2010年11月30日火曜日

PT・OT・ST・歯科衛生士のNST専門療法士の方へ

今年のJSPENのNST専門療法士試験に合格されたPT・OT・ST・歯科衛生士の方たちはいらっしゃいますでしょうか。

私は3年前に神奈川NST専門療法士連絡会を立ち上げて、先週まで神奈川NST専門療法士連絡会の会長をしていました。また現在は、JSPEN首都圏支部NST専門療法士セミナー実行委員長として、来年4月16日(土)の第1回JSPEN首都圏支部NST専門療法士セミナーの企画を準備しています。

今度はPT・OT・ST・歯科衛生士のNST専門療法士が集まる場を、全国単位で作りたいと考えています。今回の試験で合格された方たちはモチベーションの高い人が多いはずです。ただ、どこにどんなPT・OT・ST・歯科衛生士のNST専門療法士がいるのかはほとんどわからないため、顔の見える関係作りが難しい状況です。

集まる場を作る目的としては、

・PT・OT・ST・歯科衛生士のNST専門療法士の顔の見えるネットワークつくり
・PT・OT・ST・歯科衛生士のNST専門療法士取得後の学習機会の作成
・リハ栄養に関する情報交換と学習

の3つを考えています。

できれば来年2月17-18日の名古屋でのJSPEN2011のときに、できる範囲でPT・OT・ST・歯科衛生士のNST専門療法士で集まりたいと考えています。もしコミュニティの中にPT・OT・ST・歯科衛生士のNST専門療法士の方がいらっしゃいましたら、私宛のメールかこのブログへのコメントという形で教えていただけると嬉しいです。

また、PT・OT・ST・歯科衛生士で来年、NST専門療法士を受験するつもりという方も、よろしければご連絡を頂けるとありがたいです。

栄養に関心を持つリハ関連職種のネットワークを作りたいと考えていますので、ご協力の程何卒よろしくお願い申し上げます。

サルコペニアとダイナペニア

サルコペニアsarcopeniaは以前から紹介しているように、狭義では加齢に伴う筋肉量の低下(age-related loss of muscle mass)、広義ではすべての原因による筋肉量と筋力の低下としています。

一方、ダイナペニアdynapeniaという言葉もあります。これは加齢に伴う筋力の低下(age-related loss of muscle strength)のことを言います。筋肉量だけでなく筋力も加齢とともに低下します。

筋力と筋断面積の相関は高いと言われていますが、狭義のサルコペニアとダイナペニアは異なる概念になります。狭義のサルコペニアよいもダイナペニアのほうが機能低下へのインパクトは大きいという意見もあります。

私は今のところ広義のサルコペニア(加齢、活動、疾患、栄養による筋肉量と筋力、身体機能の低下)を好んで使用しています。広義のサルコペニアの中にはダイナペニアも含まれますので、臨床現場では使いやすいと思います。

広義のダイナペニアという概念は、私は聞いたことがありません。ただ、加齢、活動、疾患、栄養を含めすべての原因による筋力低下のことを広義のダイナペニアと呼んでもよいのかもしれません。例えば握力で男性30kg未満、女性20kg未満なら、ダイナペニアの可能性があります。

現状ではサルコペニアやダイナペニアの統一した診断基準がありませんし、概念自体統一されていません。個人的には、用語が多いと混乱しやすいので、広義のサルコペニアの方向で統一化が進んでくれればと考えています。

2010年11月29日月曜日

マッキンゼー流プレゼンテーションの技術

今日はジーン・ゼラズニー著「マッキンゼー流プレゼンテーションの技術」東洋経済新報社を紹介します。

http://www.toyokeizai.net/shop/books/detail/BI/905225706c39aa961fa6bcf17c0713f0/

アマゾンでは半額程度で中古品を入手できます。

最近、改めてプレゼンスキルを意識することが多くなりました。いろんな方の講演や発表を聞いていて、素晴らしいと思うことがある一方、改善の余地が少なくないなあと思うこともあります。プレゼンは中身が大事といっても、伝わらない話し方では意味がありません。

この書籍は2004年発刊ですので、PowerPointの作り方はそれほど参考になりませんが、プレゼンのスキルの学習には十分なります。目次を見ればわかりますが、この書籍でのプレゼンのポイントは3つです。

・状況を明確にする
・プレゼンテーションを設計する
・プレゼンテーションを実施する

当たり前ですが、実施する前に状況を明確にして、プレゼンを設計しなければ、よいプレゼンはできません。実施するまでにプレゼンの可否の半分以上は決まっているといえます。時間厳守など基本的な項目もありますが、基本の確認は大事ですし、プレゼンに自信、確信、熱意のいずれかが足りないと思っている方におすすめします。

最も参考になるのは、18-19ページの聞き手のための権利宣言ですので、これを引用紹介します。プレゼンの設計の段階で、これを繰り返し意識することで、より質の高いプレゼンが可能になります。私にも耳の痛い項目があります…。

目的
・プレゼンテーションの結果として、自分に何を行ってほしいのか、何を考えてほしいのかを知る権利。
・何故自分の関与が必要なのかという理由を知る権利。
・自分がプレゼンテーションを懸命に聞いている時間に相当する価値を受け取る権利。

尊敬
・知的な内容に貢献する権利、そして成果の割り当てを受け取る権利。
・瞬時の決断を迫られることなく、考える時間を与えてもらう権利。
・へりくだった話し方や見下した話し方をされることなく、同時に、自分の経験や知性や知識に敬意を払った話し方をしてもらう権利。
・自分の質問に答えられない場合には、その旨を正直に言ってもらう権利。
・(この権利を行使する人はほとんどいないが)退出することで不満を表し、熟慮の乏しいプレゼンテーションに対しては、退席をする権利。

タイミング
・プレゼンテーションにかかる時間を前もって知らせてもらう権利。
・忙しい日程を繰り合わせて出席するのだから、時間通りに開始し、時間通りに終了してもらう権利。
・時々休憩時間をもらう権利。生理的要求のためばかりとは限らない。

内容
・自分がどの方向に向かうのか、プレゼンテーションがどんな風に進行していくのかをあらかじめ知らせてもらう権利。
・未解決の懸案事項は何か、話し手の立場に対する論理的根拠、またこの論理を支える事実を知る権利。
・重要な情報を先に知る権利。予期せぬ結末はO・ヘンリに任せよう。

資料
・会場のどこに座っていようとも、オペラグラスなしでも示される資料の文字がすべて読める権利。
・複雑な資料については説明を受ける権利。

フレキシビリティ
・ディスカッションのためにプレゼンテーションを中断し、全員が共通の理解に達するまで補足する権利。
・「後ほど説明を」と延期されるのではなく、いつでも質問でき、質問をしたときに答えてもらう権利。

プレゼンテーションの実施
・部屋の後ろのほうにいてもプレゼンターの話を聞くことができる権利。
・派手な身振り手振りに気を散らされることなく、プレゼンテーションの内容をよく理解する権利。
・プレゼンターの後頭部だけでなく、顔も見る権利。プレゼンターはスクリーンに向かっていても、声が跳ね返って届くと思っているが・・・。
・言いたいことを述べる上で効果を上げ、聞き手の緊張を解きほぐし、両者が緊密な関係をつくる上で役立つ場合に限り、ユーモアのセンスを楽しませてもらう権利。

エンディング
・同意に達した事柄や次にくる事態を明示してもらう権利。
・何か意義あることを成し遂げたという実感をえる権利。

目次
第1章 状況を明確にする
 1.なぜプレゼンテーションを行うのか?
 2.説得したい相手は誰か?
 3.持ち時間はどれだけあるのか?
 4.どんな機材・媒体を使うべきか?
第2章 プレゼンテーションを設計する
 1.メッセージを決定する
 2.ストーリーラインを念入りにつくる
 3.オープニングを書く
 4.エンディングの計画をたてる
 5.資料を活用する
 6.ストーリーボードをつくる
第3章 プレゼンテーションを実施する
 1.優れたプレゼンターは自信、確信、熱意をもっている
 2.リハーサルを行う-欠点を捜し求める
 3.設備や器具を準備する
 4.実施の技術を駆使する
 5.資料をうまく活用する
 6.質問に答えることに慣れる
 7.ユーモアを真面目に使う
 8.沈黙に耳を傾けよ
まとめ プレゼンテーション・チェックリスト
  状況を明確にする
  プレゼンテーションを設計する
  プレゼンテーションを実施する
付録 配付資料を効果的に利用する
  ミーティングに向けて配付資料を準備する
  配付資料を用いて議論をする
  実施の技術を活用する

2010年11月28日日曜日

第14回茨城県総合リハビリテーションケア学会学術集会

12月5日(日)に第14回茨城県総合リハビリテーションケア学会学術集会が茨城県立医療大学で開催されます。

http://st-ibaraki.web.infoseek.co.jp/care/

私は下記のようにランチョンセミナーで摂食・嚥下のリハ栄養の話をしてきます。茨城周辺の方はよかったら聞きに来て下さい。 よろしくお願いいたします。

11:50 ~ 12:50
ランチョンセミナー1   3F 135 会場
タイトル: 摂食・嚥下障害のリハビリテーション栄養
講師:若林 秀隆(横浜市立大学附属市民総合医療センター)
座長:白坂 誉子(地域貢献研究センター 認定看護師教育課程「摂食・嚥下障害看護」 専任教員
         摂食・嚥下障害看護師)
協賛:(株)大塚製薬工場

抄録

摂食・嚥下障害の原因の1 つに,嚥下筋のサルコペニアがある。サルコペニアの定義は,狭義では加齢に伴う筋肉量の低下,広義ではすべての原因による筋肉量・筋力の低下となる。広義のサルコペニアの原因には,加齢,活動(廃用),疾患(侵襲,悪液質,原疾患),栄養(飢餓)がある。

高齢者では加齢に伴い嚥下筋のサルコペニアを認めることが増加する。廃用は活動性や運動量の低下し た状態の継続で生じる二次的障害である。絶食で嚥下筋の廃用性筋萎縮を認める。誤嚥性肺炎などの侵襲で嚥下筋も含めた筋蛋白の異化が亢進する。悪液質は,がん,結核,エイズ,関節リウマチ,慢性心不全,慢性腎不全,肝不全,慢性閉塞性肺疾患などで生じ,嚥下筋も含めた筋肉の喪失が特徴である。早期診断・介入のために前悪液質の概念がある(悪液質の原因となる慢性疾患の存在,6 ヶ月以内に5%以上の体重減少,慢性・再発性の全身炎症反応:CRP 陽性,食思不振の4 項目すべて該当で診断)。原疾患による筋萎縮には,多発性筋炎や筋萎縮性側索硬化症などがある。飢餓では嚥下筋も含めた筋蛋白が異化する。

サルコペニアによる摂食・嚥下障害に対しては,これらの原因の有無を判断した上で,栄養管理と嚥下筋のレジスタンストレーニング(頭部挙上訓練,舌筋力強化訓練)を適切に行う。加齢と廃用が原因の場合,栄養障害を認めなければ主な治療は嚥下筋のレジスタンストレーニングである。栄養障害を合併している場合には,適切な栄養管理を併用する。疾患が原因の場合,原疾患の治療が最も重要である。高度侵襲下では,適切な栄養管理とリハビリテーションを行っても摂食・嚥下機能の改善は難しい。悪液質の場合,エイコサペンタエン酸の投与と廃用や飢餓の予防を同時に行う。飢餓が原因の場合,主な治療はリハビリテーションではなく栄養改善である。栄養改善なしにレジスタンストレーニングを行うとかえって摂食・嚥下障害は悪化する。

口腔ケアの定義再考を:日本口腔ケア学会

昨日は、第7回日本口腔ケア学会のシンポジウムで、「口腔機能へのアプローチ-リハビリテーション栄養の視点から」という発表をしてきました。

・栄養ケアなくして口腔リハなし。
・口腔リハにとって栄養はバイタルサインである。
・栄養を評価できなければ、口腔機能訓練(筋トレなど)はやめてください(口腔清掃は可)。

をポイントとして、口腔のサルコペニアの話などをしました。

ただ同時に、口腔ケアの定義再考を、という問題提起もしてきました。その内容を記載します。

日本口腔ケア学会のHPを見ると、口腔ケアの定義として以下のように掲載されています。

口腔ケアとは、口腔の疾病予防、健康保持・増進、リハビリテーションによりQOLの向上をめざした科学であり技術です。具体的には、検診、口腔清掃、義歯の着脱と手入れ、咀嚼・摂食・嚥下のリハビリ、歯肉・頬部のマッサージ、食事の介護、口臭の除去、口腔乾燥予防などがあります。

リハを理解している人が見れば、この定義に疑問を感じますよね。口腔ケアの中に嚥下リハが入ってしまっています。

リハとは、機能障害の改善を目指すだけでなく、能力障害あるいは社会的不利を起こす諸条件の悪影響を軽減させ、障害者の社会統合を実現することをめざすあらゆる措置を含むものです。そうすると、
機能訓練はリハのごく一部でしかない。
口腔ケアもリハのごく一部でしかない。
ということになります。

摂食・嚥下リハの例として以下のようなものを紹介しました。

認知、頸部・体幹、呼吸機能を評価しこれらと摂食・嚥下障害を改善させる。
食事の時の姿勢を調整する。
嚥下調整食を作成して提供する。
嚥下調整食の配食サービスを行う。

これらは口腔ケアと言えるでしょうか。私は言えないと考えます。

したがって、日本口腔ケア学会の口腔ケアの定義は誤っていると言わざるをえません。というようなことを発表してきました。

その後、複数の方から口腔ケアの定義を作って下さいよと言われましたが、さすがに私にはできません(笑)。ただ、日本口腔ケア学会の定義から、私が不適切と思うところを削除すると以下のようになりました。異論は多々あるかと思いますが、ここに記載します。

口腔ケアとは、口腔の疾病予防、衛生状態保持・増進をめざした技術です。具体的には、検診、口腔清掃、義歯の着脱と手入れ、口腔機能訓練、歯肉・頬部のマッサージ、口臭の除去、口腔乾燥予防があります。

まずは口腔ケアと摂食・嚥下リハの違いを理解すること、リハ、栄養、リハ栄養の概念、考え方、重要性を理解することが大切だと私は考えています。ですので、多くの歯科医師、歯科衛生士に「リハビリテーション栄養ハンドブック」を読んで学習していただければと思います。

今度、12月1日(水)19時30分から大和歯科医師会会館(大和市深見西2-1-25)で「摂食・嚥下障害のリハビリテーションと栄養管理」という講演をしてきます。平日の夜ですが、多くの歯科医師、歯科衛生士の方に参加していただけるとありがたいです。よろしくお願い申し上げます。

2010年11月25日木曜日

肥満治療:高タンパク・低GIが減量維持のポイント

今日は、「内科開業医のお勉強日記」から、「肥満治療:高タンパク・低GIが減量維持のポイント」を引用させていただきます。

http://intmed.exblog.jp/11615075/

以下、引用です。

欧州8ヶ国、3.3MJ(800kcal)低カロリーダイエットで、最低8%体重減少した過体重成人で、以下の5つのアドリブ食で、26週の体重再増加予防を検討したもの
低タンパク・低GI食、低タンパク・高GI食、高タンパク・低GI食、高タンパク・低GIと、対照食比較

Diets with High or Low Protein Content and Glycemic Index for Weight-Loss Maintenance

N Engl J Med 2010; 363:2102-2113November 25, 2010

1209名の成人(平均年齢 41歳;BMI 34)をスクリーニングし、938名をこの研究の低カロリー食研究に参入した
5つの維持食事の一つをランダムに割り付け773名で研究を行い、介入完遂548名(71%)

ドロップアウトが少ないのは、高タンパク・低GI群で、低タンパク・高GI食比較で有意差がある (26.4% and 25.6%, vs. 37.4%; それぞれ対照群比較 P=0.02、 P=0.01 )
低カロリー食平均初期体重減少は11.0kg

研究完遂被験者解析にて、低タンパク・高GI食は、その後の有意体重再増加と関連(1.67 kg; 95% 信頼区間 [CI], 0.48 to 2.87)
ITT解析では、体重再増加は低タンパク食より高たんぱく食割り付け群で0.93kg(95% CI, 0.31 to 1.55) 減少。低GI 食割り付け群では、高GI割り付け群より、0.95Kg (95% CI, 0.33 to 1.57)減少(P=0.003)。
介入完遂被験者を含む解析でも同様な結果であった。
副事象に関して有意な差はない

以上、引用です。

肥満患者の減量後に体重を維持するためには、高蛋白・低GI食が有用という結論です。運動療法の記載がないので仮説でしかありませんが、高蛋白食にすることで筋肉量をより維持・改善することができ、その結果、太りにくい可能性があります。実際、肥満治療の運動療法ではレジスタンストレーニングと有酸素運動を併用しますし。低GI食に関しては食事療法単独の効果と思われます。

2010年11月24日水曜日

癌と臨床栄養

今日は丸山道生編著、癌と臨床栄養、日本医事新報社を紹介します。 今月発刊となった新しい書籍です。

http://www.jmedj.co.jp/detail.jsp?goods_id=1830

下記のHPで少し中身を見ることができます。

https://www.jmedj.co.jp/parapara/gan_eiyo.html

確かに今まで癌に関する基礎から臨床に至る代謝栄養をまとめた書籍はありませんでしたので、初めての教科書といえます。執筆陣も現場でNSTに積極的に取り組んでいる方が多く、実践的な内容となっています。

「癌患者は癌で看取る。栄養不良状態やトラブルでは看取らない」を合言葉にしているそうですが、これには共感できます。また、丸山先生が編集しているだけに在宅での癌の栄養管理やシームレスな地域連携に関する執筆は充実しています。

悪液質に関しては、このブログで紹介しているような悪液質、前悪液質に関する診断基準は掲載されていませんでしたが、癌の栄養管理を体系的に学習したい方にお勧めします。

目次

〔癌と栄養管理A to Z〕
第1章 癌と担癌生体の栄養代謝
1.癌細胞の栄養と代謝
2.担癌生体の栄養と代謝
3.癌悪液質の病態と管理
4.癌と注目される栄養素

第2章 癌の発生と栄養
1.癌の化学予防の現状
2.食による癌予防

第3章 癌患者の栄養管理
1.癌患者の栄養アセスメント
2.癌患者の経腸栄養
3.癌患者の静脈栄養
4.化学療法と栄養管理
5.化学療法時の食事
6.緩和医療としての栄養管理
7.緩和医療における食事
8.アミノ酸インバランスによる癌治療(RT療法と抗癌薬の併用療法)
9.癌の予防や治療に関するサプリメント
10.癌の補完代替医療(漢方)と栄養療法
11.癌患者のPEG
12.癌患者の在宅静脈栄養法
13.癌患者の在宅経腸栄養法
14.癌手術での周術期栄養管理

〔実践臨床Q&A〕
第1章 アセスメント
Q1.癌治療における栄養指標とは?
Q2.癌患者におけるNSTの役割とは?

第2章 癌手術および術後
Q3.胃癌術後の栄養代謝障害とは?
Q4.胃癌術後患者の食事は?
Q5.術後の窒素バランスとは?
Q6.癌患者のサプリメント相談への対応は?
Q7.癌術後患者に対する経口補助栄養(ONS)の有効性は?

第3章 化学療法
Q8.化学療法,放射線療法,化学放射線療法時の口腔粘膜炎への対処法は?
Q9.化学療法時の食欲不振,悪心・嘔吐への対処法は?
Q10.抗癌薬使用時の下痢への対処法は?
Q11.化学療法時の味覚障害とは?
Q12.化学療法時の経腸栄養の有用性は?
Q13.外来化学療法での栄養管理は?

第4章 癌治療各論
Q14.血液癌化学療法での栄養管理の特徴は?
Q15.肝癌治療時の栄養管理の特徴は?
Q16.口腔外科領域の癌の栄養療法は?
Q17.PTEGで管理する癌患者とは?

第5章 終末期
Q18.終末期癌患者の代謝の特徴は?
Q19.終末期癌患者におけるNSTの役割とは?緩和ケアNSTとは?
Q20.癌のるい痩に対する薬物療法は?
Q21.疼痛管理している患者の栄養管理上,注意すべき点は?

Michael E. Groher 教授 特別講演会のご案内


来年1月7日(金)の18時から東京国際フォーラムでMichael E. Groher 教授
特別講演会と懇親会が開催されます。嚥下について深く学習できる機会ですので、興味のある方はぜひご参加ください。私も参加予定です。

Michael E. Groher 教授 特別講演会

●日時:平成23年1月7日(金) 18:00~20:00

●会場:東京国際フォーラム D棟 D7会場 ※参加費無料

受付:同6F

〒100-0005 東京都千代田区丸の内3丁目5番1号
代表電話:03-5221-9000

●定員:240名(定員になり次第申し込み終了)

●申込:moushikomi@nutri.co.jp宛てに下記内容を記載の上、申込み

①御所属 ②御氏名 ③御住所 ④TEL

●懇親会:講演会後、懇親会を開催予定。

先着30名 参加費2,000円

●主 催:ニュートリー株式会社

●連絡先:東京都中央区新川2-1-5 THE WALL 4F TEL 03-3206-0107


【プログラム】

講演:「嚥下訓練と食事」 柴本 勇先生

国際医療福祉大学 言語聴覚学科 准教授

特別講演:「嚥下研究の道しるべ」 Michael E.Groher先生※(通訳あり)

カリフォルニア州レッドランド大学 コミュニケーション障害科 教授

※著書にDysphagia:Diagnosis and Management,Introduction to Adult
Swallowing Disorders(邦訳:嚥下障害その病態とリハビリテーション、医歯薬出版)など多数。

DysphagiaのAssociate Editor、American Speech Language Hearing
Associationメンバー、嚥下障害治療における世界のリーダーと目されている。

大腿四頭筋筋力と慢性心不全の死亡率

今日は抄録ですが日本人の発表なので、大腿四頭筋筋力と慢性心不全の死亡率の関連をみた報告を紹介します。

Kentaro Kamiya; Takashi Masuda; Atsuhiko Matsunaga; Kazumasa Miida; Misao N Ogura; Masahiko Kimura; Chiharu Noda; Minako Ymaoka-Tojo; Takayuki Inomata; Tohru Izumi. Decreased Strength of Quadriceps Increases the Risk of Mortality in Patients with Chronic Heart Failure. Circulation. 2010;122:A12709

http://circ.ahajournals.org/cgi/content/meeting_abstract/122/21_MeetingAbstracts/A12709

結論としては大腿四頭筋筋力が30%BWより低い(要するに筋力が弱い)場合には、40%BW(筋力がある)の場合と比べて死亡率がかなり高くなるという報告です。大腿四頭筋筋力が30%BWより低い慢性心不全患者の、2年間の死亡率は51%でした。

抄録では今回の慢性心不全患者がサルコペニアや悪液質、前悪液質の診断基準に該当するのかどうかは不明ですし、サンプルサイズも大きいとは言えませんが、大腿四頭筋筋力と慢性心不全の死亡率に関連はありそうです。全身の筋肉量、筋力を維持することの重要性を再確認しました。もっとも維持が容易ではありませんが…。

Background: Although cardiac cachexia is characterized by an exaggerated loss of skeletal muscle mass and muscle weakness, the diagnostic value of its muscle weakness was still undetermined. The purpose of this study was to investigate the relationship between quadriceps strength and cardiovascular mortality in patients with chronic heart failure (CHF) and to clarify the level of quadriceps strength that indicates a poor prognosis.

Methods: The isometric muscle strength of quadriceps was prospectively measured at the hospital discharge in 90 consecutive CHF patients, 63 males and 27 females aged 67.9 ± 12.6 yrs, which was expressed as % body weight (%BW). Cardiovascular mortality was analyzed with a Cox proportional-hazards models based on cardiovascular risk factors including age, medications, brain natriuretic peptide, estimated glomerular filtration rate and left ventricular ejection fraction.

Results: During the follow-up period of 340±240 days, 9 patients died of cardiovascular events. The relation between quadriceps strength and event free survival rate is shown in Figure. Patients who had lower quadriceps strength had significantly lower survival, and their mortality risk was increased by 2.67-fold per 10 %BW decrease (95% confidence interval: 1.06 to 6.67, P<0.05). Patients with <30%BW of quadriceps strength had a 12.85-fold higher mortality risk as compared with those with 40%BW. The two-year mortality rate indicated by quadriceps strength of <30%BW was 51%.

Conclusion: A Quadriceps strength of <30%BW indicated a poor prognosis in patients with CHF.

2010年11月23日火曜日

リハ栄養ハンドブック書評

ブログのリハ医の独白と、ニューロリハ医のメモリーノートで「リハビリテーション栄養ハンドブック」の書評が掲載されました。大変光栄に思っています。ぜひ多くの方にブログを見ていただければと思います。もちろん「リハ栄養ハンドブック」も見てほしいです(笑)。よろしくお願いいたします。

リハ医の独白
http://d.hatena.ne.jp/zundamoon07/20101123/1290486247#tb

ニューロリハ医のメモリーノート
http://neurorehai.blogspot.com/2010/11/blog-post_21.html

2010年11月21日日曜日

第5回リハビリテーション科専門医会学術集会報告

11月20-21日とパシフィコ横浜で第5回リハビリテーション科専門医会学術集会が開催されました。

http://www-user.yokohama-cu.ac.jp/~rehasen5/index.html

抄録集のPDFファイルはHPで入手できます。

http://www-user.yokohama-cu.ac.jp/~rehasen5/shouroku.pdf

私は昨日、教育研修講演1「リハビリテーションと臨床栄養―栄養ケアがリハを変える」を担当させていただきました。学会発表を除くと、リハ科医師が集まる場で話す機会は初めてで、きちんとしたエビデンスとなるような研究成果を出していないので、実はかなり不安でした。

ただ、リハ科専門医会学会に間に合うように「リハビリテーション栄養ハンドブック」の作成を準備してきて、なんとか医歯薬出版さんから発刊させていただきました。PT・OT・STに栄養やリハ栄養の重要性を伝えることが私の使命だと考えていますが、リハ科医師に伝えることも私の役割だと感じていましたので、この日にあわせて準備してきました。

幸い講演終了後、何人かの先生からお褒めのお言葉をいただいたり、「腹が立った」というお言葉をいただけました。無関心で無視されることに比べれば、腹を立てていただけたことはありがたいなあと思いました。どうもありがとうございました。苦手なサインも求められ、断れずに4冊ほど汚い字でサインをしてしまいました(笑)。

「リハビリテーション栄養ハンドブック」は書籍コーナーに50冊も山積みになっていて、2日間山積みのままだったらどうしよう…と思っていましたが、なんと初日のうちに完売しました。今日も新たに30冊用意されていましたが、これもほとんど完売しました。今回の学会参加者が約700人でしたので、単純計算で1割以上の方に購入していただけたということになります。本当に予期せぬことで、とても嬉しかったです。購入して下さった皆様、どうもありがとうございました。

リハ栄養という言葉も考え方もリハの世界ではほとんど知られていないのが現状ですので、まだまだやらなければいけないことはたくさんあります。でもひょっとしたら今回の学会がきっかけとなって、徐々に普及していくのではないかという期待感もあります。

今後は1人で頑張るのではなく、共感してくださるリハ科医師(リハ科以外の医師ももちろんです)、PT・OT・ST、管理栄養士、看護師、薬剤師、臨床検査技師、歯科医師、歯科衛生士など多職種の人たちと一緒に頑張りたいと思います。皆様のご協力の程、今後とも何卒よろしくお願い申し上げます。

2010年11月19日金曜日

第9回神奈川PDNセミナー

1月29日に第9回神奈川PDNセミナーが開催されます。

http://www.peg.or.jp/seminar/kaisai/kanagawa/110129.pdf

前回とても好評だったQ&A方式で今回も第2部を行ないます。
皆様のご参加の程よろしくお願い申し上げます。

●日 時 2011 年1 月29 日(土) 14:00~18:30 (受付開始13:30~)
●会 場 神奈川県立県民ホール 6 階大会議室(ホールではありません。お間違いなく!)
●代表世話人 赤羽重樹 先生 (西神奈川ヘルスケアクリニック 院長)
●定 員 200 名(胃瘻にかかわるすべての職種)先着順。定員になり次第締め切ります。
●参加費1000 円 関連書籍等販売あり(購入自由)
●プログラム
<第1 部> 基調講演 14:05~15:00
「明日からできる 胃ろう管理」 岡田孝弘 先生(オカダ外科 院長)
~ 休憩&Q に対するA を考える&質問用紙記入の時間 ~ 15:00~15:30

<第2 部> みんなのハテナにお答えします
1.スキントラブルの予防とケア Q&A 15:30~16:10
松原康美 先生(北里大学東病院 看護部)
2.薬とカテーテル管理にまつわるエトセトラ 16:10~16:50
林 宏行 先生(聖マリアンナ医科大学横浜市西部病院 薬剤部)
~ 休 憩 ~ 16:50~17:05
3.みんな同じ悩み…少しでも解決しよう!(栄養剤などについて)17:05~17:45
久米直子 先生(川崎幸病院 栄養科)

<第3 部> あなたのハテナは私のハテナ。 17:45~18:25
記入していただいた皆さんからの疑問、ご一緒に考えましょう

●申 込 上記HPから申込用紙に必要事項をご記入の上、FAX にてお申し込み下さい。
NPO 法人PDN 事務局 (TEL:03-6228-3611 FAX:03-6228-3730)

●後 援 日本医師会、日本歯科医師会、日本薬剤師会、神奈川県看護協会(予定)

2010年11月18日木曜日

アルブミン値とCRPで胃瘻造設後短期の死亡率を予測

アルブミン値とCRPで胃瘻造設後短期の死亡率を予測できるという前向きコホート研究の論文を紹介します。

Blomberg J, Lagergren P, Martin L, Mattsson F, Lagergren J. Albumin and C-reactive protein levels predict short-term mortality after percutaneous endoscopic gastrostomy in a prospective cohort study. Gastrointest Endosc. 2010 Nov 11. [Epub ahead of print]

胃瘻造設した484人の患者を対象に評価したところ、造設後30日以内に死亡したのは58人(12%)でした。死亡リスクに関連したのは以下の要因です。

Albumin <30 g/L (アルブミン3.0g/dl未満)(hazard ratio [HR], 3.46; 95% CI, 1.75-6.88)
CRP ≥10 mg/L (CRP1mg/dl以上)((HR, 3.47; 95% CI, 1.68-7.18)
age ≥65 years (HR, 2.26; 95% CI, 1.20-4.25)
body mass index <18.5 (HR, 2.04; 95% CI, 0.97-4.31):これだけ統計学的有意差は微妙です。

低アルブミン値と高CRP値の療法に該当する場合、死亡率は20.5%でした。どちらにも該当しない場合の死亡率は2.6%で、ハザード比が7.45(95% CI, 2.62-21.19)でした。

以下、私の解釈です。アルブミン3.0g/dl未満でCRP1mg/dl以上の患者に胃瘻造設するときは、かなりの注意を要します。CRPを陰性化することは悪液質の存在下では難しいですが、侵襲によるCRP陽性であれば陰性化後に胃瘻を造設することが望ましいといえます。年齢はどうしようもありません。

アルブミンはここでも予後指標として有用です。目安はやはり3.0g/dl未満でした。リハ効果を期待できるかどうかの1つの目安も3.0g/dlですね。可能であればアルブミンを3.0g/dl以上、BMIを18.5以上まで栄養改善してから胃瘻造設することが望ましいかもしれません。

Abstract
BACKGROUND: Percutaneous endoscopic gastrostomy (PEG) is a procedure with many complications that sometimes can be devastating. To give better advice to patients referred for PEG regarding risk of complications, important risk factors should be known.

OBJECTIVE: To evaluate whether age, body mass index, albumin levels, C-reactive protein (CRP) levels, indication for PEG, and comorbidity influence the risk of mortality or peristomal infection after PEG insertion.

DESIGN: Prospective cohort study from 2005 to 2009. Follow-up 14 days after PEG.

SETTING: University hospital.

PATIENTS: This study involved 484 patients referred for PEG.

INTERVENTION: PEG.

MAIN OUTCOME MEASUREMENTS: Mortality within 30 days and peristomal infection within 14 days after PEG insertion. All risk estimates were calculated with 95% CIs and adjusted for confounding.

RESULTS: Among 484 patients, 58 (12%) died within 30 days after PEG insertion. Albumin <30 g/L (hazard ratio [HR], 3.46; 95% CI, 1.75-6.88), CRP ≥10 (HR, 3.47; 95% CI, 1.68-7.18), age ≥65 years (HR, 2.26; 95% CI, 1.20-4.25) and possibly body mass index <18.5 (HR, 2.04; 95% CI, 0.97-4.31) were associated with increased mortality. Patients with a combination of low albumin and high CRP levels had a mortality rate of 20.5% compared with 2.6% among patients with normal values, rendering an over 7-fold increased adjusted risk of mortality (HR, 7.45; 95% CI, 2.62-21.19).

LIMITATIONS: Missing data in some study variables. Although the sample size was large, weaker associations could not be established.

CONCLUSION: The combination of low albumin and high CRP levels indicates a substantially increased short-term mortality risk after PEG, which should be considered in decision making.

悪液質対サルコペニア

タイトル通り、悪液質対サルコペニアという論文を紹介します。

Rolland Y, Van Kan GA, Gillette-Guyonnet S, Vellas B. Cachexia versus sarcopenia. Curr Opin Clin Nutr Metab Care. 2010 Nov 1. [Epub ahead of print]

悪液質とサルコペニアの新しい定義に関するレビュー論文です。サルコペニア(ここでは狭義、加齢によるもの)は多くの要因からなる老年症候群の1つとして認識されています。悪液質は炎症が鍵となる特徴で、狭義のサルコペニアに合併することがあります。このあたりは広義の二次性サルコペニアで考えたほうがわかりやすいと思います。

悪液質は複雑な代謝症候群で、慢性疾患の存在(がん、COPD、慢性心不全、慢性腎不全、膠原病など)と関連し、筋肉の喪失が特徴で、脂肪は喪失することもしないこともあるという新しい定義があります。成人では体重減少が特徴です。

サルコペニアの診断に関しては異なる推奨がされていますが、いずれも筋肉量と筋肉の機能(筋力や歩行スピードなど)を含んでいます。

悪液質とサルコペニアの定義と診断基準ができたことで研究が促進することが期待されますが、臨床診療では悪液質とサルコペニアを区別することは困難かもしれません。新しい治療方法の開発が望まれます。

以下、私の解釈です。二次性サルコペニアで考えれば、サルコペニアの原因は加齢、活動、疾患(侵襲、悪液質、神経筋疾患など)、栄養に分類できます。このうち、悪液質、神経筋疾患、低栄養の診断基準はあります。また、サルコペニアそのものの診断基準もあります。

一方、加齢によるサルコペニアは単独で存在する場合以外は診断困難です。廃用症候群の診断基準もありません。侵襲の明らかな診断基準もありません。このあたりは主観的に判断せざるをえないのが現状です。それでも判断しなければ、適切なリハ栄養アセスメントはできませんし、当然リハ栄養ケアプランも立案できませんので、診断基準があるものはそれを活用、ないものは主観的に判断することが望ましいと考えます。

Abstract
PURPOSE OF REVIEW: The review summarizes and discusses the proposed new definitions for sarcopenia and cachexia. It also highlights the overlapping of both conditions and the fact that these conditions frequently occur in elderly patients.

RECENT FINDINGS: Sarcopenia is now recognized as a multifactorial geriatric syndrome. Cachexia is defined as a metabolic syndrome in which inflammation is the key feature and so cachexia can be an underlying condition of sarcopenia. Recently, cachexia has been defined as 'a complex metabolic syndrome associated with underlying illness and characterized by loss of muscle mass with or without loss of fat mass. The prominent clinical feature of cachexia is weight loss in adults'. Different recommendations have been proposed for the diagnosis of sarcopenia. At present, all definitions combine an assessment of muscle mass and muscle function (strength or physical performances such as gait speed). However, the relevance and the validation of these evolving definitions need to be assessed in future studies.

SUMMARY: Although the recent definitions of sarcopenia and cachexia boost research in the field and define distinct entities, the cause behind the loss of muscle mass (whether cachexia or sarcopenia) may, however, be indistinguishable in clinical practice. Therefore, new therapeutic approaches, alone or in combination, could be targeted on both conditions.

リハビリテーション栄養ハンドブック序文

医歯薬出版の「リハビリテーション栄養ハンドブック」のHPで、序文を見ることができます。

http://www.ishiyaku.co.jp/search/details_1.aspx?cid=2&bookcode=218630

 HPにある序文を紹介させていただきます。多くの方に読んでいただけると嬉しいです。以下、序文です。

 リハ栄養の2冊目の書籍を医歯薬出版株式会社から出版させていただくことになりました.前書「PT・OT・STのためのリハビリテーション栄養─栄養ケアがリハを変える」との出会いがPTとしての転機になった,前書を使用してリハ部内で学習会を行った,歯科にとっても重要だなどの反応を聞き,リハ栄養という言葉をつくってよかったと感じています.今回はPT・OT・STだけでなく,リハ栄養にかかわるすべての職種向けの書籍としました.リハ栄養の考え方やリハNSTは,リハ関連職種以外にも有用です.執筆者の職種もできるだけ多彩としました.

 2010年からPT・OT・ST,歯科衛生士も日本静脈経腸栄養学会のNST専門療法士を取得できるようになりました.このこともリハと栄養の距離を近づける方向に働くと考えています.多くのPT・OT・ST,歯科衛生士にNST専門療法士を目指してほしいです.

 本来,栄養状態を評価しなければ,リハの機能評価と予後予測,リハプラン,リハプログラムの適切な立案と実施はできません.つまり,リハにとって栄養はバイタルサインの1つといえます.栄養ケアなくしてリハなし,リハなくして栄養ケアなしです.当面はリハ栄養の言葉や考え方の普及が目標ですが,長期的にはリハ栄養という言葉を用いなくてもリハと栄養管理を併用することが当然という時代にしたいです.

 リハ栄養の実践でADLやQOLが著明に改善する患者をみてきました.一方,今でも重度の栄養障害,餓死寸前の状態にもかかわらず,リハで筋力やADLを改善させてほしいというリハ依頼があります.重度の栄養障害や不適切な栄養管理であることが認識されずに,積極的なレジスタンストレーニングや長時間の機能訓練が実施されて逆効果となっていることがあります.そのため,本書ではサルコペニア(骨格筋減少症,筋肉減少症)の評価と介入に重点を置きました.サルコペニアを適切に評価できれば,このような事態は少なくなります.臨床現場にサルコペニアの方はたくさんいますので,まずはサルコペニアの存在を疑うようにしていただけるとうれしいです.

 今回は私の尊敬する仲間に執筆をお願いしました.皆様が快く引き受けて執筆してくださったおかげで,前書よりリハ栄養の重要性と対象の広さを表現することができました.執筆者の皆様に深謝いたします.

 最後に医歯薬出版株式会社の小口真司さんには,企画,執筆,編集などで今回も大変お世話になりました.心よりお礼申し上げます.
 2010年11月
 若林秀隆

2010年11月17日水曜日

第13回神奈川NSTフォーラム

第13回神奈川NSTフォーラムが11月27日開催されます。皆様のご参加の程よろしくお願い申し上げます。
http://www.peg.or.jp/news/information/kanagawa/101127.pdf

日時  : 2010年11月27日(土) 14:30~18:20
場所  : 新都市ホール 【新都市ビル(そごう横浜店9階)】
横浜市西区高島2丁目18−1 045-465-2001
当番世話人:昭和大学横浜市北部病院 池田 尚人
参加費 : 1000円
メインテーマ 《 静脈栄養の再考 》

一般演題
~第1部~ 
座長 神奈川県立保健福祉大学 保健福祉学部栄養学科 谷口 英喜
聖マリアンナ医科大学横浜市西部病院 薬剤部 林 宏行
① 「脂質吸収障害のある膵炎患者に脂肪乳剤を使用し栄養改善した1例」 
横須賀共済病院 NST 栄養科 高山 みな子
② 「ビタミンB1投与によりアナフィラキシーショックを起こした1例」  昭和大学横浜市北部病院 薬局 八木 孝仁
③ 「早期に経腸管栄養からTPN管理したことで栄養状態の改善を認めた1症例」 
聖マリアンナ医科大学横浜市西部病院 NST 薬剤部 佐々木 彩
④ 「当院における腎不全TPN使用症例に対する実態調査」 
聖マリアンナ医科大学横浜市西部病院 NST 薬剤部 鈴木 慎一郎
⑤ 「当院NSTでの静脈栄養への取り組み」  昭和大学藤が丘病院 NST 薬局 大川 桂子

~第2部~ 
座長  昭和大学藤が丘病院 小児外科 千葉 正博 
昭和大学横浜市北部病院 栄養科 玉木 大輔
① 「当院における施設間連絡票の運用の実態と今後の課題-NST・嚥下連絡票(神奈川Ver.1)-」  横須賀市立市民病院 嚥下チーム 財部 朋美 
② 「当院における神奈川NST・嚥下連絡票運用の取り組みについて」
横須賀市立市民病院 リハビリテーション療法科 多武 美恵
③ 「当初、摂食障害が疑われた上腸間膜動脈症候群(SMA症候群)の1症例」  神奈川県立汐見台病院 栄養科 中村 亜紀子
④ 「 経腸栄養剤販売中止に伴う代替品への変更」  神奈川県立こども医療センター 薬剤科 根来 忍
⑤ 「NSTメンバーとしての言語聴覚士活動 ~ST回診を開始して~」  衣笠病院 リハビリテーション科 武藤 徳子

研究会から 神奈川NST研究会代表世話人 神奈川県立汐見台病院 院長 豊田 茂

特別講演 座長:昭和大学横浜市北部病院 脳神経外科 池田 尚人
「静脈栄養の再考と血糖管理」
筑波大学附属病院 消化器外科 病院教授 寺島  秀夫 先 生

閉会の辞 第13回神奈川NSTフォーラム 当番世話人  池田 尚人 
(昭和大学横浜市北部病院 脳神経外科)

ニューロリハ医のメモリーノートより

今日は、「ニューロリハ医のメモリーノート」より、Sarcopenia: European consensus on definition and diagnosis: report of the European working group on sarcopenia in older people. を紹介します。

http://neurorehai.blogspot.com/2010/11/sarcopenia-european-consensus-on.html

このブログでも何回か紹介してきましたが、ヨーロッパにおけるサルコペニアの定義と診断に関するコンセンサス論文です。下記のHPで全文見ることができますが、「ニューロリハ医のメモリーノート」ブログでよく要約されていますので十分かと思います。

http://ageing.oxfordjournals.org/content/39/4/412.full

MRIなどの検査だけで、加齢によるサルコペニアか、二次性サルコペニア(活動、栄養、疾患)かの判別ができると、リハ栄養の評価としては大変役に立ちます。ただ、現状ではまだ難しいだろうなあと感じています。

サルコペニアの診断基準はこの論文にありますが、その中での鑑別診断基準(原因が加齢、活動、栄養、疾患の単独か複数か)はありません。各原因ごとの診断基準が出来上がると、この考え方がより普及するのではないかと考えます。私は今のところ、主観的に判断しているというのが現状です。

あと、昨日紹介した「リハビリテーション栄養ハンドブック」の件ですが、医歯薬出版のHPからも新刊として購入できるようになっていました。こちらもぜひよろしくお願いいたします。

http://www.ishiyaku.co.jp/search/details.aspx?bookcode=218630

2010年11月16日火曜日

リハビリテーション栄養ハンドブック発刊

今日、医歯薬出版の担当者から、若林秀隆編著「リハビリテーション栄養ハンドブック」が発刊になったとの連絡がありました。今週末のリハ科専門医会学術集会に間に合わせようと思っていましたので、ほっとしています。これも執筆者の皆様のご協力のおかげです。本当にありがとうございました。

医歯薬出版のHPではまだ近刊になっていますが、数日以内には新刊に変わるはずです…。

http://www.ishiyaku.co.jp/search/details.aspx?bookcode=218630

アマゾンではまだ購入できませんが、丸善のHPでは新刊となっていて購入できるようです。

http://pro.maruzen.jp/shop/disp/CSfLastGoodsPage_001.jsp?GOODS_NO=8227010&dispNo=

商品紹介です。「本書は,サルコペニア(骨格筋減少症)の評価と介入に重点を置き,実践現場で役立てやすい代表的な29疾患・障害のリハ栄養のポイントを収録.NST専門療法士の管理栄養士,看護師,薬剤師,臨床検査技師,PT,OT,ST,歯科衛生士に必要なリハビリ栄養について分かり易く解説.」

前著との大きな違いは、多職種で執筆したこと、より多くの疾患・障害について執筆したことです。「栄養ケアなくしてリハなし」「リハにとって栄養はバイタルサインである」が伝わる書籍にできたと考えています。

ぜひ多くの管理栄養士,看護師,薬剤師,臨床検査技師,PT,OT,ST,歯科衛生士,歯科医師,医師に読んでいただきたいです。何卒よろしくお願い申し上げます。

目次

第1章 リハビリテーション栄養の基本知識
第2章 リハビリテーションの基本知識
第3章 栄養の基本知識
第4章 リハビリテーションで問題となる栄養不良
第5章 リハビリテーション栄養管理
第6章 リハビリテーション栄養と看護
第7章 リハビリテーション栄養と薬剤・サプリメント
第8章 リハビリテーション栄養と検査
第9章 リハビリテーション栄養と歯科
第10章 小児のリハビリテーション栄養
第11章 早期リハビリテーション栄養
第12章 リハビリテーションNST
第13章 在宅リハビリテーション栄養
第14章 主な疾患・障害のリハビリテーション栄養
 廃用症候群、脳卒中、脳外傷、脊髄損傷、脳性麻痺、パーキンソン病、末梢神経障害、筋萎縮性側索硬化症、多発性筋炎・皮膚筋炎、誤嚥性肺炎、褥瘡、肥満、糖尿病、大腿骨頸部骨折、関節リウマチ、SLE・強皮症、変形性関節症、がん、終末期がん、リンパ浮腫、慢性閉塞性肺疾患、慢性心不全、肝不全、慢性腎不全、下肢切断、熱傷、認知症、後期高齢者、神経性食思不振症

アンチエイジングとリハビリテーション

Monthly Book Medical Rehabilitation(メディカルリハビリテーション)124号で、アンチエイジングとリハビリテーションが特集されています。

http://www.zenniti.com/f/b/show/b01/246/zc01/3.html

アンチエイジングは21世紀に入ってから関心が高まってきている領域です。リハでも高齢障害者に対応する機会が増えてきており、アンチエイジングとリハの特集はとてもタイムリーだと感じました。ご一読をおすすめします。

リハ栄養・サルコペニアに関連している項目を下記に抜粋します。

アンチエイジングとリハビリテーション 総論 近藤 国嗣
健康長寿を目指すアンチエイジング医学のリハビリテーション医学への応用は非常に魅力的であり,高齢障害者の筋力・体力維持,改善などの分野において特に期待される.

運動とアンチエイジング 小熊 祐子
加齢に伴い,一般的に身体機能は低下する.定期的に体を動かすことが,健康的な加齢に好影響を及ぼすことが実証されている.その詳細を概説する.

筋肉のアンチエイジングとリハビリテーション 新藤恵一郎
加齢による骨格筋の変化(サルコペニア)は,移動能力,日常生活動作や社会活動の低下に影響を与える.サルコペニアと高齢者に対する運動療法につき概説する.

骨のアンチエイジングとリハビリテーション 池田 恭治
骨粗鬆症は,代謝病である.骨のアンチエイジングには,運動や栄養による骨代謝の制御の仕組みに注目する必要がある.

栄養によるアンチエイジングとリハビリテーション 宮越 浩一
高齢者では低栄養や筋肉量減少のリスクがある.アンチエイジング効果が期待できるものとしてはカロリー制限,特定の栄養成分等が好影響を与える可能性が示唆されている.

口腔のアンチエイジングとリハビリテーション 松下 健二
高齢者が歯を失う原因となる歯周病の病因論とその予防の考え方について概説するとともに,“健やかに”のための口腔の健康の重要性について論じてみたい.

嚥下機能のアンチエイジングとリハビリテーション 戸原  玄
誤嚥性肺炎を引き起こす摂食・嚥下障害患者は増加している.安全な摂食・嚥下を行うための環境を整えるという視点が大切である.

特に総論、筋肉のアンチエイジングとリハビリテーション、栄養によるアンチエイジングとリハビリテーションでは、キーワードにサルコペニアが含まれています。狭義のサルコペニアは加齢によるものですから、アンチエイジングの対象となるのは当然だと思います。広義のサルコペニアに関しての記載はありませんでした。

リハの世界でサルコペニアへの関心が高まりつつあるのはありがたいことです。今度はサルコペニアを特集するリハ系の雑誌が出ればなお嬉しいですね。

目次
アンチエイジングとリハビリテーション 総論 近藤 国嗣

運動とアンチエイジング 小熊 祐子

末梢神経のアンチエイジングとリハビリテーション 青柳陽一郎

筋肉のアンチエイジングとリハビリテーション 新藤恵一郎

心臓のアンチエイジングとリハビリテーション 辻川 将弘ほか

体力のアンチエイジングとリハビリテーション 田中 芳幸ほか

平衡感覚(前庭機能)のアンチエイジングとリハビリテーション 荒木 康智

骨のアンチエイジングとリハビリテーション 池田 恭治

視覚のアンチエイジングとリハビリテーション 北市 伸義ほか

転倒予防とアンチエイジング 大高 洋平

肩のアンチエイジングとリハビリテーション 忽那 岳志ほか

皮膚のアンチエイジング 山田 秀和

女性ホルモンのアンチエイジング 太田 博明

成長ホルモンのアンチエイジングとリハビリテーション 宮田知恵子

血管のアンチエイジングとリハビリテーション 篠田 雄一

EDのアンチエイジング 菊地 栄次ほか

認知機能の加齢変化とアンチエイジング 安藤富士子ほか

認知機能のアンチエイジングと運動療法 兵頭 和樹ほか

栄養によるアンチエイジングとリハビリテーション 宮越 浩一

口腔のアンチエイジングとリハビリテーション 松下 健二

嚥下機能のアンチエイジングとリハビリテーション 戸原  玄

消化器のアンチエイジング 徳原  真

宇宙医学とアンチエイジング 山田  深

ビタミンD不足高齢女性に対するビタミンD投与のRCT

今日は、ビタミンD不足高齢女性に対してビタミンD投与を行った場合の筋力と移動能力に関するRCTの論文を紹介します。

Kun Zhu, Nicole Austin, Amanda Devine, David Bruce, Richard L. Prince: A Randomized Controlled Trial of the Effects of Vitamin D on Muscle Strength and Mobility in Older Women with Vitamin D Insufficiency. Journal of the American Geriatrics Society Volume 58, Issue 11, pages 2063–2068, November 2010 DOI: 10.1111/j.1532-5415.2010.03142.x

血中ビタミンDが24ng/mL以下で、在宅生活で歩行可能な70~90歳の女性302人を対象としたRCTです。介入群はVitamin D2 1,000 IU/dを内服、対象群は1 g calcium/dを1年間内服します。

1年後にビタミンD投与群では当然、血中ビタミンDが上昇しますが、コントロール群では不変でした。サブグループ解析なので微妙ですが、血中ビタミンDが最も低い1/4群では、股関節の伸展筋力、内転筋力とTimed Up and Go TestがビタミンD投与群で有意に改善しました。

弱い結論として、ビタミンD不足高齢女性に対するビタミンD投与で、筋肉量と移動能力が改善する可能性があります。筋肉量と移動能力が改善するかどうかは明確ではありませんが、ビタミンDが欠乏もしくは不足している高齢女性では、ビタミンDを投与することが望ましいといえます。

Abstract

OBJECTIVES: To evaluate the effects of vitamin D treatment on muscle strength and mobility in older women with vitamin D insufficiency.

DESIGN: One-year population-based, double-blind, randomized, controlled trial.

SETTING: Perth, Australia (latitude 32°S).

PARTICIPANTS: Three hundred two community-dwelling ambulant elderly women aged 70 to 90 with a serum 25-hydroxyvitamin D (25(OH)D) concentration less than 24 ng/mL.

INTERVENTION: Vitamin D2 1,000 IU/d or identical placebo; calcium citrate (1 g calcium/d) in both groups.

MEASUREMENTS: Lower limb muscle strength and mobility as assessed using the Timed Up and Go Test (TUAG).

RESULTS: At baseline, mean±standard deviation serum 25(OH)D was 17.7±4.2 ng/mL; this increased to 24.0±5.6 ng/mL in the vitamin D group after 1 year but remained the same in the placebo group. For hip extensor and adductor strength and TUAG, but not for other muscle groups, a significant interaction between treatment group and baseline values was noted. In those with baseline values in the lowest tertile, vitamin D improved muscle strength and TUAG more than calcium alone (mean (standard error): hip extensors 22.6% (9.5%); hip adductors 13.5% (6.7%), TUAG 17.5% (7.6%), P<.05). Baseline 25(OH)D levels did not influence patient response to supplementation.

CONCLUSION: Vitamin D therapy was observed to increase muscle function in those who were the weakest and slowest at baseline. Vitamin D should be given to people with insufficiency or deficiency to improve muscle strength and mobility.

2010年11月15日月曜日

第5回リハビリテーション科専門医会学術集会抄録集

今週末、11月20-21日にパシフィコ横浜で第5回リハビリテーション科専門医会学術集会が開催されます。リハ科医師で専門医でない方や、他科医師、コメディカルの方も参加も歓迎していますので、多くの方にご参加いただければと思います。

http://www-user.yokohama-cu.ac.jp/~rehasen5/index.html

開催概要
開催日時 2010年11月20日(土)~21日(日)
参加費 12,000円(2日間、教育研修講演受講、意見交換会含む) 
     コメディカルの方は3,000円、医学生・初期研修医は参加費無料
     (事前登録は行いませんので、当日会場でお願いします。)
会場 パシフィコ横浜 アネックスホール

抄録集のPDFファイルもHPから入手できます。

http://www-user.yokohama-cu.ac.jp/~rehasen5/shouroku.pdf

20日11時からの私の教育研修講演1「リハビリテーションと臨床栄養―栄養ケアがリハを変える」の抄録は20ページに掲載されています。土曜の午前なので参加しにくい時間帯かもしれませんが、よろしくお願い申し上げます。

在宅中心静脈栄養法の問題点を探り,改善へ

週刊医学界新聞第2904号、2010年11月15日に、第18回日本消化器関連学会週間開催の記事が掲載されています。その中に、在宅中心静脈栄養法の問題点を探り,改善へという項目があります。

http://www.igaku-shoin.co.jp/paperDetail.do?id=PA02904_02

Bacterial Translocationに対し経胃瘻小腸留置型チューブの留置および小腸瘻造設により腸管洗浄を行うことで,敗血症の長期間予防に成功そうです。腸管洗浄の話は、私は初めて聞きました。

カテーテル感染の予防法としてAntibiotic Lock Technique(ALT)も初めて聞きました。ALTでは,血液培養でグラム陽性球菌が同定された症例に対し,バンコマイシン25 mg/mLを1日2回,3 mLずつ10-14日間ポートより注入する。この間,ポートは注入期間終了まで使用しない。米国感染症学会が真菌感染を除くカテーテル感染の治療法として推奨しているそうです。

最後に、肝障害(IFALD)の効果的な治療薬としてω3系脂肪静注製剤omegaven®に言及。胆汁流出の改善・免疫賦活化・脂肪化の改善などの作用によりIFALDを予防・治療することが期待できるとして,本剤の国内での早期承認を求めた。とあります。確かにω3系脂肪静注製剤は早く承認されてほしいですね。

在宅リハ栄養管理では、摂食・嚥下障害に対する経口摂取、経管栄養、中心静脈栄養、いずれも課題があると感じています。関心のある方は週刊医学界新聞のこの記事をご一読ください。

2010年11月14日日曜日

サンデー毎日のサルコペニア記事

少し古いですが、10月24日号のサンデー毎日に、サルコペニアに関する記事が掲載されています。ここでのサルコペニアは原発性、加齢によるサルコペニアです。東海大学の以下のHPから引用します。

http://prog.pr.tokai.ac.jp/utokai/TkpMedia?p_kubun=01&p_kijic=20101024004

メタボより怖い!サルコペニア

筋力低下が糖尿病、動脈硬化を引き起こす

「心豊かな老後のための体づくり」という短期集中連載。
中・高年期の肥満が、動脈硬化や糖尿病の主因であるのは周知の事実。今や「メタボ」という言葉は、日常生活にすっかり定着した。しかし、最新の研究で加齢による筋肉の衰えも、生活習慣病に直結する可能性があることが分かってきた。9月に中京大学で開かれた日本体育学会で、「サルコペニア肥満が動脈硬化指標に及ぼす影響」と題する注目すべき研究が発表された。サルコペニアは、加齢によって筋肉量が減少し、筋機能が低下して階段の上がり下りなどの日常行動に困難を来す状態をいう。日本の基準では、若年期から筋肉の量が約33%減った状態を指す。その要因として、栄養摂取、成長ホルモン、DNAの損傷などが挙げられているが、よく分かっていない。
東海大学体育学部の町田修一准教授(運動生理学)は、時代の変化による環境要因を指摘する。昔の高齢者は、農作業などで常に体を動かし、生きることと筋力の維持は同義だった。だが、現在は医療の進歩によって、筋力がなく不健康でも長生きできる時代になった。町田准教授は「今の高齢者は、若いころ栄養不足の中で体を動かしていましたが、今の若者は栄養過多なのに運動をしません。将来、サルコペニアが深刻化するのではと心配です」と言う。

以上、引用です。

日本体育学会の発表の詳細は分かりませんが、サルコペニア肥満なら筋肉量が少なく脂肪量が多いわけですから当然、生活習慣病に関連する可能性は高いと思います。サルコペニア単独の場合は関連するかどうかわかりませんが。

環境要因の影響は無視できませんが、原発性サルコペニアに関しては環境要因以外の要素のほうが大きいのではと私は感じています。将来、サルコペニアが深刻化するのではに関しては、二次性サルコペニアを含めれば、リハ栄養の現場では今でも十分深刻です。二次性サルコペニア対策は急性期、回復期、維持期・生活期のリハで切実だと私は確信しています。

2010年11月12日金曜日

11月27日神奈川NST専門療法士連絡会・懇親会のご案内

11月27日(土)の神奈川NSTフォーラム終了後、18時30分~神奈川NST専門療法士連絡会の会議、19時30分~神奈川NST専門療法士連絡会の懇親会を開催します。

NST専門療法士連絡会会議 18時30分~19時15分 於:新都市ホール小会議室
懇親会(美食酒家ちゃんと。スカイビル店) 19時30分~21時30分 於:横浜スカイビル11階
http://r.gnavi.co.jp/g181302/
TEL:045-440-1701 (会費:¥4,000)

直前のご案内で大変申し訳ありませんが予約の関係上、参加希望の方は11月19日までに下記のアドレスから申し込んでいただけますでしょうか。

https://spreadsheets.google.com/viewform?hl=ja&formkey=dFlGRlp5dE9vaGRGQnRsYlpzOWZ2MHc6MQ#gid=0

もしくは第13回神奈川NSTフォーラムの案内ビラの裏面をFAXして申し込んでいただければと思います。

なお参加対象は、県内外を問わずNST専門療法士、神奈川NST研究会の世話人、神奈川NST専門療法士連絡会をサポートしてくださっている医師に限定させていただきます。皆様のご参加の程よろしくお願い申し上げます。

第5回嚥下研究会「嚥下マニア」

12月4日に第5回嚥下研究会「嚥下マニア」が名古屋第二赤十字病院で開催されます。

http://csd-tokai.com/engemania.pdf

日時:12 月4 日(土) 午前12 時30 分~午後4 時00 分
場所:名古屋第二赤十字病院 (3 病棟1 階研修ホール)
交通:地下鉄(名城線)「八事日赤」駅
*駐車スペースに限りがございますので、公共機関のご利用をお願いします

予定
12:30~14:00 特別講演
「摂食・嚥下障害のリハビリテーション栄養と地域連携の実践」
横浜市立大学市民総合医療センターリハビリテーション科助教 若林 秀隆 先生

14:10~15:00 特別講演
「パーキンソン病の病態と食事」
名古屋大学大学院医学系医学研究科 神経内科講師 渡辺 宏久 先生

15:10~16:00 症例検討・演題発表・商品紹介

参加費:500 円(当日受付にてお渡しください)
申込: メール又はFAX で受け付けます。
代表者氏名・人数・職種・演題の有無(演題名)
E-mail: contact@iryou-ks.com
FAX: 052-910-5515 

FAXでの申し込み用紙は上記HPから入手できます。名古屋周辺の方はよかったらご参加ください。

2010年11月11日木曜日

JSPEN2011コ・メディカル教育セミナー

JSPENのHPにコメディカル教育セミナー情報が掲載されていましたので転送します。

http://jspen.jp/top.html

JSPEN2011コ・メディカル教育セミナー受講募集を2010年11月17日12時より開始いたします
会期:2011年2月18日(金)、19日(土)
会場:ポートメッセなごや ホール 定員:400名
受講料:12,000円(教育セミナーのみ受講)または18,000円(教育セミナー受講+2月17日学術集会参加)
※JSPEN2011学術集会開催会場とは、異なります。ご注意下さい。

申し込みはJSPEN2011のHPからになると思います。
おそらく今回は11月17日のうちに400名の定員を超えると思います。名古屋でJSPEN2011学会参加と一緒に教育セミナーを受講希望の方は、11月17日の午後にHPで申し込みの上、同日中でなるべく早く受講料を振込されることを強くおすすめします。振り込んだ時点で申し込み確定となるはずです。よろしくお願いいたします。

サルコペニアと六君子湯

サルコペニアと六君子湯に関する記事が、ホスピタルシティのHPに掲載されています。

http://hospitalcity.jp/page.asp?idx=10002056&post_idx_sel=10040730

引用ですが、「例えば、最近の幾つかの研究で、六君子湯が抗がん剤(シスプラチン)によるグレリンの胃からの分泌低下を阻止し、さらに脳内におけるグレリン受容体を増加させることによって食欲を高めることが、ラットを使った実験で示されています。」そうです。

グレリンとサルコペニアに関しては以前のブログにも書きましたが、グレリンに関しては有力な治療薬候補だと感じています。ただ、上記引用ではラットの話なので人に当てはまるかどうかわかりませんし、サルコペニアに当てはまるかどうかもわかりません。

六君子湯の効能・効果は、「体力中等度以下で、胃腸が弱く、食欲がなく、みぞおちがつかえ、疲れやすく、貧血性で手足が冷えやすいものの次の諸症:胃炎、胃腸虚弱、胃下垂、消化不良、食欲不振、胃痛、嘔吐」だそうです。

サルコペニアに対する治療として、レジスタンストレーニング、適切な栄養管理、BCAA、ビタミンD、有酸素運動、などがありますが、これらをすべて行ってもなお食欲不振が問題でサルコペニアの治療に難渋している場合には、六君子湯も選択肢の1つになるかと思います。ただ、エビデンスはほとんどありませんので、優先順位は低いですし、十分な説明と同意は欠かせません。

2010年11月10日水曜日

がん悪液質における亜鉛再分配とホメオスタシス異常


もう1つ、がん悪液質における亜鉛再分配とホメオスタシス異常に関する論文を紹介します。

Pontus M. A. Siren & Matti J. Siren. Systemic zinc redistribution and dyshomeostasis in cancer cachexia. J Cachexia Sarcopenia Muscle (2010) 1:23–33 DOI 10.1007/s13539-010-0009-z

下記のHPでPDF全文見ることができます。

http://www.springerlink.com/content/l4xq3023l2710x05/fulltext.pdf

がん悪液質では急性、慢性の炎症によって亜鉛が骨格筋内に蓄積し、それが蛋白分解系(ubiquitin–proteasome pathway)の活動を亢進させることで、筋萎縮を促進させる可能性があります。一方、他の臓器では亜鉛不足となりその結果、食思不振や全身炎症などが生じるかもしれません。

あくまで仮説ですので今後の検証が必要ですが、亜鉛の再分配とホメオスタシス異常が悪液質の進行に影響を与えている可能性があります。全身性の亜鉛不足の場合は亜鉛(プロマック)を処方すべきだと思いますが、悪液質患者に対する亜鉛の過量投与は問題があるかもしれません。

Abstract

Cachexia affects up to two thirds of all cancer
patients and is a significant cause of morbidity and
mortality. It is a complex metabolic syndrome associated
with the underlying illness and characterized by loss of
skeletal muscle tissue with or without loss of fat mass.
Cachexia’s other prominent clinical symptoms include
anorexia, systemic inflammation, pediatric growth failure,
and hypogonadism. The relationship between the symptoms
of cancer cachexia and the underlying illness is
unclear, and there is an urgent need for a better
understanding of the pathophysiology of this syndrome.
Normal Zn metabolism is often disrupted in cancer
patients, but the possible effects of systemic Zn dyshomeostasis
in cachexia have not been investigated. We
propose that the acute phase response can mediate Zn
redistribution and accumulation in skeletal muscle tissue
and contribute to the activation of the ubiquitin–proteasome
pathway that regulates protein catabolism. This
chronic redistribution deprives Zn from other tissues and
organs and compromises critical physiological functions
in the body. The cardinal symptoms of Zn deficiency are
anorexia, systemic inflammation, growth failure in
children, and hypogonadism. These symptoms also
prominently characterize cancer cachexia suggesting that
the role of systemic Zn dyshomeostasis in cachexia
should be investigated.

ビタミンDとサルコペニア進行の関連論文

今日は、ビタミンDとサルコペニア進行の関連を見た論文を紹介します。

David Scott, Leigh Blizzard, James Fell, Changhai Ding, Tania Winzenberg and Graeme Jones: A prospective study of the associations between 25-hydroxyvitamin D, sarcopenia progression and physical activity in older adults. Clinical Endocrinology (2010) 73, 581–587

ビタミンDとサルコペニアの関連を見た論文はいくつもありますが、この論文の特徴はビタミンDがサルコペニア進行の独立因子であることを初めて検証した前向きコホート研究ということです。

ビタミンDが低い方は正常の方と比較して、平均2.6年のフォローアップ期間後に、四肢の筋肉量、下肢筋力、下肢の筋肉の質(下肢筋力÷下肢筋肉量)、身体活動量(歩数)が有意に低くなりました。これは日照時間と身体脂肪量で調整した後の結果です。

ビタミンDが正常より低い場合には骨粗鬆症だけでなくサルコペニアが進行しやすい可能性がありますので、ビタミンDをサプリメントで補給する適応はあると思います。正常範囲内にあればもちろん補給する必要はありません。ただ、保険診療では血中ビタミンDを測定できないことが問題です。

Abstract
Objective  Low 25-hydroxyvitamin D (25OHD) levels may be associated with both sarcopenia (the age-related decline in muscle mass and function) and low physical activity (PA). Our objective was to describe prospective associations between 25OHD, muscle parameters, and PA in community-dwelling older adults. Design  Prospective, population-based study with a mean follow-up of 2·6 ± 0·4 years. Patients  Six hundred and eighty-six community-dwelling older adults (49% women; mean ± SD 62 ± 7 years old). Measurements  Appendicular lean mass percentage (%ALM) and body fat assessed by Dual-energy X-ray Absorptiometry, leg strength by dynamometer, leg muscle quality (LMQ), PA assessed by pedometer, self-reported sun exposure by questionnaire, and serum 25OHD measured by radioimmunoassay. Results  Participants with 25OHD ≤50 nm had lower mean %ALM, leg strength, LMQ and PA (all P < 0·05). As a continuous function, baseline 25OHD was a positive independent predictor of change in leg strength (β = 5·74 kg, 95% CI 0·65, 10·82) and LMQ (β = 0·49 kg/kg, 95% CI 0·17, 0·82). Also, change in 25OHD was positively predicted by baseline %ALM (β = 2·03 pm/p.a., 95% CI 0·44, 3·62) leg strength (β = 0·30 pm/p.a., 95% CI 0·06, 0·53), LMQ (β = 4·48 pm/p.a., 95% CI 0·36, 8·61) and PA (β = 2·63 pm/p.a., 95% CI 0·35, 4·92) after adjustment for sun exposure and body fat. Conclusions  25OHD may be important for the maintenance of muscle function, and higher skeletal muscle mass and function as well as general PA levels may also be beneficial for 25OHD status, in community-dwelling older adults.

2010年11月9日火曜日

シンボルスライドとシンボルフレーズ

今日も、齊藤裕之、佐藤健一編、医療者のための伝わるプレゼンテーション、JJNスペシャルNo89、医学書院の中から、シンボルスライドとシンボルフレーズについて紹介します。

http://www.igaku-shoin.co.jp/bookDetail.do?book=81292

この書籍では「ポイントを最小限に絞ること」の重要性が繰り返し強調されています。そして、最も重要なスライドであるシンボルスライドと、最も重要なフレーズであるシンボルフレーズは、当然話す内容のポイントですので、十分吟味すること、繰り返しプレゼンの中で使うことが必要です。

記憶を認知心理学的に考えてみれば、記銘(インプット)、保持、想起(アウトプット)の3段階に分類できます。このうち、記銘のポイントは、興味・関心を持てる内容であること、プレゼンに集中していること、理解しやすい内容であることの3点です。そして、保持のポイントは、復習・繰り返しにつきます。

つまり、シンボルスライドとシンボルフレーズをプレゼンの中に取り込んで、興味・関心を引くインパクトのあるものにすること、ポイントを絞ること、わかりやすい内容にすること、繰り返し使うことが、参加者の頭に残るために有用です。認知心理学的にも適切な内容、書籍であるといえます。

考えてみれば先日聞いた講演でも頭に残っていることはあまりありません。想像以上に聞き手には伝わっていないと考えるべきです。そうすると、ポイントを3つ以内に絞って、参加者が記銘、保持、想起しやすいように心がけることが有用です。

私はシンボルスライドとシンボルフレーズになりうるものは持っていましたが、これらを意識して作成して繰り返し使用するということはしていませんでした。今後のリハ栄養のプレゼンではこれらを意識して伝えたいと考えています。

ちなみにリハ栄養のシンボルフレーズは、「栄養ケアなくしてリハなし」「リハにとって栄養はバイタルサインである」の2つです。リハ栄養を多くの方に知ってほしいので、これらのシンボルフレーズを繰り返し訴えていきます。

2010年11月8日月曜日

サルコペニアと悪液質に対する運動療法の効果

今日はJ Cachexia Sarcopenia Muscleの中から、サルコペニアと悪液質に対する運動療法の効果に関する論文を紹介します。

Karsten Lenk, Gerhard Schuler, Volker Adams: Skeletal muscle wasting in cachexia and sarcopenia: molecular pathophysiology and impact of exercise training. J Cachexia Sarcopenia Muscle (2010) 1:9–21 DOI 10.1007/s13539-010-0007-1

下記のHPで全文PDFファイルを見ることができます。

http://www.springerlink.com/content/k34nvm13847p280n/fulltext.pdf

サルコペニア(この論文では狭義、加齢によるサルコペニア)と悪液質ではもちろん筋肉量低下が問題になります。近年、これらの病態では蛋白分解系(ubiquitin–proteasome system, myostatin, apoptosis inducing factors)が亢進して、合成系(insulin-like growth factor 1)が低下していることがわかってきています。

治療としては現時点では運動療法が最も期待されています。運動療法にはレジスタンストレーニングと有酸素療法がありますが、両方とも有効という報告があります。加齢によるサルコペニアの方に運動療法を行うことには異論はありませんが、悪液質の方に積極的な運動療法を行うことには、やや抵抗感があります。

仮説ですが、前悪液質もしくは悪液質の段階(重症・難治性・不応性の悪液質ではない段階)であれば、適切な栄養療法が行われている場合には、一定の運動療法を行ったほうがよいと考えます。廃用予防程度の運動からもう少し踏み込んだ積極的な運動療法の適応もあるかもしれません。運動+栄養でCRPが改善するという報告もありますし。ただ、このあたりはエビデンスがほとんどありませんので、今後の課題だと考えます。

Abstract

Skeletal muscle is the most abundant tissue in the
human body, and the maintenance of its mass is essential to
ensure basic function as locomotion, strength and respiration.
The decision to synthesize or to break down skeletal
muscle proteins is regulated by a network of signaling
pathways that transmit external stimuli to intracellular
factors regulating gene transcription. The tightly regulated
balance of muscle protein breakdown and synthesis is
disturbed in several distinct myopathies, but also in two
pathologies: sarcopenia and cachexia. In recent years, it
became evident that in these two muscle wasting disorders
specific regulating molecules are increased in expression
(e.g. members of the ubiquitin–proteasome system, myostatin,
apoptosis inducing factors), whereas other factors
(e.g. insulin-like growth factor 1) are down-regulated. So
far, not many treatment options to fight the muscle loss are
available. One of the most promising approaches is exercise
training that, due to its multifactorial effects, can act on
several signaling pathways. Therefore, this review will
concentrate on specific alterations discussed in the current
literature that are present in the skeletal muscle of both
muscle wasting disorders. In addition, we will focus on
exercise training as an intervention strategy.

2010年11月5日金曜日

京滋 摂食嚥下を考える会HP

京滋 摂食嚥下を考える会のHPを紹介します。

http://keijienge.web.fc2.com/index.html

私は7月31日に京滋 摂食嚥下を考える会の講演でお邪魔させていただきました。この会は今年初めの京都での飲み会をきっかけとして、トントンと準備が進み立ち上がった会です。その飲み会にも私は参加していますので、京滋 摂食嚥下を考える会との縁は深いといえます。

神奈川摂食・嚥下リハ研究会のHPは、研究会立ち上げ後2年以上たってようやく作ることができましたが、京滋 摂食嚥下を考える会は早々にこのようなきれいかつ充実したHPを作って素晴らしいと思います。また、京都府、滋賀県下での勉強会、講演会、実習等のお手伝いも企画していくそうです。

今までは神奈川摂食・嚥下リハ研究会の活動も多少参考にしてくださったと思いますが、今後は神奈川摂食・嚥下リハ研究会のほうが、京滋 摂食嚥下を考える会の活動を参考にしていかないといけないなと感じています。京滋 摂食嚥下を考える会の益々のご発展を期待しています。

医療者のための伝わるプレゼンテーション

今日は、齊藤裕之、佐藤健一編、医療者のための伝わるプレゼンテーション、JJNスペシャルNo89、医学書院を紹介します。

http://www.igaku-shoin.co.jp/bookDetail.do?book=81292

プレゼンテーションの書籍はいろいろありますが、医療人向けにこれだけわかりやすく執筆された書籍は、他にはないと私は思います。プレゼンの初心者から中級者まで、おすすめできる書籍です。

この書籍によると、プレゼンのポイントは「ポイントを最小限に絞る」ことと「プレゼンをデザインする」ことの2つです。プレゼンのデザインについては、目次にあるような5つのステップを順番に踏んでいくことが重要です。

臨床研究でも情報検索でも実際にデータや情報の収集に走る前にデザインを熟考することが重要ですが、プレゼンでも同様に重要です。これらでは行動する前に目的、目標、戦略を十分に考えることが大事ですね。ものによっては行動しながら考えればよいものもありますが。

私はポイントが2つであることもとても参考になりましたし、5つのステップの中の特にStep2とStep3が参考になりました。また、ポイントをまとめるときは最大3つまでにするのがよいと感じました。幸い明日、明後日と松山、高松で講演する機会がありますので、早速いくつか実践してみます。今日の明日でうまくいくかどうかはわかりませんが…。

目次

本書を読まれるみなさんへ
  本書の使い方
  本書の“プレゼンター”

今、なぜプレゼンテーションなのか?
 医療者に“プレゼンテーション能力”が問われる理由
 看護師も例外ではありません!
 「看護師はプレゼンテーションが苦手」???
 依頼されたら引き受けてみよう!
 プレゼンテーションが生み出す「価値」とは?
 プレゼンテーションを作り上げる“枠組み”
 この本で最も伝えたいこと

STEP 1 Pre-Design
プレゼンテーションの目的を明確にする
 “どのような”目的を設定するか
 目的の設定方法(1) 「あなた(プレゼンター)の立場」は?
 目的の設定方法(2) 「聞き手のニーズ」を知る方法
 目的の設定方法(3) 「目的」と「聞き手のニーズ」を“赤い糸”で結ぶ

STEP 2 Design
プレゼンテーションの設計図を描く
 プレゼンテーションの3部構成
 目次(小目標)を立てる
 構成の各パートをデザインする(1) Opening/Intro-聞き手の心に火をつける
 構成の各パートをデザインする(2) Body-説得力をもたせる
 構成の各パートをデザインする(3) Conclusion-聞き手を尊重している証

STEP 3 Building Content
プレゼンテーションを作成する
 伝えるために作る
 効果的な「スライド」の作り方(1) スライド全体の基本スタイルを統一しよう
 効果的な「スライド」の作り方(2) 読みやすい文字
 効果的な「スライド」の作り方(3) 理解を助ける図とグラフ
 効果的な「スライド」の作り方(4) 写真の効果的な使い方
 効果的な「スライド」の作り方(5) アニメーションを活用する
 効果的な「スライド」の作り方(6) これからは動画の時代だ
 効果的な「スライド」の作り方(7) スライドの最終仕上げ(校正)
 魅力的なポスターの作り方(1) ポスターならではの配慮をしよう
 魅力的なポスターの作り方(2) ポスター作成の手順・原則・創意工夫
 「ハンドアウト」をつくってみよう
 板書の技術
 Coffee Break! 誌上プレゼンテーションコンテスト

STEP 4 Delivery
いよいよ本番!
 プレゼンテーション直前の準備Point(1) 命運を握るリハーサル
 プレゼンテーション直前の準備Point(2) 本番が楽になる読み原稿を作る
 プレゼンテーション直前の準備Point(3) 当日、会場でできるこれだけの環境整備
 プレゼンテーションの実施Point(1) マナーを守って好感度アップ
 プレゼンテーションの実施Point(2) 4つの言語テクニック
 プレゼンテーションの実施Point(3) 3つの非言語テクニック
 もうこわくない質疑応答

STEP 5 Feedback
次なるプレゼンテーションに向けて
 フィードバックで“もっと”よくなる
 フィードバック用紙を活用しよう

おわりに
 理論はわかった! でもすぐできないのはなぜ?
 この本で最も伝えたかったこと

2010年11月3日水曜日

摂食・嚥下に関わる筋肉群とサルコペニア

今日は、摂食・嚥下に関わる筋肉群とサルコペニアの関係について考えてみます。

摂食・嚥下に関わる筋肉群は大きく分けて7つあります。

表情筋
咀嚼筋
舌筋
舌骨上筋
舌骨下筋
口蓋筋
咽頭筋

サルコペニアではこれらの摂食・嚥下に関わる筋肉の筋力と筋肉量が減少することで、摂食・嚥下障害となりえます。

表情筋、口輪筋のサルコペニアで口の開閉や咀嚼時の食塊保持が困難となることがあります。

咀嚼筋のサルコペニアで咀嚼機能が低下します。神経性食思不振症で咀嚼困難を訴える方がいます。

舌筋のサルコペニアで舌の運動機能が低下しますので、食塊形成や食塊の咽頭への送り込みが困難となります。

舌骨上筋のサルコペニアで開口や舌骨の挙上が困難となります。サルコペニアによる嚥下障害で一番問題となるのは、舌骨や喉頭の挙上が少なくなることで咽頭残留や誤嚥を生じることだと私は考えています。

舌骨下筋、甲状舌骨筋のサルコペニアで甲状軟骨の挙上が困難となります。

口蓋筋、口蓋帆挙筋のサルコペニアで軟口蓋の挙上が困難となり、鼻咽腔閉鎖不全となることがあります。

咽頭筋のサルコペニアで咽頭の挙上や咽頭腔を狭くすることが困難となり、嚥下圧が低くなり咽頭残留の増加につながります。

摂食・嚥下は多くの筋肉による協調運動ですので、これらの筋肉がサルコペニアになれば当然、摂食・嚥下障害となります。ただ臨床では、舌骨や喉頭の挙上が少ないことと咀嚼機能の低下が目につく印象です。その他の嚥下に関わる筋力低下も重なって、食塊形成困難、咽頭残留、誤嚥につながっているのだと思いますが、サルコペニアの影響が出やすい筋肉と出にくい筋肉があるのかもしれません。

摂食・嚥下に関わる筋肉のサルコペニアによる嚥下障害の治療として、安易に筋トレ、レジスタンストレーニングに走ってはいけません。サルコペニアの原因が、加齢、活動、疾患、栄養のどれなのか複数なのかを評価したうえで、それに見合った治療方法を選択することが必要です。

低栄養によるサルコペニアに対して筋トレをすれば、適切な栄養管理がなされていない限り、筋肉量はさらに低下して嚥下障害は悪化します。サルコペニア=廃用ではありませんので、十分な留意が必要です。筋トレをしてよい状況であることを確認してはじめて、各筋肉の筋トレを行ってください。

高松:第14回リハシンポジウムのご案内

第14回リハビリテーションシンポジウムのご案内

 3年前にDay by Day 香川主催でリハビリテーションシンポジウムを開催しました。急性期、回復期、在宅という流れの中、在宅に帰っても役に立っているリハビリができているかどうかのシンポジウムをしました。
 前回はPT、OT、看護師のみでシンポジストをしましたが、今回は、脳神経外科Dr、リハビリテーションDr、PT、OT、ST、訪問看護師がシンポジストとして参加し、下記のテーマに沿った内容でリハビリを見直していく機会を作りました。
 シンポジストと会場が一体となりディスカッションをし、これからのリハビリを考えるきっかけになると思います。この機会是非、ご参加ください。

日 時: 平成22年11月7日(日)13:00~17:00
                  (受付:12:30~)
場 所: 生涯学習センター 多目的ホール 
高松市片原町11番地1  TEL:087-811-6222
参加費: 一般;2,000(冊子は別料金:500円)
     学生;  500(冊子は別料金:500円)

テーマ: 病院と地域を結ぶリハビリテーション(今の若者は頑張っている!)

特別講師: 若林 秀隆 横浜市立大学附属市民総合医療センター「リハビリテーション栄養と地域連携」
      鎌野 倫加(NS) 訪問看護ステーション あした

リハビリテーションシンポジウム
座長: 藤川 智広 キナシ大林病院・リハビリテーション科
シンポジスト  沖屋 康一先生  回生病院・脳神経外科
        植木 昭彦先生  高松協同病院・リハビリテーション科
        宮崎慎二郎(PT)KKR高松病院・リハビリテーション科
        山下 良二(OT)リハビリクリニックおさか・リハビリテーション科
        黒川 優子(ST)高松協同病院・リハビリテーション科
        奈良明日子(NS)訪問看護ステーション あした

申込方法: 参加者の氏名、職種、所属の記載の上、下記にメールをしてください。
      メール: ashita@hi.enjoy.ne.jp  鎌野まで
※メール送信の出来なかった方はFAXでの受け付けもしております。FAX:087-813-0545

主催:Day by Day 香川
協賛:ネッツトヨタ香川屋島店、株式会社メディカルサイエンス、悠悠シルバーケア福祉会、訪問看護ステーションあした

2010年11月2日火曜日

Journal of Cachexia, Sarcopenia and Muscle悪液質レビュー論文

Journal of Cachexia, Sarcopenia and Muscleの中から、悪液質に関するレビュー論文を紹介します。

Stephan von Haehling, and Stefan D. Anker: Cachexia as a major underestimated and unmet medical need: facts and numbers. Journal of Cachexia, Sarcopenia and Muscle Volume 1, Number 1, 1-5, DOI: 10.1007/s13539-010-0002-6

下記のHPで全文PDFを見ることができます。

http://www.springerlink.com/content/d20477631090189w/fulltext.pdf

悪液質は見逃されていることがよくあります。がん、慢性心不全(CHF)、慢性腎臓病(CKD)、COPD、関節リウマチ、アルツハイマー病、感染症(慢性)、その他の慢性疾患の結果、悪液質を認めることがあります。日本ではがんによる悪液質以外、関心が低いのが現状です。

すべての疾患による悪液質の有病割合は約1%と推定されています。つまり、日本では約120万人が悪液質の状態にあるといえます。悪液質は3-12ヶ月以内での5%以上の体重減少に加え、骨格筋減少、疲労、検査値異常(貧血、炎症、低アルブミン)などの存在で診断することができます(Evans, 2008)。下記に詳細を示します。

悪液質の原因疾患の存在
12ヶ月以内に5%以上の体重減少(or BMI<20)>0.5、Hb<12.0、Alb<3.2)
(Evans WJ, et al: Cachexia: A new definition, Clinical Nutrition , 2008)

がん以外の悪液質の原因疾患で特に問題となっているのは、COPD、CKD、CHFです。悪液質の状態にある患者の1年以内の死亡率はおよそ、COPDで10-15%、CHFとCKDで20-30%、がんで80%です。

繰り返しになりますが、悪液質と飢餓はどちらも低栄養ですが、別の概念です。飢餓と侵襲と悪液質を区別しないで単に低栄養ということで一緒にしているうちは、悪液質を見過ごしてしまう可能性が高いです。Evansらの診断基準、もしくは前悪液質の診断基準できちんと悪液質の有無を判断することが大切です。

前悪液質の診断基準:下記の4項目をすべて満たす
 悪液質の原因となる慢性疾患の存在
 6ヶ月以内に5%以上の体重減少
 慢性・再発性の全身炎症反応(CRP陽性)→0.5でも陽性と考えます。
 食思不振もしくは食思不振に関連した症状
Muscaritoli M, et al: Consensus definition of sarcopenia, cachexia and pre-cachexia: joint document elaborated by Special Interest Groups (SIG) "cachexia-anorexia in chronic wasting diseases" and "nutrition in geriatrics". Clinical Nutrition. 29(2):154-159, 2010

Abstract
Cachexia is a serious, however underestimated and underrecognised medical consequence of malignant cancer, chronic heart failure (CHF), chronic kidney disease (CKD), chronic obstructive pulmonary disease (COPD), cystic fibrosis, rheumatoid arthritis, Alzheimer's disease, infectious diseases, and many other chronic illnesses. The prevalence of cachexia is high, ranging from 5% to 15% in CHF or COPD to 60% to 80% in advanced cancer. By population prevalence, the most frequent cachexia subtypes are in order: COPD cachexia, cardiac cachexia (in CHF), cancer cachexia, and CKD cachexia. In industrialized countries (North America, Europe, Japan), the overall prevalence of cachexia (due to any disease) is growing and currently about 1%, i.e., about nine million patients. The relative prevalence of cachexia is somewhat less in Asia, but is a growing problem there as well. In absolute terms, cachexia is, in Asia (due to the larger population), as least as big a problem as in the Western world. Cachexia is also a big medical problem in South America and Africa, but data are scarce. A consensus statement recently proposed to diagnose cachexia in chronic diseases when there is weight loss exceeding 5% within the previous 3–12 months combined with symptoms characteristic for cachexia (e.g., fatigue), loss of skeletal muscle and biochemical abnormalities (e.g., anemia or inflammation). Treatment approaches using anabolics, anti-catabolic therapies, appetite stimulants, and nutritional interventions are under development. A more thorough understanding of the pathophysiology of cachexia development and progression is needed that likely will lead to combination therapies being developed. These efforts are greatly needed as presence of cachexia is always associated with high-mortality and poor-symptom status and dismal quality of life. It is thought that in cancer, more than 30% of patients die due to cachexia and more than 50% of patients with cancer die with cachexia being present. In other chronic illnesses, one can estimate that up to 30% of patients die with some degree of cachexia being present. Mortality rates of patients with cachexia range from 10% to 15% per year (COPD), to 20% to 30% per year (CHF, CKD) to 80% in cancer.

Journal of Cachexia, Sarcopenia and Muscle

Journal of Cachexia, Sarcopenia and Muscleという新しい雑誌ができました。下記のHPですべての論文の全文PDFを無料で見ることができます。ありがたいことです。

http://www.springerlink.com/content/2190-5991/1/1/

今まで悪液質やサルコペニアを専門とした雑誌はありませんでしたので、これらの領域に関心がある人にはとても参考になる雑誌だと思います。私も早速一通り読みました。一部の論文は別で紹介したいと思います。また、以前このブログでいくつも紹介したthe 5th Cachexia Conferenceの抄録集もPDFで見ることができます。

IT社会というのは本当に学習しやすい社会だと感じます。自分の関心のある領域に関してアンテナをはっておけば、どんどん最新の情報を無料でメール(PubMedとGoogle Scholarのアラート機能。とても有用です)で入手して必要ならアクセスできます。このような素晴らしい機会を活用しないともったいないと思っています。

雑誌内容

Cachexia as a major underestimated and unmet medical need: facts and numbers
Stephan von Haehling and Stefan D. Anker

Ethical guidelines for authorship and publishing in the Journal of Cachexia, Sarcopenia and Muscle
Stephan von Haehling, John E. Morley, Andrew J. S. Coats and Stefan D. Anker

Skeletal muscle wasting in cachexia and sarcopenia: molecular pathophysiology and impact of exercise training
Karsten Lenk, Gerhard Schuler and Volker Adams

Systemic zinc redistribution and dyshomeostasis in cancer cachexia
Pontus M. A. Siren and Matti J. Siren

The effects of a high-caloric protein-rich oral nutritional supplement in patients with chronic heart failure and cachexia on quality of life, body composition, and inflammation markers: a randomized, double-blind pilot study
Piotr Rozentryt, Stephan von Haehling, Mitja Lainscak, Jolanta U. Nowak and Kamyar Kalantar-Zadeh, et al.

Abstracts of the 5th Cachexia Conference, Barcelona, Spain, December 5–8, 2009
Stephan von Haehling

2010年11月1日月曜日

週刊ダイヤモンド:みんなのドラッカー

週刊ダイヤモンドの最新号で、「みんなのドラッカー」という特集が掲載されています。

http://dw.diamond.ne.jp/

私の講演を聞いたことがある方はご存知かと思いますが、私はほとんどの講演でドラッカーの話も少ししています。初めてドラッカーのスライドを入れたのは約4年前です。そのくらい私にとって、ドラッカーの書籍は精神的大黒柱となっています。私の影響でドラッカーを読んだという人はそれほど多くないと思いますが…。

今回は、「もしドラ」もし高校野球の女子マネージャーがドラッカーの「マネジメント」を読んだら、が150万部のベストセラーになってドラッカーブームが再燃したことによる特集だと思います。「もしドラ」同様、ドラッカーについて、かなりわかりやすく解説されています。まだドラッカーの書籍を読んだことがない方や、「もしドラ」しか読んだことがない方にお勧めします。

Part6では、ドラッカー名言集ということで、30の名言が紹介されています。上位には、

・企業の目的は顧客の創造
・我々の事業は何か
・知りながら害をなすな
・自らの強みに集中する
・明日のために昨日を捨てる
・何によって人に憶えられたいか

などがあります。強みと何によって憶えられたいかは、私もいつも紹介している言葉です。それ以外でも、NSTや嚥下チームの顧客は誰か、事業は何か、明日のために昨日を捨てるを真摯に考えることは、チーム医療の充実につながると確信します。

そしてぜひ、実際にドラッカーの書籍(解説書ではなく)を読んでほしいと思います。意識しようがしまいが、知識労働者である医療人は、セルフマネジメント、チームマネジメント、個々の患者へのマネジメントをしているはずです。意識して成果を考えてマネジメントしたほうが、いずれも成果の質と量が改善します。生き方も変わります。

ネット世論調査でドラッカーの認知度は3割弱とありますが、医療人の中での認知度は1~1.5割程度だと思います。医療人こそ知識労働者兼組織労働者ですから、ぜひドラッカーを読んでほしいものです。

みんなのドラッカー目次

Part 1 ドラッカー”最後の授業”
「ドラッカー最後の講義」初公開
なぜドラッカーは今も新しいか
Interview 山脇秀樹●ドラッカースクール学部長
Interview ジョセフ・マチャレロ●ドラッカースクール教授
Interview ドリス・ドラッカー●故ピーター・F・ドラッカー夫人
Interview リック・ワルツマン●ドラッカー・インスティテュート エグゼクティブ・ディレクター
History ドラッカーの足跡と世界史上の出来事

Part 2今だからこそドラッカー&『もしドラ』
企業から学生までの難題解決策
クリーニング業を伸ばす兄弟

Part 3学校・会社に広がるドラッカー
『もしドラ』読者たちの真摯な姿
Column 糖尿病治療にドラッカーを活用

Part 4  もっと!『もしドラ』&ドラッカー
『もしドラ』の主人公 みなみの教科書
次に読むべきドラッカー本
対談 『もしドラ』秘話・アニメ化の舞台裏

Part 5 わたしのドラッカー
波瀾万丈の山崎製パンの場合
多くの経済人の心をつかんだ経営理論
Column パナソニックもユニクロも
大物経営者たちが鳴らす警鐘
Interview 堀田 力●公益財団法人さわやか福祉財団理事長
Interview 佐伯啓思●京都大学大学院人間・環境学研究科教授

Part 6 ドラッカー名言集
ドラッカーの「名言トップ30」