2010年8月26日木曜日

利益相反とは

今日は、利益相反(Conflict of Interest:COI)について紹介します。厚生労働科学研究における利益相反(Conflict of Interest:COI)の管理に関する指針(平成20年3月31日科発第0331001号厚生科学課長決定)からの引用が主です。

http://www.mhlw.go.jp/general/seido/kousei/i-kenkyu/rieki/txt/sisin.txt

この指針では以下のように定義されています。「COIとは、具体的には、外部との経済的な利益関係等によって、公的研究で必要とされる公正かつ適正な判断が損なわれる、又は損なわれるのではないかと第三者から懸念が表明されかねない事態をいう。公正かつ適正な判断が妨げられた状態としては、データの改ざん、特定企業の優遇、研究を中止すべきであるのに継続する等の状態が考えられる。」

データの改ざんは問題外ですが、特定企業の優遇に関しては特に製薬企業とのつながりが問題となりやすいと感じています。企業との共同研究や技術移転といった産学連携活動は適正に推進されるべきですが、製薬企業に飲み込まれるような連携は適切とは言い難いです。

「米国における検討においても、特定のCOIそのものが問題であることはまれであり、問題はむしろCOIへの対応であって、ほとんどの場合、COIが明らかにされないか、評価又は管理されない場合に問題が発生しているとされている。米国の有力大学においてもCOIへの対応は様々であり、比較的厳しい対応を取っている大学においても、関係する企業等から年間1万ドルを超える収入等がある場合には、関係する臨床研究への参加を原則禁止している(以下、省略)」とあります。

そのため、当院では臨床研究を開始する前の倫理審査委員会にかける段階で、「臨床研究に係る利益相反自己申告書」を提出することになっています。どこの施設も同様だと思いますが。下記の項目に関して、有無を申請し、ある場合にはその詳細を記載して申請することになっています。

・同一の企業・団体からの機関収入(※1)が過去3年間でひとつの企業から単年度で200万円以上ありますか?
 (※1)奨学寄附金の受入れ、共同研究、受託研究、権利譲渡、技術研修、委員等の委嘱、客員研究員やポストドクトラルフェローの受入れ、機器の提供 等

・同一の企業・団体からの個人収入(※2)が過去3年間でひとつの企業から単年度で100万円以上ありますか?
 (※2)診療報酬は除く。兼業または役員兼業(ただし、兼業先が国、地方行政法人、学校及び病院等を除く)、謝金等

・産学連携活動の相手先のエクイティ(※3)保有の有無
 (※3)申告時に保有している上記研究課題に関連する企業の株式、新株予約権等をいいます。

・企業・団体からの無償の役務提供及び機材提供の有無

・上記1.2.3の関係が、申請者と生計を一にする配偶者及び一親等の者(両親及び子ども)に生じているかどうか

 自分の臨床研究ではこれらはすべてなしとなりますが、いずれかがありとなる方も少なくないと思います。この場合、倫理審査委員会を通すときだけ明らかにするのではなく、必要な時にはいつでも明らかできるようにしておくほうが望ましいと私は考えています。明らかにしたくないような疾しい関係は、持つべきではありません。

指針には、原則として下記の項目が記載されています。

「・研究をバイアスから保護すること。
・ヒトを対象とした研究においては被験者が不当な不利益を被らないようにすること。
・外部委員をCOI委員会等に参加させる等、外部の意見を取り入れるシステムを取り入れること。
・法律問題ではなく、社会的規範による問題提起となることに留意し、個人情報の保護を図りつつ、透明性の確保を管理の基本とすること。
・研究者はCOIの管理に協力する責任があり、所属機関はCOIの管理責任と説明責任があることを認識し、管理を行うこと。
・客観性、公平性を損なうという印象を社会に与えることがないように管理を行うこと。」

研究倫理は年々厳しくなっている印象がしますが、よい臨床研究を行うためには、当然と言えば当然です。こういったことも十分理解したうえで、臨床研究に取り組みたいものです。

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