16章 質的なアプローチの研究を科学的な視点でクリティークする
質的研究をクリティークするための技能
最後に,“研究の意義”をクリティークする
論文例2
第17章 新しい看護研究の動向
トランスレーショナル・リサーチ(Translational Research)
混合研究法(Mixed Methods Research)
メタ・アナリシス(meta-analysis)
メタ・シンセシス(meta-synthesis)
APPENDIX 付表
INDEX 索引
0 件のコメント:
コメントを投稿