2010年8月31日火曜日

Nutritional rehabilitation

以前、「栄養リハ」と「リハ栄養」の違いをブログに書きましたが、その第2回です。
リハ栄養を英語でどう表記するか悩ましく感じています。英語ではNutritional rehabilitationという言葉はそれなりに使われています。例えば、

Mehler PS, et al: Nutritional rehabilitation: practical guidelines for refeeding the anorectic patient. J Nutr Metab. 2010;2010. pii: 625782. Epub 2010 Feb 7.

という論文があります。抄録を見ると、下記のようになっています。

Abstract
Weight restoration is crucial for successful treatment of anorexia nervosa. Without it, patients may face serious or even fatal medical complications of severe starvation. However, the process of nutritional rehabilitation can also be risky to the patient. The refeeding syndrome, a problem of electrolyte and fluid shifts, can cause permanent disability or even death. It is essential to identify at-risk patients, to monitor them carefully, and to initiate a nutritional rehabilitation program that aims to avoid the refeeding syndrome. A judicious, slow initiation of caloric intake, requires daily management to respond to entities such as liver inflammation and hypoglycemia that can complicate the body's conversion from a catabolic to an anabolic state. In addition, nutritional rehabilitation should take into account clinical characteristics unique to these patients, such as gastroparesis and slowed colonic transit, so that measures can be taken to ameliorate the physical discomforts of weight restoration. Adjunct methods of refeeding such as the use of enteral or parenteral nutrition may play a small but important role in a select patient group who cannot tolerate oral nutritional rehabilitation alone.

この抄録を読む限り、栄養改善(この論文では摂食障害患者の)=nutritional rehabilitationで、refeeding syndromeを避けるよう注意しなければいけないとあります。いわゆるリハ的なことは記載されていません。

私がリハ栄養に込めているのは、むしろスポーツ栄養の患者・高齢者・障害者バージョンのイメージです。栄養サポートをすることで、スポーツ選手のパフォーマンスをより高めることがスポーツ栄養です。これと同様に、患者・高齢者・障害者の疾患予防・治療、機能、ADL、QOLをより高めるよう栄養サポートすることがリハ栄養です。

そうすると、リハ栄養の英語訳としてnutritional rehabilitationは不適切となります。スポーツ栄養がsports nutritionですので、リハ栄養はrehabilitation nutritionでよいかと今のところ考えていますが、英語圏でこのような使われ方は現在、心臓領域以外ではされていないようです。

英語圏でもリハ栄養のコンセプトがあまり存在していない可能性があります。このような悩みを早く克服できるよう、自らも何らかの行動をしなければいけないなと感じています。

2010年8月30日月曜日

リーダーになる人に知っておいてほしいこと II

今日は松下幸之助述、松下政経塾編、リーダーになる人に知っておいてほしいことⅡ、PHPを紹介します。

http://www.php.co.jp/bookstore/detail.php?isbn=978-4-569-77711-5

松下幸之助氏を知らない方はいないと思いますが、パナソニック、松下政経塾、PHPの生みの親です。今の政治家には松下政経塾出身の方も少なくありませんし、現在ももちろん塾生がいます。

松下政経塾HP
http://www.mskj.or.jp/

この書籍は松下幸之助氏が自ら創設した松下政経塾において、若き塾生たちに直接語りかけた記録の中から、いまリーダーの任にある人そしてこれからリーダーになる人に資するところがあると思われる内容を厳選、要点整理をしたものです。実体験に基づいた経験から学んだ教訓、本質が紹介されています。

実際、第1章の最初に「どんなに面白い仕事をしても、それをすべて無意味なものとして捨て去ってしまう人がいる。一方、どんなにつまらない仕事でも、一所懸命に力の限り取り組んでその体験を生かす人がいる。その両者のあいだには、たいへんんあ違いがある。」とあります。特に医療人は他では得難い貴重な仕事や経験をたくさんしていますが、それを捨て去るか体験を生かすかで、成長を続けるか衰退するかが決まります。

個人的には第3章の最初の「苦労に苦労を重ねることによって磨かれ完成した人格は、その人の仕事にこもる。」という言葉が、特に心に響きました。「今日、成功を見るに至った企業には、坦々とした果てしない道のりがあり、人知れない、それこそ言うに言えない苦労がいっぱいあったと思う。」とあります。

本人がそれを苦労ととらえているかどうかは別として、沢山の努力、失敗、体験が見えないところにあり、その上に成功があることは、企業に限らず他の組織でも個人でも同様でしょう。成功を氷山の一角ととらえるか、氷山のすべてととらえるかで、成功するか、人格が磨かれるかが決まるような気がします。

「塾生諸君もみずからの人生をそういう考え方で歩まんといかんな。」とまとめています。医療人は臨床ではなかなか失敗することが許されない環境にあります。一方、臨床研究は最初から失敗することがわかっている研究は倫理的に問題がありますが、そうでなければ結果的に失敗することは許されると思います。

学会発表や論文執筆で多くの経験、失敗をすることは、貴重な学習と成長の機会であり、人格の研磨にも有用かもしれません。臨床で失敗できない分、研究で失敗を含めた経験を積むことをおすすめします。

目次

1章 学び方―みずからを鍛え、磨き、高める(体験を生かす人、捨て去る人
人を幸せにするリーダー
自分で自分を監督しているか
自修自得をしているか
実学の積み重ねが一瞬にして現われる
習うことも教えることもできないこと
素直な心で知恵を磨く
自分を叱り自分をほめているか
自我は一生つきまとう
先見性は必要か
肉眼と心眼)

2章 考え方―事の本質を知り、知恵を使いこなす(洞察力のある人になる
志を固めて、堅持する
世間から知恵を授かる
追いつめられて、いい知恵は出てくる
融通無碍になる
人間の性を認める
“清”を飲んでも“濁”は捨てる
人間を高め、知恵を高める
自分で辛酸をなめる
努力の総和が繁栄を産む
悲観と楽観
心に善意をもつ)

3章 働き方―人間の本質を知り、人間を大切にする(人格と仕事
ふわふわしていては何もできない
先立つものは信用
熱意と運命
一人一業
商品と広告宣伝
社会通念という義務
本業に専心する
それぞれにそれぞれの役割がある
“とどめ”を刺す
発展と衰退にある真理
会社という運命共同体
前進すべきか、撤退すべきか
ただ厳しいだけではいけない
“空気”でわかる)

4章 生き方―限りない希望、大いなる理想に燃える(青春とは心の若さである
天の要望に従う
時運に乗る人、乗れない人
困窮を知る尊さ
悩みに負けない
度胸のある生き方
私心を捨てる
運命を生かすのは自分
辛抱強く耐える力)

酸化ストレス、分子の炎症とサルコペニア


今日は、酸化ストレス、分子の炎症とサルコペニアの論文を紹介します。

Meng SJ, Yu LJ: Oxidative stress, molecular inflammation and sarcopenia. Int J Mol Sci. 2010 Apr 12;11(4):1509-26.

下記のHPで全文見ることができます。

http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC2871128/pdf/ijms-11-01509.pdf

一昨日の日本臨床栄養学会のサルコペニアと栄養のシンポジウムで、発表に引用されていた論文です。今まで私は臨床研究の論文ばかり紹介してきましたが、シンポジウムに参加して基礎研究、動物実験の論文も重要なものは読んだほうがよいと考え直しました。

参加ストレスと分子の炎症がサルコペニアに重要な役割を果たしていて、ミトコンドリアの機能不全につながっているようです。治療としては運動(レジスタンストレーニングと有酸素運動)、カロリー制限、栄養療法(ロイシンなど)が紹介されています。

サルコペニアの臨床の論文で、カロリー制限のことはほとんど見ませんが、動物実験レベルではカロリー制限でサルコペニアの改善や長寿が得られています。酸化ストレスが少なくなることが要因のようです。

現時点で臨床現場でカロリー制限をすすめる気にはなりませんが、腹八分くらいならすすめてもよいかと感じています。ただ、その結果、タンパク質の摂取量が少なくなっては逆効果なので、なかなか難しいところです。

Abstract
Sarcopenia is the decline of muscle mass and strength with age. Evidence suggests that oxidative stress and molecular inflammation play important roles in age-related muscle atrophy. The two factors may interfere with the balance between protein synthesis and breakdown, cause mitochondrial dysfunction, and induce apoptosis. The purpose of this review is to discuss some of the major signaling pathways that are activated or inactivated during the oxidative stress and molecular inflammation seen in aged skeletal muscle. Combined interventions that may be required to reverse sarcopenia, such as exercise, caloric restriction, and nutrition, will also be discussed.

2010年8月29日日曜日

日本臨床栄養学会参加

昨日、今日と日本臨床栄養学会に参加してきました。今回は自分の発表が昨日の朝一だったので、あとは聞くだけで気楽でした。今日はシンポジウム7:栄養とサルコペニアを聞きました。これは期待していた通りに、自分にはとても興味深い内容でした。

座長
葛谷 雅文 名古屋大学大学院医学系研究科 老年科学 准教授
大荷 満生 杏林大学医学部 高齢医学 准教授       

1 Astaxanthin 摂取と筋萎縮抑制
杉浦 崇夫 山口大学 教育学 スポーツ健康科学 教授
2 加齢におけるアナボリックペプチド グレリンの意義とトランスレーショナルリサーチ
中里 雅光 宮崎大学医学部内科学講座 神経呼吸内分泌代謝学分野 教授
3 アミノ酸によるサルコペニアの改善
小林 久峰 味の素株式会社アミノサイエンス研究所 機能製品研究部 アミノ酸機能研究室 室長
4 ポリフェノールと身体機能
原水 聡史 花王株式会社 生物科学研究所

私なりの解釈なので間違っている点もあるかもしれませんが、要旨をまとめると、

・Astaxanthinとポリフェノール(茶カテキンとレスベラトロール)は動物実験レベルで、筋萎縮抑制効果があることまでわかっている。人での効果は不明。また、筋合成促進効果はない(乏しい)ため、臨床では運動との併用が必須。

・グレリンとアミノ酸(特にロイシン)は人での臨床研究も行われており、筋萎縮抑制効果だけでなく、筋合成促進効果があることまでわかっている。COPD患者にもグレリンは有用。ただし、運動やリハと併用したほうが筋合成促進効果はより高まる。

だと感じました。グレリンは発表を聞く限りとても期待できますが、まだ臨床で使用することは難しいのが現状です。実際の臨床場面ではアミノ酸(特にロイシン)と運動(レジスタンストレーニング)の併用が現実的と思いました。

一般演題でも「サルコペニア(骨格筋減少症)に対するリハビリテイション・栄養治療により自立度の改善をみた1症例」というリハ栄養的な発表がありました。BCAA1000mg含有ゼリーと蛋白質同化ホルモン(エナルモン25mgを最初は連日、徐々に減らして週1回)を使用していました。

サルコペニアに関しては自分なりにいろいろ学習しているつもりですが、今回初めて聞いたことも少なからずありました。このような素晴らしいシンポジウムを企画してくださった葛谷先生に深謝いたします。

一般演題の発表も少し聞きました。他の栄養関連学会より比較的しっかりした研究発表が多かったので、学会に好感を持ちました。聞くに堪えないレベルの発表も中にはありましたが、他の学会よりは割合が低いと感じました。来年は東京で開催されるそうなので、日程が合えば来年も参加したいと思います。

2010年8月28日土曜日

臨床リハ9月号

臨床リハ9月号を紹介します。来週の日本摂食・嚥下リハ学会に合わせて、9月号に嚥下の特集を組む雑誌が多いのかもしれませんね。

実践例に学ぶ摂食・嚥下リハのチームアプローチというテーマで特集が組まれています。 下記のHPで内容の一部を見ることができます。

http://www.ishiyaku.co.jp/magazines/cr/CRBookDetail.aspx?BC=081909

オーバービュー 植田耕一郎
摂食・嚥下リハのチームアプローチ 私たちの工夫①
病院内の症例の病態と環境に応じたチームアプローチ 藤谷順子
私たちの工夫②
回復期リハビリテーション病棟における摂食・嚥下リハビリテーション 椎名英貴
私たちの工夫③
早期経口摂取実現とQOL向上への多職種協働によるチームアプローチ 小山珠美
私たちの工夫④
摂食・嚥下障害に対するアプローチ 吉野真理子
地域医療における摂食・嚥下のチームアプローチ
金沢・在宅NST研究会「経口摂取相談会」の取り組み 小川滋彦,綿谷修一,河崎寛孝

どれも参考になる内容ですが、特に小山さんの論文は読む価値が高いです。リハ医向けの雑誌ですが、興味のある方はご一読ください。

2010年8月27日金曜日

医療MBA育成

医療MBA育成の記事がじほうに出ていましたので、引用します。

http://www.jiho.co.jp/

兵庫県立大大学院が医療MBA育成始動

 兵庫県立大は今年度から経営研究科(経営専門職大学院)を開設したが、そ
こに医療マネジメントコースを設置した。将来の病院運営管理者を育成し、MB
A的な資格を付与する。対象は主に医療職を経験した社会人だ。

 4月の入学者は12人。昨年7月から募集を開始、10月と今年3月に選抜試験を
行ったが、応募者は全体で29人に上った。合格したのは、医師3人、看護師4人、
薬剤師1人、臨床工学技士2人、事務職2人。応募は臨床工学技士が目立った。
同コースの専属教員は、医療福祉学の第一人者の小山秀夫氏をリーダーに16人。
医師は心臓血管外科専門医で兵庫県の健康福祉部長や県立病院事業管理者を務
めてきた後藤武氏と、前姫路循環器病センター院長の志田力氏が特任教授とし
て参加している。後藤氏は同コース設置のプランナーでもある。

 兵庫県立大は2004年に、兵庫県立の3大学、姫路工業大、兵庫県立看護大、
神戸商科大が統合されて誕生した。単科の商科大として知名度の高かった神戸
商科大が実質的な前身。商科学の経験を踏まえながら、実学重視で公的・民間
の垣根なしで病院経営のプロを育てる。また、この医療マネジメントコースは、
病院実務経験者が実務経験のある人材を対象にしていくことから、欧米型をテ
キストにしたものではなく「日本型の医療経営MBA」育成のカリキュラム開発
の同時進行にも期待が集まる。

 MBAコースの年限は2年。取得必要単位数は36単位で、土曜日のみの開講で実
質的には1年半で終えるスケジュールだが、単位取得期間は3年間と社会人に配
慮した。単位取得者は「ヘルスケア・マネジメント修士(専門職)」の学位が
与えられる。

以上、引用です。「日本型の医療経営MBA」の成果を期待したいですね。ちなみに英国国立ウエールズ大学でも医師向けのMBAコースがあります。日本語です。

http://www.athuman.com/mba/

親しいところでは、東葛クリニック病院の秋山和宏先生は多摩大学のMBAです。

http://tgs.tama.ac.jp/modules/mba/index.php?content_id=1

私はもちろんMBAではありませんが、マネジメント能力が職種に関わらずすべての医療人に重要であることは認識しています。体系的に学習したい場合には、大学院で学ぶのも選択肢の1つかと思います。私は今のところ独学ですが…。

2010年8月26日木曜日

利益相反とは

今日は、利益相反(Conflict of Interest:COI)について紹介します。厚生労働科学研究における利益相反(Conflict of Interest:COI)の管理に関する指針(平成20年3月31日科発第0331001号厚生科学課長決定)からの引用が主です。

http://www.mhlw.go.jp/general/seido/kousei/i-kenkyu/rieki/txt/sisin.txt

この指針では以下のように定義されています。「COIとは、具体的には、外部との経済的な利益関係等によって、公的研究で必要とされる公正かつ適正な判断が損なわれる、又は損なわれるのではないかと第三者から懸念が表明されかねない事態をいう。公正かつ適正な判断が妨げられた状態としては、データの改ざん、特定企業の優遇、研究を中止すべきであるのに継続する等の状態が考えられる。」

データの改ざんは問題外ですが、特定企業の優遇に関しては特に製薬企業とのつながりが問題となりやすいと感じています。企業との共同研究や技術移転といった産学連携活動は適正に推進されるべきですが、製薬企業に飲み込まれるような連携は適切とは言い難いです。

「米国における検討においても、特定のCOIそのものが問題であることはまれであり、問題はむしろCOIへの対応であって、ほとんどの場合、COIが明らかにされないか、評価又は管理されない場合に問題が発生しているとされている。米国の有力大学においてもCOIへの対応は様々であり、比較的厳しい対応を取っている大学においても、関係する企業等から年間1万ドルを超える収入等がある場合には、関係する臨床研究への参加を原則禁止している(以下、省略)」とあります。

そのため、当院では臨床研究を開始する前の倫理審査委員会にかける段階で、「臨床研究に係る利益相反自己申告書」を提出することになっています。どこの施設も同様だと思いますが。下記の項目に関して、有無を申請し、ある場合にはその詳細を記載して申請することになっています。

・同一の企業・団体からの機関収入(※1)が過去3年間でひとつの企業から単年度で200万円以上ありますか?
 (※1)奨学寄附金の受入れ、共同研究、受託研究、権利譲渡、技術研修、委員等の委嘱、客員研究員やポストドクトラルフェローの受入れ、機器の提供 等

・同一の企業・団体からの個人収入(※2)が過去3年間でひとつの企業から単年度で100万円以上ありますか?
 (※2)診療報酬は除く。兼業または役員兼業(ただし、兼業先が国、地方行政法人、学校及び病院等を除く)、謝金等

・産学連携活動の相手先のエクイティ(※3)保有の有無
 (※3)申告時に保有している上記研究課題に関連する企業の株式、新株予約権等をいいます。

・企業・団体からの無償の役務提供及び機材提供の有無

・上記1.2.3の関係が、申請者と生計を一にする配偶者及び一親等の者(両親及び子ども)に生じているかどうか

 自分の臨床研究ではこれらはすべてなしとなりますが、いずれかがありとなる方も少なくないと思います。この場合、倫理審査委員会を通すときだけ明らかにするのではなく、必要な時にはいつでも明らかできるようにしておくほうが望ましいと私は考えています。明らかにしたくないような疾しい関係は、持つべきではありません。

指針には、原則として下記の項目が記載されています。

「・研究をバイアスから保護すること。
・ヒトを対象とした研究においては被験者が不当な不利益を被らないようにすること。
・外部委員をCOI委員会等に参加させる等、外部の意見を取り入れるシステムを取り入れること。
・法律問題ではなく、社会的規範による問題提起となることに留意し、個人情報の保護を図りつつ、透明性の確保を管理の基本とすること。
・研究者はCOIの管理に協力する責任があり、所属機関はCOIの管理責任と説明責任があることを認識し、管理を行うこと。
・客観性、公平性を損なうという印象を社会に与えることがないように管理を行うこと。」

研究倫理は年々厳しくなっている印象がしますが、よい臨床研究を行うためには、当然と言えば当然です。こういったことも十分理解したうえで、臨床研究に取り組みたいものです。

2010年8月25日水曜日

身によくつく学習方法

今日は身によくつく(かもしれない)学習方法を紹介します。ただ個人的経験ですので、万人に有効とは言えないかもしれません。ご了承ください。

医療人は当然、学習を継続しなければいけません。その際、なるべく効率よく身につけたいところです。以前紹介した経験学習モデルももちろん有効ですが、今日は認知心理面から検討します。

最初に「人は教えるときに最もよく学ぶ」ことを知ることがポイントです。学習というと読んだり聞いたりのインプット型学習に走る人が少なくありませんが、書いたり話したりのアウトプット型学習のほうが、格段に身につきます。なるべく学会発表、講演、執筆の機会を自ら作ることが大切です。私もアウトプットすることで学んでいるという面が極めて大きいです。

次に記憶は認知心理学的に記銘(インプット)、保持、想起(アウトプット)の3段階に分類できます。アウトプットできない記憶は私は意味が少ないと感じていますので、いざというときにアウトプットできるように記銘、保持、想起をしっかり行うことが効率的です。

記銘のポイントは、興味・関心を持てる内容にすること、集中すること、理解しやすいことの3つです。興味や関心がないことは頭に入りにくいです。理解できないことも頭に入りにくいといえます。集中に関しては、音楽を聞いているほうがより集中できる人もいますので、1つのことに専念するのがベストとは一概には言えません。自分の集中しやすい環境を知ることが有用です。

保持のポイントは、復習、復習、復習です。3回復習すれば、かなり頭に残ります。現在は情報が膨大なので復習する間もなく次から次へと新しい情報をインプットすることに力をいれがちですが、それでは頭に残る量が少なくなります。トータルとして頭に残る量を増やすためには、一定の復習が必要です。大人になって記憶力が落ちたと感じる原因の1つが、復習をしなくなったことだと思います。丸暗記の意味記憶が衰えて、エピソード記憶が発達することも原因の1つです。

想起のポイントは、人に教える、発表する、執筆する、問題を解くなど実際にアウトプットすることです。きちんとアウトプットできなければ、十分頭に残っていないことになりますので、復習にもつながります。また、アウトプットすることで初めて頭に残ることもよくあります。アウトプットする機会が少ないという方もいるかもしれませんが、その気になって自ら機会を作ろうとすれば、今日からでもブログを開始できるはずです。

記銘、保持、想起を理解、意識したうえで学習するのと、これらを意識しないで学習するのとでは、かなり効率が異なります。ぜひ意識してアウトプット型学習を主にしていただければと思います。

2010年8月24日火曜日

第5回日本リハビリテーション医学会専門医会学術集会のご案内

以下の内容で第5回日本リハビリテーション医学会専門医会学術集会開催いたします。私もリハ栄養の教育研修講演と意見交換会を担当させていただきます。

症例検討とパネルディスカッションは公募に致します。詳しくは学会誌8月号またはHPをご覧ください。
学会参加は専門医以外でも可能で、単位は認定臨床医の先生方も取得可能です。周りの先生方にもお知らせください。皆様方の参加をお待ちしています。

テーマ「より優れたリハ医療の提供を目指して」
代表世話人:横浜市立大学附属病院リハビリテーション科 菊地尚久
会期 2010年11月20日(土)21日(日)
場所 パシフィコ横浜アネックスホール
横浜市西区みなとみらい1-1-1

プログラム
11月20日(土)8:55開始
●企画 学生・初期研修医に対する教育・広報(9:00~11:00)
●教育研修講演1 (11:00~12:00)
「リハビリテーションと臨床栄養―栄養ケアがリハを変える」
横浜市大附属市民総合医療センター 若林秀隆
●ランチョンセミナー (12:00~13:00)
BOTOX関連
●シンポジウム 障害者の社会復帰支援(13:00~15:00)
1.リハビリテーション科外来から
2.リハビリテーション専門病院から
3.福祉行政の立場から
4.職業リハの立場から
5.介助犬の利用
●総会 (15:00~16:30)
●症例検討(公募)(17:00~18:00)
1.脳卒中 2.嚥下障害 3.脊髄損傷 4.神経難病
5.脳外傷 6.義肢装具 7.悪性腫瘍 8.小児
●意見交換会(19:00~)
横浜駅東口スカイビル27F 横浜クルーズクルーズ

11月21日(日)9:00開始
●パネルディスカッション リハビリテーションにおけるシステム連携(公募)
(9:00~10:30)
1.脊髄損傷
2.脳外傷
3.小児
●教育研修講演2(10:30~11:30)
「小児関節リウマチとリハビリテーション」
横浜市立大学小児科 横田俊平
●教育研修講演3 (11:30~12:30)
「神経疾患に対する呼吸リハビリテーション」
東海大学リハビリテーション科 花山耕三

※問い合わせ先
第5回日本リハビリテーション医学会専門医会学術集会事務局
〒234-0006 神奈川県横浜市金沢区福浦3-9
横浜市立大学附属病院リハビリテーション科 菊地尚久
電話:045-787-2800?
FAX:045-783-5333
E-mail: rehasen5@yokohama-cu.ac.jp
HP: http://www-user.yokohama-cu.ac.jp/~rehasen5/index.html

2010年8月23日月曜日

脳は天才だ!

今日は、茂木健一郎著、日経サイエンス編、脳は天才だ!、日経ビジネス文庫を紹介します。アマゾンでは中古品を1円で購入できます。

http://www.nikkeibook.com/book_detail/19467/

普段は自分の専門以外のサイエンス書籍を読むことは少ないのですが、こういう対談形式の書籍でサイエンスの世界を知るのは面白いです。テーマは難しいものが多いですが、内容はわかりやすく紹介されています。昔は雑誌ニュートンをよく読んでいたのですが…。

栄養関連では「肥満を減らして日本人の健康を守る」があります。確かに肥満は脳卒中や心筋梗塞だけでなく、悪性腫瘍のリスク因子としても喫煙に次ぐ位置付けとなってきていますので、肥満を減らすことは大切です。メタボに関しては否定的な見解も少なくありませんが。

ただ、NSTをやっていると「やせ・低栄養を減らして日本人の健康を守る」のほうがむしろ主張したくなります。今日のリハ科外来でも何人か前悪液質でるいそうの方がいて、リハ指導よりも栄養指導を行っていました。

岡田武史監督との対談も面白かったです。なぜ日本チームは勝てないのかについて、新皮質モードだけ鍛えて旧皮質モードを鍛えていないからという仮説が出てきます。これはサッカーなどスポーツでは両方とも鍛えなければいけないのでしょうけれど、どう鍛えればよいのでしょうかね。

それにサッカーだけでなくリハにも当てはまりますね。リハでも新皮質ばかり鍛えて旧皮質をあまり鍛えていない可能性があります。運動学習は両方とも鍛えようとしていると思いますが、どちらを主に鍛えるかはあまり考えていない気がします。

目次

誰もが「天才」になる時代

第一部 地球と生命
 ■体内時計にみるシステム生物学■ 【ゲスト:上田泰己(理化学研究所)】
   生命のシステムをとらえたい/体内時計も老化する/23億年前から存在した体内時計/
   朝・昼・夜で時計を作る/情報から物質は作れない/細胞を創りながら生命を理解する
    <コラム:生物の時間とリズム(茂木健一郎)>
 ■昆虫に学べ インセクトテクノロジー■ 【ゲスト:長島孝行(東京農業大学准教授)】
   昆虫の三分の一は糸を作る/インドネシアの金色の繭/進化の過程で獲得した機能/
   「ナノから田植えまで」/応用広がる昆虫の機能
    <コラム:昆虫の豊饒なる秘密(茂木健一郎)>
 ■縞模様が描き出す地球と生命の歴史■ 【ゲスト:川上紳一(岐阜大学教授)】
   地球全体が凍りついた日/炭素の同位体比から解明/スノーボール後の不思議な生物/
   地球と生物は切り離せない/地球時間スケールで考える/新たなパラダイムシフト
  コラム:科学のパラダイムシフト(茂木健一郎)
 ■地震と噴火の予知に挑む■ 【ゲスト:山岡耕春(名古屋大学教授)】
   急速に進んだ地震予知研究/地震予知のマトリックス/地中の動きが見えてきた/
   何%なら危険なのか/火山が作った関東平野/『日本沈没』のリアリティ
   <コラム:自然の災いと恵み(茂木健一郎)>

第二部 サイエンスの手法
 ■数学で育む論理力■ 【ゲスト:新井紀子(国立情報学研究所】
   ストーリーが見えない数学教育/考えないコンピューター/数学教育に論理がない/
   ギリシャで生まれた論理学/論理力のトレーニング/論理力は「生きる力」
   <コラム:論理が導く美しい真実(茂木健一郎)>
 ■ノンフィクションでクオリアを突き止める■ 【ゲスト:最相葉月(ノンフィクションライター)】
   文献学的な手法の重要性/ダーウィンの書棚/〝違和感〟が生んだ『絶対音感』/
   真実に出合う瞬間/ロマンティックな科学の復権/次のテーマは?
   <コラム:作品と人格の一致(茂木健一郎)>
 ■意識は脳の中のイリュージョンか■ 【ゲスト:前野隆司(慶應義塾大学教授)】
   意識は遅れてやってくる/エピソード記憶の持つ意味/クオリアのない意識はあるか/
   脳をシンプルにとらえる/科学者が封印を解くとき/1%の違いがもたらすもの
   <コラム:99%と1%(茂木健一郎)>
 ■超ひも理論は世界を説明できるか■ 【ゲスト:川合光(京都大学所教授)】
   宇宙の根源は粒子ではなくひも/重力の統一という課題/あらゆる現象を表す理論自然が創発する理論/
   待ち望まれるヒッグス粒子の発見/セオリー・オブ・エブリシングに王手
   <コラム:創発というフロンティア(茂木健一郎)>

第三部 日本と日本人
 ■DNAで探る日本人の起源■ 【ゲスト:篠田謙一(国立科学博物館)】
   現生人類はアフリカから出発した/4つのグループに分かれた人類/古人骨が明らかにする日本人の起源/
   社会構造を反映するY染色体/形態からDNAへ/集合し、拡散する遺伝子
   <コラム:人類の起源を可視化する(茂木健一郎)>
 ■肥満を減らして日本人の健康を守る■ 【ゲスト:吉池信男(国立健康・栄養研究所)】
   肥満対策は国民的課題/予防医学の重要性/遺伝よりも大きい環境要因/引き算で考えるダイエット
   途上国でも増えている肥満/高齢化社会に備える
   <コラム:統計と実感のギャップ(茂木健一郎)>
 ■美しい景観とは何か■ 【ゲスト:齋藤潮(東京工業大学教授)】
   景観の変貌/運転していて快適な道路とは/時代が変える美意識/自然と人工の狭間で/
   飽きられる町、楽しい町/幸せの追求が町並みを作る
   <コラム:効率と効用(茂木健一郎)>
 ■サッカーで勝てる脳とは■ 【ゲスト:岡田武史(サッカー監督)】
   日本チームはなぜ勝てない?/古い脳のスピードを生かせ/ひらめきは人工知能では生まれない/
   代表監督という重圧/負荷が高いほど報酬は大きい/ひらめきを引き出すチーム作り
   <コラム:代表を率いるエネルギー(茂木健一郎)>

第7回NST専門療法士スキルアップセミナー

JSPENの第7回NST専門療法士スキルアップセミナーについて案内させていただきます。
私も教育講演を担当させていただきます。多くのNST専門療法士に参加していただきたいと思いますので、よろしくお願いいたします。

http://jspen.jp/semi/skill_up/no7_skill.html

■日 時: 2010年9月19日(日曜日) 9:30~16:40(予定)
■会 場: 大田区産業プラザPiO 3階 特別会議室
〒144-0035 東京都大田区南蒲田一丁目20番20号
京浜急行線・空港線京急蒲田駅から徒歩約4分
JR京浜東北線蒲田駅から徒歩約12分
詳しくはこちら↓
http://www.city.ota.tokyo.jp/shisetsu/pio/index.html

■主 催: 日本静脈経腸栄養学会
■参加条件: 日本静脈経腸栄養学会 認定NST専門療法士の資格を有すること
■受講料: 12,000円(昼食はご用意します)
■参加人数: 48名(定員になり次第締め切らせていただきます)
■内 容:教育講演「NST専門療法士のためのFaculty Development」
講師:若林 秀隆 先生
横浜市立大学附属市民総合医療センターリハビリテーション科
スモールグループディスカッションでの症例検討と全体討論

看護研究の道しるべ―先達からのメッセージ

2010年8月23日号の週刊医学界新聞で「看護研究の道しるべ―先達からのメッセージ 私がブレークスルーした“あのとき”」が特集されています。

http://www.igaku-shoin.co.jp/paperDetail.do?id=PA02892_01

看護研究で有名な先生方がどのように看護研究の壁を乗り越えて実践してきたかが紹介されています。一度でも真摯に臨床研究に取り組んだ方には共感できるところが少なくないと思います。臨床研究に取り組んだことがない方にもどんなものかを感じていただけると思います。

武村雪絵さんの「日々新しい課題に直面し,仕事も家事も育児も回らないのが実状です。臨床と研究と教育の融合という着任当初の夢がしぼみ,研究者,教育者としての自分は消え,存在するのは実務者としての私(悲しいことに看護の臨床家とも言えない)。今の壁は,「きちんとした」研究をしたい,そうでないと発表できないという,自分のこだわりです。」は他人事ではないと感じました。

臨床・研究・教育・実務(マネジメント)のバランスが大切でどれも外したくないですが、うっかりすると研究が最初に抜け落ちてしまいます。限られた時間の中で、そしてワークライフバランスも考える中で、どうやって臨床研究に打ち込む時間を捻出して論文執筆まで行うかは常に課題です。今は一時ほど臨床研究への熱意もないので…。

褥瘡で有名な真田弘美さんのインタビュー記事も掲載されています。こちらも一読の価値ありです。

http://www.igaku-shoin.co.jp/paperDetail.do?id=PA02892_02

最後の言葉、「優れた看護師は自分の目の前の患者を救えますが,論文はその1000倍以上の患者を救える素晴らしい生産物です。患者さんが自分の疾患の情報を提供してくれるのは,この研究がたとえ自分には役立たなくても,次の人たちを救ってほしいと真に願うからです。論文にして役に立てる,これこそが研究者の倫理的な配慮であることを,決して忘れないでください。」は肝に銘じなければいけません。耳が痛い言葉です。

2010年8月21日土曜日

高校野球における体液管理

神奈川県立保健福祉大学保健福祉学部栄養学科の谷口英喜先生から、神奈川NSTMLに投稿された内容を一部転送させていただきます。今日、高校野球の決勝ですね。個人的には地元の神奈川県代表を応援しています。以下、転送です。

皆さん、こんばんは。高校野球のお話です。実はがんセンターの看護師さんの息子さんが東海大相模9番伊地知君ですが、2年前に神奈川県決勝で慶応に負けたときに、試合中に足をつったり、意識がもうろうとしたりする選手がでたために負けたことを実感したそうです。伊地知君のお母さんを通じ、渡辺トレーナーという東海大相模のトレーナーに私がOS1の使用を持ちかけました。以来、OS1をチーム全体で飲み続け、集中力の向上、体力の維持を実感しているとのことです。今年は酷暑でしたが、OS1を飲んでいる彼らは、試合中のバテを知りません。しかし、今年は、甲子園が始まってから熱中症が非常に多く発生したために、世の中OS1が手に入りにくい状況になってしましました。そこで、私が本戦が始まって以来、毎試合2ケース(50本)送っています。嬉しい悲鳴で、今日最後の2ケースを送りました。試合前のダグアウトや、試合中でも一二三君や伊地知君が映るたびにOS1を飲んでいるのを目にすると思います。そして、今日は監督も飲んでいましたね。試合終了後は、彼らが持ち去るゴミ袋を見て下さい。大量のOS1のカラボトルが入っています。こんなチームはまだ東海大相模だけです。まだマスコミにばれてはいないので、騒がれませんが、ほかのチームが知ったらおそらくすごいことになるでしょうね。野球しながら点滴をして体液管理をしているのですから。私の教えは試合前後で体重を保つこと、イニングの合間ごとに飲むことです。これを実行している選手を見ると本当に嬉しいです。私の送ったOS1が明日もNHKに映ると思います。明日はもっと暑くなることを願います。皆さん、もうひとつの高校野球の楽しみとして、明日はじっくりと観戦、そして東海大相模を応援して下さい。スポーツも体液管理が大切だという仮説を彼らは証明してくれるでしょう!

2010年8月20日金曜日

高齢者の嚥下障害レビュー論文


今日は高齢者の嚥下障害レビュー論文を紹介します。

Laia Rofes, et al: Diagnosis andManagement of Oropharyngeal Dysphagia and Its Nutritional and Respiratory Complications in the Elderly. Gastroenterology Research and Practice. Volume 2011, Article ID 818979, doi:10.1155/2011/818979

下記のHPで全文見ることができます。

http://downloads.hindawi.com/journals/grp/2011/818979.pdf

スペインからの報告ですが、スペインはヨーロッパの中では最も摂食・嚥下リハがさかんな国の1つのようです。サルコペニアによる嚥下障害に関しては、舌筋と頭頚部筋のサルコペニアの記載がありました。これらだけでなく舌骨上筋群・下筋群、口蓋筋、咀嚼筋などにもサルコペニアは生じると考えています。

高齢者の最大30%に誤嚥を認める。その半分はムセのない誤嚥。45%に咽頭残留と認める。嚥下障害のある高齢者の55%は低栄養のリスクあり。このあたりの数字は覚えておいてよいと思います。

ここで紹介する図は十分とは言い切れませんが、嚥下・栄養・呼吸の関連をある程度しっかり紹介している図だと思います。嚥下・栄養・呼吸を切り離して考えることはできません。

Abstract
Oropharyngeal dysphagia is a major complaint among older people. Dysphagia may cause two types of complications in these patients: (a) a decrease in the efficacy of deglutition leading to malnutrition and dehydration, (b) a decrease in deglutition safety, leading to tracheobronchial aspiration which results in aspiration pneumonia and can lead to death. Clinical screening methods should be used to identify older people with oropharyngeal dysphagia and to identify hose patients who are at risk of aspiration. Videofluoroscopy (VFS) is the gold standard to study the oral and pharyngeal mechanisms of dysphagia in older patients. Up to 30% of older patients with dysphagia present aspiration—half of them without cough, and 45%, oropharyngeal residue; and 55% older patients with dysphagia are at risk of malnutrition. Treatment with dietetic changes in bolus volume and viscosity, as well as rehabilitation procedures can improve deglutition and prevent nutritional and respiratory complications in older patients. Diagnosis and management of oropharyngeal dysphagia need a multidisciplinary approach.

2010年8月19日木曜日

老人のアルブミン濃度と心不全

今日も内科開業医のお勉強日記ブログからの転送・引用です。アルブミンの栄養指標としての利用は賛否両論どころか否の方向になりつつありますが、予後予測にはかなり有用ですので評価は必要だと考えます。以下、引用です。

http://intmed.exblog.jp/11152826/

老人のアルブミン濃度と心不全血中アルブミンは栄養指標であり、筋肉量とも関連する。心不全とアルブミンの関連が高齢者で明らかとなった。
骨格筋減少症(サルコペニア)との関連だろうか?

骨格筋減少は肥満有無に関わらず独立したインスリン抵抗性と関連する 2010-06-10

骨格筋から分泌されるmyokineにより、炎症やインスリン抵抗性を防止し、adipose tissueで産生されたadipokineのpro-inflammatory /metabolic effectと相対する作用をもち、sarcopenic obesity、骨格筋減少+肥満の人ではとくに代謝疾患・心血管疾患のリスクを増加させる

Deepa M. Gopal, et al. Serum albumin concentration and heart failure risk: The Health, Aging, and Body Composition Study
 Volume 160, Issue 2, Pages 279-285 (August 2010)

community-based Health ABC Study 73.6±9歳の心不全のない患者の9.4年フォローアップデータ

アルブミンは時間依存的予測因子であり、6年間その有意差を維持する (baseline hazard ratio [HR] per −1 g/L 1.14, 95% CI 1.06-1.22, P < .001; HR年減少率2.1%, 95% CI 0.8%-3.3%, P = .001)

心不全予測因子、炎症性マーカー、独立した冠動脈イベント補正にてこの相関は持続 (baseline HR per −1 g/L 1.13, 95% CI 1.05-1.22, P = .001; 年次HR減少率1.8%, 95% CI 0.5%-3.0%, P = .008) ¥
死亡率を補正共役リスク補正後 (baseline HR per −1 g/L 1.13, 95% CI 1.05-1.21, P = .001; annual rate of HR decline 1.9%, 95% CI 0.7%-3.1%, P = .002).

アルブミンとHFリスクの相関は男性で (HR per −1 g/L 1.13, 95% CI 1.05-1.23, P = .002) 、女性でも (HR per −1 g/L 1.12, 95% CI 1.04-1.22, P = .005)同様。白人・黒人でも同様 (HR per −1 g/L 1.13, 95% CI 1.04-1.22, P< .01 for both races) 。

血中アルブミンは骨格筋量と関連(American Journal of Clinical Nutrition, Vol 64, 552-55、American Journal of Clinical Nutrition, Vol. 82, No. 3, 531-537, September 2005)

加齢そのものより栄養摂取・蛋白摂取の問題(J. Nutr. 137:1734-1740, July 2007)という話もある。

糖尿病などでは、筋肉量減少、栄養不良などが見られる(American Journal of Clinical Nutrition, Vol. 72, No. 1, 89-95, July 2000)

Background
How serum albumin levels are associated with risk for heart failure (HF) in the elderly is unclear.

Methods
We evaluated 2,907 participants without HF (age 73.6 ± 2.9 years, 48.0% male, 58.7% white) from the community-based Health ABC Study. The association between baseline albumin and incident HF was assessed with standard and competing risks proportional hazards models controlling for HF predictors, inflammatory markers, and incident coronary events.

Results
During a median follow-up of 9.4 years, 342 (11.8%) participants developed HF. Albumin was a time-dependent predictor of HF, with significance retained for up to 6 years (baseline hazard ratio [HR] per −1 g/L 1.14, 95% CI 1.06-1.22, P < .001; annual rate of HR decline 2.1%, 95% CI 0.8%-3.3%, P = .001). This association persisted in models controlling for HF predictors, inflammatory markers, and incident coronary events (baseline HR per −1 g/L 1.13, 95% CI 1.05-1.22, P = .001; annual rate of HR decline 1.8%, 95% CI 0.5%-3.0%, P = .008) and when mortality was accounted for in adjusted competing risks models (baseline HR per −1 g/L 1.13, 95% CI 1.05-1.21, P = .001; annual rate of HR decline 1.9%, 95% CI 0.7%-3.1%, P = .002). The association of albumin with HF risk was similar in men (HR per −1 g/L 1.13, 95% CI 1.05-1.23, P = .002) and women (HR per −1 g/L 1.12, 95% CI 1.04-1.22, P = .005) and in whites and blacks (HR per −1 g/L 1.13, 95% CI 1.04-1.22, P< .01 for both races) in adjusted models.

Conclusions
Low serum albumin levels are associated with increased risk for HF in the elderly in a time-dependent manner independent of inflammation and incident coronary events.

入院患者における廃用症候群の低栄養の病因は何か‐飢餓・侵襲・前悪液質

【1.目的】以前の研究で廃用症候群の入院患者の約9割に低栄養を認めた。しかし、低栄養の病因は不明である。廃用症候群の低栄養の病因を検討する。

【2.方法】対象は2010年4月から8月に当院リハ科に併診があり、リハ科医師が総合的に廃用症候群と診断した入院患者61人。平均年齢70歳、男性37人、女性24人。入院から併診まで平均24日。リハ科併診時の低栄養の有無をMNA®-SFで評価した。低栄養の病因は、飢餓(1日エネルギー摂取量がHarris-Benedict式の基礎エネルギー消費量以下で判断)、侵襲(入院時と入院後の急性疾患や手術などの有無で判断)、前悪液質(悪液質の原因となる慢性疾患の存在、6ヶ月以内に5%以上の体重減少、慢性・再発性の全身炎症反応、食思不振の4項目すべてに該当で判断)に分類して評価した。投与経路、BMI、ヘモグロビン、アルブミン、総リンパ球数、小野寺のPNIも評価した。

【3.結果】MNA®-SFでは53人が低栄養、8人が低栄養の恐れありで、栄養状態良好は0人であった。飢餓を25人(41%)、侵襲を47人(77%)、前悪液質を15人(25%)に認めた。患者別では病因なし7人、飢餓のみ2人、侵襲のみ24人、前悪液質のみ2人、飢餓+侵襲13人、飢餓+前悪液質3人、侵襲+前悪液質3人、飢餓+侵襲+前悪液質7人であった。低栄養の恐れありでは、病因なし3人、侵襲のみ3人、飢餓+侵襲2人であった。投与経路は経口摂取34人、経管栄養14人、経静脈栄養38人(重複あり)。各平均値はBMI20.5、ヘモグロビン9.46、アルブミン2.72、総リンパ球数920、PNI31.5と検査値異常を認めた。

【4.考察及び結論】廃用症候群の入院患者の多くは低栄養で、その病因として侵襲が最も多かったが飢餓や前悪液質も少なくなかった。飢餓のみが低栄養の病因の患者は少ないため、栄養管理単独での栄養状態や廃用症候群の改善は難しいことが多い。侵襲と前悪液質の原因疾患の治療と同時に、低栄養の病因を考慮した適切なリハ栄養管理を行うことが重要である。

2010年8月18日水曜日

frailtyと身体活動

今日はfrailtyと身体活動の論文を紹介します。

F. Landi et al: Moving against frailty: does physical activity matter? Biogerontology DOI 10.1007/s10522-010-9296-1

基本的にfrailtyに対して身体活動は有効というレビューです。サルコペニアにも不活動による能力障害にも認知機能障害の予防にも抑うつ状態の改善にも、身体活動は有用です。

身体活動によって慢性炎症が改善するという報告があります。サルコペニアの原因の1つとして慢性炎症が考えられていて、そのために身体活動がサルコペニア対策として最も有効なのではないかという仮説があります。

身体活動は定期的な運動であれば有酸素運動でもレジスタンストレーニングでもよいですし、両方組み合わせればなおよいです。有酸素運動は歩行、家事、庭仕事程度でも十分です。

さらなる研究が必要と記載されていますが、個人的には身体活動のエビデンスをさらに検証するよりも、エビデンス-プラクティスギャップをいかに少なくするかのほうが重要な気がしています。高齢者に限らず若い人でも運動習慣がある人は少ないですし、私も他人事ではありません…。

Abstract Frailty is a common condition in older
persons and has been described as a geriatric syndrome
resulting from age-related cumulative declines
across multiple physiologic systems, with impaired
homeostatic reserve and a reduced capacity of the
organism to resist stress. Therefore, frailty is considered
as a state of high vulnerability for adverse health
outcomes, such as disability, falls, hospitalization,
institutionalization, and mortality. Regular physical
activity has been shown to protect against diverse
components of the frailty syndrome in men and
women of all ages and frailty is not a contra-indication
to physical activity, rather it may be one of the most
important reasons to prescribe physical exercise. It has
been recognized that physical activity can have an
impact on different components of the frailty syndrome.
This review will address the role of physical
activity on the most relevant components of frailty
syndrome, with specific reference to: (i) sarcopenia, as
a condition which frequently overlaps with frailty; (ii)
functional impairment, considering the role of physical
inactivity as one of the strongest predictors of
physical disability in elders; (iii) cognitive performance,
including evidence on how exercise and
physical activity decrease the risk of early cognitive
decline and poor cognition in late life; and (iv)
depression by reviewing the effect of exercise on
improving mood and increasing positive well-being.

2010年8月17日火曜日

サルコペニアとACE阻害剤など


もう1つサルコペニアの論文を紹介します。この論文も全文読むことができます。

Louise A Burton, Deepa Sumukadas: Optimal management of sarcopenia. Clinical Interventions in Aging 2010:5 217–228

サルコペニア全般のレビュー論文ですが、ACE阻害剤によるサルコペニア治療の図が掲載されていました。ACE阻害剤によるサルコペニア治療の研究はまだこれからですが、心不全患者で握力は改善しなかったが運動能力は改善したという報告があります。

基礎医学的には図のように、筋繊維、血管生成、代謝、炎症、神経ホルモンの面で、骨格筋の維持、改善に有効な可能性があります。ルーチンでACE阻害剤を使用するほどのエビデンスではありませんが、高血圧を有するサルコペニアの方がいましたら、他の降圧剤ではなくACE阻害剤を処方するのはありだと思います。

でも基本は運動療法、レジスタンストレーニングです。栄養療法、ビタミンD、ホルモン療法(テストステロン、エストロゲン、成長ホルモン)、クレアチンのエビデンスはいずれも不十分とサマリーの表に掲載されています。

Abstract: Sarcopenia is the progressive generalized loss of skeletal muscle mass, strength, and function which occurs as a consequence of aging. With a growing older population, there has been great interest in developing approaches to counteract the effects of sarcopenia, and thereby reduce the age-related decline and disability. This paper reviews (1) the mechanisms of sarcopenia, (2) the diagnosis of sarcopenia, and (3) the potential interventions for sarcopenia. Multiple factors appear to be involved in the development of sarcopenia including the loss of muscle mass and muscle fibers, increased inflammation, altered hormonal levels, poor nutritional status, and altered renin–angiotensin system. The lack of diagnostic criteria to identify patients with sarcopenia hinders potential management options. To date, pharmacological interventions have shown limited efficacy in counteracting the effects of sarcopenia. Recent evidence has shown benefits with angiotensin-converting enzyme inhibitors; however, further randomized controlled trials are required. Resistance training remains the most effective intervention for sarcopenia; however, older people maybe unable or unwilling to embark on strenuous exercise training programs.

喫煙は、呼吸筋障害より先行して、直接、筋肉量減少・機能低下をもたらす

内科開業医のお勉強日記ブログからの引用です。COPDは単なる呼吸器疾患ではなく、筋障害も生じる全身性疾患であるという仮説を検証した論文の1つです。サルコペニアの予防と治療にも、COPDでなくても禁煙は必要といえます。

喫煙は、呼吸筋障害より先行して、直接、筋肉量減少・機能低下をもたらす
http://intmed.exblog.jp/11141631/

喫煙による筋肉の影響は、呼吸器系障害から筋肉へ影響を与えるより前に、筋肉の蛋白にoxidative damageを与え、これが筋肉の減少・機能低下をもたらしている。

すなわち、COPDは、”喫煙が原因による、筋肉・呼吸器系を含む全身性疾患”である。

Cigarette Smoke–induced Oxidative Stress
A Role in Chronic Obstructive Pulmonary Disease Skeletal Muscle Dysfunction
American Journal of Respiratory and Critical Care Medicine Vol 182. pp. 477-488, (2010) ENIGMA in COPD Project

解糖系酵素、クレアチニンキナーゼ、炭酸脱水酵素(carbonic anydrase-3)、筋収縮蛋白が有意に喫煙者・COPD患者で、カルボニル化されている。喫煙暴露モルモットでも呼吸筋・四肢筋で確認。

心理的要素がこれに加わると主のだが・・・

細胞や組織で発生する活性酸素種(ROS)は近くに存在するタンパク質を非特異的に酸化します。タンパク質の酸化修飾体として、よく知られているのがカルボニル化タンパク質です。カルボニル化タンパク質はタンパク質中のプロリン、アルギニン、リシン、スレオニンなどのアミノ酸がROSにより酸化修飾を受け、カルボニル誘導体となったタンパク質の総称です。カルボニル誘導体は化学的に安定なため、近年、典型的な酸化ストレスのマーカーとして頻繁に用いられています。(解説借用)

Rationale: Inflammation and oxidative stress contribute to muscle dysfunction in patients with chronic obstructive pulmonary disease (COPD). Oxidants contained in cigarette smoke (CS) induce adverse effects on tissues through oxidative phenomena.

Objectives: To explore oxidative stress and inflammation in quadriceps of human smokers and in diaphragm and limb muscles of guinea pigs chronically exposed to CS.

Methods: Muscle function, protein oxidation and nitration, antioxidants, oxidized proteins, inflammation, creatine kinase activity, and lung and muscle structures were investigated in vastus lateralis of smokers, patients with COPD, and healthy control subjects and in diaphragm and gastrocnemius of CS-exposed guinea pigs at 3, 4, and 6 months.

Measurements and Main Results: Compared with control subjects, quadriceps muscle force was mildly but significantly reduced in smokers; protein oxidation levels were increased in quadriceps of smokers and patients with COPD, and in respiratory and limb muscles of CS-exposed animals; glycolytic enzymes, creatine kinase, carbonic anydrase-3, and contractile proteins were significantly more carbonylated in quadriceps of smokers and patients with COPD, and in respiratory and limb muscles of CS-exposed guinea pigs. Chronic CS exposure induced no significant rise in muscle inflammation in either smokers or rodents. Muscle creatine kinase activity was reduced only in patients with COPD and in both diaphragm and gastrocnemius of CS-exposed animals. Guinea pigs developed bronchiolar abnormalities at 4 months of exposure and thereafter.

Conclusions: CS exerts direct oxidative modifications on muscle proteins, without inducing any significant rise in muscle inflammation. The oxidative damage to muscle proteins, which precedes the characteristic respiratory changes, may contribute to muscle loss and dysfunction in smokers and patients with COPD.

AT A GLANCE COMMENTARY
Scientific Knowledge on the Subject
Oxidative stress is a proposed contributor to chronic obstructive pulmonary disease (COPD) muscle dysfunction. Oxidants contained in cigarette smoke induce adverse effects on tissues through oxidative modifications of key biological structures. It remains to be elucidated whether chronic cigarette smoking induces direct oxidative damage in skeletal muscles.

What This Study Adds to the Field
Chronic cigarette smoking exerts direct oxidative modifications on muscle proteins, without inducing significant rise in either molecular or cellular muscle inflammation. Importantly, the oxidative damage to specific muscle proteins, which precedes the characteristic respiratory changes, may contribute to muscle mass loss and dysfunction in smokers and patients with COPD.

BMJのサルコペニアEditorials

BMJ(British Medical Journal)の最新号にサルコペニアのEditorialsが掲載されています。英語ですがEditorialなので割と短いですし下記のHPで全文読めますので、興味のある方はご一読をおすすめします。よくまとまっています。

Avan Aihie Sayer: Sarcopenia A research agenda has been set, but recognition in clinical practice is lagging behind. BMJ 2010;341:c4097

http://www.bmj.com/cgi/content/full/341/aug10_2/c4097?view=long&pmid=20699307

以下、一部訳です。

・サルコペニアは65歳以上の9~18%に認める。

・リスク因子は、年齢、身体活動が少ないこと、不適切な栄養、2型糖尿病などの合併症。

・日常診療での診断には課題がある。握力(例:男性30kg以下、女性20kg以下)のみでも有効ではあるが不十分。

・メタ分析でレジスタンストレーニングの有効性が証明。副作用には留意。

・栄養による予防と治療のエビデンスは不明瞭。蛋白質、特にロイシンとビタミンDのさらなるエビデンスが必要。

・テストステロン、ACE阻害剤、βブロッカー、ミオスタチン阻害剤、サイトカイン阻害剤が研究中。

・若いうちに筋肉量と筋力のピークを高めておけば、将来サルコペニアになりにくい可能性がある。

・サルコペニアは研究テーマにはなっているが、日常診療での認識はまだ不十分であり、さらに認識される必要がある。

2010年8月16日月曜日

プロとしての臨床研究:臨床研究指針と実際

日本内科学会雑誌最新号(Vol99.8)の専門医部会欄に、尾藤誠司先生の「プロとしての臨床研究:臨床研究指針と実際」の原稿が掲載されています。とても勉強になりますので、一部紹介いたします。

内科医は臨床研究を行う義務はあるか?
・一部の医師については義務がある
・すべての医師に対して臨床研究を行うことを勧めたい
・臨床研究に携わる経験が、臨床医としての能力を高める。

「臨床研究に携わる経験が、臨床医としての能力を高める」ことは私も実感していますので、医師に限らずすべての医療人に臨床研究を行うことを推奨しています。

臨床研究を行う上で配慮すべきことは何か?
・医療と研究の目的の違い
・医療は目の前の患者の健康利益を最大限にする
・研究は目の前の患者の利益を高めることを第一義にしていない
・ある臨床研究課題の主体となる研究者は研究者である前に優れた臨床医である必要がある。

研究に参加したほうがよりより臨床を受けられるという考え方は誤りです。

臨床研究に関する規範や指針について
・ヘルシンキ宣言
http://www.med.or.jp/wma/helsinki02_j.html

・疫学研究に関する倫理指針(観察研究)
http://www.lifescience.mext.go.jp/files/pdf/37_139.pdf

・臨床研究に関する倫理指針(介入研究)
http://www.mhlw.go.jp/general/seido/kousei/i-kenkyu/rinsyo/dl/shishin.pdf

これらの倫理指針を知らずに臨床研究を行うことはできません。観察研究を行う場合、疫学研究に関する倫理指針に目を通して理解しておくことが必須です。

臨床研究と倫理委員会
・後ろ向き既存資料利用のみを行う調査であったとしても、患者個々のカルテを閲覧してデータ収集を行うような調査は、基本的に疫学指針を適用し、倫理委員会の審議を受けるべきである。
・臨床研究であればまずは院内の倫理委員会に審査するべきである。

臨床研究計画および手続きの実際:観察研究と介入研究
・臨床研究におけるインフォームド・コンセントの基本的考えは、患者の研究参加への拒否権を最大限尊重することである。
・介入研究においてもっとも重要な点は、治療に関連する有害事象のモニタリングと、重要な有害事象に対しる迅速な対処である。

おわりに
・臨床医が臨床研究を計画し、倫理審査委員会に申請を行い、実際に実施することは、その医師に対して様々な新しい気付きを与える。

きちんとした臨床研究を行うためには、臨床研究デザイン、倫理的配慮、生物統計学の一定の知識が必要です。今はわかりやすい書籍やセミナーも増えつつありますので、しっかり学習されることを推奨します。

さらに研究倫理を学習したい方には尾藤誠司著、いざ、倫理審査委員会へ、NPO法人健康医療評価研究機構(iHope)をおすすめします。
http://ihope.cart.fc2.com/ca7/5/p-r7-s/

2010年8月15日日曜日

すぐに役立つ経口補水療法ハンドブック

今日は谷口英喜著、すぐに役立つ経口補水療法ハンドブック、日本医療企画を紹介します。

http://www.jmp.co.jp/shop/products/detail.php?product_id=586

多くの日本人は今でも点滴信仰を持っていて、点滴が不要なのに点滴を望むことがあります。この書籍は点滴信仰の終焉を宣言しているようです。経口補水療法を優しい、易しい治療法と位置付けて、わかりやすく紹介しています。医療人が読んで難しいと感じることは少ないと思います。

「脱水症の時にお水やスポーツ飲料を摂ると」は、経口補水療法と水やスポーツ飲料の違いを理解するのに最適です。ごく軽度(~軽度)の脱水は水やスポーツ飲料、軽度から中等度の脱水は経口補水療法、高度の脱水は点滴の適応となります。脱水の程度に応じて適宜使い分けが必要です。

スポーツ領域でも導入が広がっていることに納得できます。今年の高校野球神奈川県代表チームも使用しているそうです。一般にも臨床にもさらに広がるべき治療法だと考えます。術前の点滴・禁飲食から経口補水療法にすることは、時代の流れです。

摂食・嚥下障害との相性もよいです。軽度の脱水と嚥下障害であれば経口補水療法の適応です。水分では誤嚥する場合には、ゼリーを使用する選択肢もありますが、キサンタンガム系の増粘剤で0.5~1%程度のトロミをつけて飲めばよいかと思います。ミネラルを含んでいる水分は含んでいない水分よりも粘度がつきやすいので、1%を超える増粘剤は使用しないほうがよいと考えます。

目次
第1章 経口補水療法とは?
 1. 経口補水療法とは“飲む点滴”
 2. 経口補水療法は“発展途上国から生まれた治療法”
 3. 経口補水療法は“20世紀最大の医学上の進歩”
 4. 経口補水療法は医療現場の救世主
 5. 新しい経口補水液の開発へ

第2章 脱水症を理解しよう
 1. 栄養管理の基本はまず体液管理
 2. 身体はたくさんの水からできている
 3. 体液は細胞内液と細胞外液から構成されている
 4. 身体にとって電解質は必要不可欠
 5. 脱水症になると水分も電解質も失われる
 6. 脱水症の原因はさまざま
 7. 小児と高齢者は脱水症になりやすい
 8. 熱中症の症状と対応
 9. 見て触ってわかる脱水症の早期診断方法
 10. 脱水症と補水療法

第3章 経口補水療法を理解しよう
 1. コレラ治療をきっかけに開発
 2. 経口補水療法の理論は日本にも古くからあった
 3. 砂糖と塩が水を運ぶ、その割合が重要
 4. 脱水症の時にお水やスポーツ飲料を摂ると?
 5. 経口補水療法の適応と限界
 6. 経口補水療法は優しい、易しい

第4章 経口補水療法の活用方法
 1. 上手に活用するコツ
 2. 臨床現場における活用方法
 3. NST(栄養サポートチーム)による活用
 4. 災害医療
 5. スポーツ
 6. 産業医療
 7. 旅行医学

2010年8月14日土曜日

「医師アタマ」との付き合い方

今日は尾藤誠司著、「医師アタマ」との付き合い方-患者と医者はわかりあえるか、中公新書ラクレを紹介します。

http://www.chuko.co.jp/laclef/2010/04/150344.html

尾藤先生には個人的に「プライマリ・ケア医のための臨床研究デザイン塾」などで大変お世話になっています。臨床研究デザイン塾に参加していなければ今の自分はなかったので本当に恩人です。だから紹介するというところも少しあります(笑)。

医者と患者の話がすれ違う原因を医師特有の思考回路、「医師アタマ」にあるという仮説を立てて、検証している書籍です。まず、「医師アタマ」というコンセプトとネーミングが卓越しています。

「医師の思考回路、意思決定などのプロセスがおどろくほど一様」ということに私は驚いてしまいました。「医師自身は他の医師と自分の思考回路が同様だとは感じておらず、個々に違うと思っているようです」とあるように、まったくそう思っていました。

リハ医自体が少ないですし、さらにリハよりも栄養に傾いている医者なんてあまりいないので、他の医師とは思考回路も違うと感じていました…。キャリアは違っても思考回路は同じだと知っていい振り返りになりました。

確かに高校(浪人)時代の大学受験、大学医学部での教育、研修医といった中で、医療人に特殊な思考回路が刷り込まれていても全く不思議はありません。自分はまだマシなほうと思っていること自体が危険ですね。

患者のアタマのイメージをモネの睡蓮の絵で、医師のアタマのイメージをモンドリアンの硬く太い直線で構成された絵で対照的に表現して、「医師のモンドリアン回路」という言葉を使っているのは、実に素晴らしいです。相当質的研究に熟練していなければ、こんな芸当はできないと思います。

最後に新しい社会における新しい医師像として、「しなやかな医師」と表現しています。これは医師だけでなく他の医療人にも当てはまりますので、「しなやかな医療人」と言えると思います。ただ、他の医療職に比べて医師の壁や鎧はより強固なので、医師こそしなやかでなければいけませんね。最近、頑固になりつつある気がしていたので反省しています。

ということで一般人向けに書かれた書籍ですが、医療人にもおすすめします。

目次
第1章 医師アタマの基本構造
第2章 診療室の中で何が起こっているのか
第3章 患者が知らない医師の常識
第4章 医師アタマの価値観
第5章 医師アタマとの付き合い方
第6章 患者として、市民として

さらに学習したい医療人には、尾藤誠司編著、医師アタマ-医師と患者はなぜすれ違うのか?、医学書院もお勧めします。こちらのほうがやや難しいですが、いろいろと考えさせてくれる書籍です。

http://www.igaku-shoin.co.jp/bookDetail.do?book=25958

目次
第1章 医師の頭の中は「イシアタマ」である
 今こそ医師アタマの考察と反省を
 異文化コミュニケーションとしての患者-医師関係
 医師アタマを変えてしまえ!
第2章 医師アタマにとっての「病気」と「健康」
 「健康」とは何か?
 病人と正常人の境目
 コミュニケーションの道具としての病名
 「治る」と「治す」―かぜの抗菌薬問題
第3章 医師アタマが描くプロセス
 エビデンスに基づいたあいまいな判断―医学的根拠と医師の立場
 引き算で得る安心―鑑別と除外診断のプロセス
 医療における時間の感覚
 悪くなったのは誰のせい?―因果の迷路
第4章 医師アタマにとって大切なものとそうでないもの
 王様は病態生理
 「西洋医学でないものはうさんくさい」はどんな根拠に基づくのか?
 アウトカムと人生の折り合い
 医療における「よいこと」について
 医師は誰のことを考えて診療しているのか?―医師にとってのお金
第5章 医師アタマと患者
 医師の判断と患者の決断―Shared decision makingにおける諸問題
 診療ガイドラインは何のため?
 医師と患者は友達であるべきか?
 傷害としての医療
第6章 医師アタマの医療はどこに向かうのか?
 患者にとっての「専門家」と医師のなかでの「専門家」
 祈りに効果はあるのか?―医療と宗教
 医師は「偉い人」であるべきか?
 医療は本当に人の役に立っているのか?
 愛のシステム―「患者中心の医療」から「患者とともに考える医療」へ

2010年8月13日金曜日

栄養状態と切断後の機能予後の関連

今日は栄養状態と切断後の機能予後の関連を見た論文を紹介します。

Kalbaugh CA, et al: Does Obesity Predict Functional Outcome in the Dysvascular Amputee? Am Surg. 2006 Aug;72(8):707-12; discussion 712-3.

肥満患者では血管性下肢切断患者の機能予後が悪いのではないかという仮説で調査した論文です。低栄養(BMI:0 to 18.4 kg/m2)、正常栄養(BMI:18.5 to 24.9 kg/m2)、過体重(BMI:25 to 29.9 kg/m2)、肥満(BMI:> or = 30 kg/m2)の4群で比較した結果、むしろ低栄養患者のほうが義足使用の割合や移動自立の割合が低いという結果でした。ただ、多変量解析ではBMIによる統計学的有意差は認められませんでした。

この研究からは、肥満は下腿切断後のリハに悪影響を与えないと思われます。別の論文でほぼ同様な結果のものがありましたが、BMI40以上では悪影響があるようです。切断患者では肥満よりはむしろ低栄養に留意したほうがよいのかもしれません。日本はアメリカよりも肥満が少なく低栄養が多いので、より切断患者の栄養改善が重要になる可能性があります。

Abstract
Limited information is available concerning the effects of obesity on the functional outcomes of patients requiring major lower limb amputation because of peripheral arterial disease (PAD). The purpose of this study was to examine the predictive ability of body mass index (BMI) to determine functional outcome in the dysvascular amputee. To do this, 434 consecutive patients (mean age, 65.8 +/- 13.3, 59% male, 71.4% diabetic) undergoing major limb amputation (225 below-knee amputation, 27 through-knee amputation, 132 above-knee amputation, and 50 bilateral) as a complication of PAD from January 1998 through May 2004 were analyzed according to preoperative BMI. BMI was classified according to the four-group Center for Disease Control system: underweight, 0 to 18.4 kg/m2; normal, 18.5 to 24.9 kg/m2; overweight, 25 to 29.9 kg/m2; and obese, > or = 30 kg/m2. Outcome parameters measured included prosthetic usage, maintenance of ambulation, survival, and maintenance of independent living status. The chi2 test for association was used to examine prosthesis wear. Kaplan-Meier curves were constructed to assess maintenance of ambulation, survival, and maintenance of independent living status. Multivariate analysis using the multiple logistic regression model and a Cox proportional hazards model were used to predict variables independently associated with prosthetic use and ambulation, survival, and independence, respectively. Overall prosthetic usage and 36-month ambulation, survival, and independent living status for the entire cohort was 48.6 per cent, 42.8 per cent, 48.1 per cent, 72.3 per cent, and for patients with normal BMI was 41.5 per cent, 37.4 per cent, 45.6 per cent, and 69.5 per cent, respectively. There was no statistically significant difference in outcomes for overweight patients (59.2%, 50.7%, 52.5%, and 75%) or obese patients (51.8%, 46.2%, 49.7%, and 75%) when compared with normal patients. Although there were significantly poorer outcomes for underweight patients for the parameters of prosthetic usage when compared with the remaining cohort (25%, P = 0.001) and maintenance of ambulation when compared with overweight patients (20.8%, P = 0.026), multivariate analysis adjusting for medical comorbidities and level of amputation showed that BMI was not a significant independent predictor of failure for any outcome parameter measured. In conclusion, BMI failed to correlate with functional outcome and, specifically, obesity did not predict a poorer prognosis.

2010年8月12日木曜日

第10回横浜南部地域一体型NST

明日は第10回横浜南部地域一体型NSTの勉強会、連絡会、懇親会があります。

http://www.peg.or.jp/news/information/kanagawa/100813.pdf

日時:2010年8月13日(金曜日)18:30 ~ 20:45
場所:済生会横浜市南部病院4階

特別講演【18:45~20:00】
「経口補水療法の臨床活用(仮)」
神奈川県立保健福祉大学保健福祉学部栄養学科
准教授谷口英喜先生

横浜南部地域一体型NST連絡会【20:00~20:45 】
懇親会【21:00~ 】

立ち上げ時はどうなるかと思いましたが、多くの方のご協力をいただくことができて、第10回まで来ることができました。個人的にはとても嬉しいです。地域NSTの取り組みの話も何度かさせていただく機会がありました。今月末の日本臨床栄養学会でも、横浜南部地域一体型NSTの取り組みを紹介させていただきます。

急性期病院の院内で嚥下チームやNSTをどんなに頑張っても、それだけでは足りないなと感じていました。嚥下やNSTの地域連携が欠かせないことは明らかでした。ちょうど3年前に能登NST合宿に参加して、能登地域でのNSTの地域連携が充実していることを知り、自分の地域でも何とかしたいと思い行動しました。

実際に患者さんの地域連携がどれだけできているのかと言われるとあまりできていないのが実情ですが、そもそも地域の病院NSTスタッフ同士が顔が見える関係にならなければ、有効な連携はできるはずがありません。そこで顔が見えるネットワークつくりを重視して、毎回飲み会をやっています(笑)。

神奈川摂食・嚥下リハ研究会の力も借りて、神奈川県の統一書式としてのNST・嚥下連絡票(Ver1)を作成することができ、少しずつですが実際に患者さんの地域連携もとれるようになってきました。私もときどきNST・嚥下連絡票を書くようになりました。

明日は谷口先生の特別講演も楽しみですし、その後の連絡会でNST加算に関するアンケートや意見交換を行う予定です。NST加算の推進は地域連携の推進にもつながりますので、より多くの施設でNST加算を算定できるように貢献できればと考えています。

2010年8月11日水曜日

パーソナルブランディング3

今日も、ピーター・モントヤ著、本田直之翻訳:パーソナルブランディング 最強のビジネスツール「自分ブランド」を作り出す、東洋経済新報社から、効力や効果のポイントを紹介します。

11ページからパーソナルブランドのもたらす効果として、以下の10点が紹介されています。

・収入増加を可能にする
・コンスタントなビジネスの流れをつかめる
・有益な人々を引きつける
・「真っ先に思い浮かぶ」ポジションを獲得する
・信頼性が増大する
・リーダーシップの役目が与えられる
・プレステージが強化される
・認知された価値が期待される
・知名度が拡大する
・トレンドに乗ることができる

一方でパーソナルブランドになしえないこととして、以下の3点が紹介されています。

・能力不足を補う
・有名人にする
・パーソナルブランドのみによって目標に到達する
 「まずは自分自身で適切な目標を設定し、秀でた能力のレベルを維持し、自分のブランドを積極的に広め、一貫した姿勢を保つことである。」

 つまり自分ブランドを作り出すことは自分の目的や目標ではなく、それらを達成するための強力なツールといえます。有名人になることは目的でも目標でもありません。実際有名人にはめったになれませんし…。
  
 順番としては、自分のブランドを広める前に、自分自身で適切な目標を設定することが先になります。キャリアで登る山を決める前の筏下りの時期に、自分ブランドを作り出すことはあまり効果がないと思います。登る山を決めて登り始めた後にパーソナルブランディングに力を入れると、山登りがより容易になります。

 「何によって憶えられたいか」の最初のポイントは、実際に憶えられることよりも、憶えられたい何かを選択と集中で決めることです。憶えられたい何かが自分の中で明確になったら、憶えられるための努力も多少必要になります。

 5ページにパーソナルブランドは以下の三つの基本的な印象を思い起こさせるものでなければならないと記載されています。

①差別化

②優位性

③信憑性

 この3点を参考にしながら、憶えられたい何かを選択して集中するとよいと思います。自分のパーソナルブランドを考えることはキャリアを考えることにつながりますので、熟考の価値があります。

2010年8月10日火曜日

大阪医科大学リハ科における栄養状態管理の流れ

大阪医科大学リハビリテーション科における栄養状態管理の流れのHPを見つけました。

リハ科でリハを行う全患者の栄養評価を行い、問題がある場合には管理栄養士に相談したりNSTが介入したりするという、素晴らしいシステムです。他ではあまり聞いたことがありません。すでに行っている病院が実は少なくないのかもしれませんが…。

スクリーニングとしては検査値のみでもありだと私は考えます。もちろん身体計測やMNAーSFでもよいと思います。栄養障害があるとリハ治療の実施に影響を及ぼすことがあるという考え方を実践している点が素晴らしいです。より多くのリハ科でこのようなシステムか、リハ科医師の診察の時点で全患者に栄養評価を行い栄養状態に見合ったリハオーダーをするシステムの導入を望みます。

http://hospital.osaka-med.ac.jp/omcnst/flownst_reh.html

 以下、上記HPからの引用です。

 リハビリテーション科では,治療対象となる全ての患者様に対して,栄養評価シートを用いて血液検査の結果から免疫機能の指標であるTLC(総リンパ球数)や栄養状態の指標であるPNI(予後栄養指数)を出し,定期的に栄養状態をチェックしています.栄養評価の結果,栄養状態に問題があって,リハビリテーション治療の実施に影響を及ぼすと判断された場合は,各病棟に配属されている管理栄養士に相談し,対応しています。

リハビリテーション科における栄養状態管理の流れ

リハビリテーション開始

1週間以内に血液検査データから
栄養評価を実施

定期的な栄養評価を実施

栄養状態がリハビリテーション治療上,問題となる場合は,
随時各病棟の管理栄養士に相談

栄養管理の見直し

NSTへ

パーソナルブランディング2

今日も、ピーター・モントヤ著、本田直之翻訳:パーソナルブランディング 最強のビジネスツール「自分ブランド」を作り出す、東洋経済新報社から、ポイントと思うところを紹介します。

36ページにパーソナルブランド三つの力の源として、以下のものが紹介されています。

①感情的なインパクト
 温かみ、仲間意識、楽しさ、自信、敬慕、尊敬といった感情を喚起するもの。

②一貫性
 通常はブランドが人々の目に何度となくさらされて、やっとあなたのブランドに気付き始める。したがって何カ月も、何年も一貫性を保つことが何よりも重要となる。

③時間
 パーソナルブランディングは、まさに繰り返しの連続である。何十回も繰り返さないとダメである。

 つまり、パーソナルブランドの中身を何にするかの選択も重要ですが、実際に浸透させるには中身そのものだけでなく、戦略としての一貫性や時間、感情的なインパクトが必要となります。一貫性は極めて重要で、安易な多角化や方向転換はブランドを損ねます。感情的なインパクトはマイナス・ネガティブな感情でも強烈であれば印象に残りますが、プラス・ポジティブな感情で憶えられたいものです。

 また、38ページに「認知度が能力より重要」とあります。能力がないけど認知度が高い人と、能力は高いけど認知度がない人では、パーソナルブランドの点では前者が上になります。あとコネ(ネットワーキング)の存在も大切です。実際、能力は乏しくてもコネと認知度で、知られている人は世の中にいます。しかし、能力が高くでも認知度とコネがなければ、パーソナルブランドは成立しません。

 実際には能力も認知度も重要なのですが、能力さえ磨いていれば認知度やコネはなくてもいつか自分ブランドができるという考え方は間違いです。能力を磨く時間のごく一部でよいので、どうしたらパーソナルブランドを強化できるかを考えて実践することも重要だと思います。

 また、医療人でパーソナルブランドが強化されると、執筆や講演の機会が増えてきます。執筆や講演によるアウトプット型学習のほうが、インプット型学習よりも学習効率が高いので結局、能力も高まり認知度も高まるという好循環になってきます。この好循環で充実感や自信も生じてきますので理想的ですが、そうなるまでにはかなりの時間と努力を要します…。時間を要するということがポイントです。

 パーソナルブランドに興味のある方は、11月13日(土)東京ビッグサイトで開催予定の、第2回チーム医療推進全国会議にぜひご参加ください。「自分ブランドのつくり方」というシンポジウムもありますので、参考になるかと思います。よろしくお願いいたします。

http://teamforum.or.jp/

Frailtyとサルコペニア


今日はWJ Evans, et al: Frailty and muscle metabolism dysregulation in the elderly. Biogerontology DOI 10.1007/s10522-010-9297-0を紹介します。

Frailtyとは、虚弱や脆弱性と訳され、ADLや体力が低下傾向の高齢者を意味します。Linda Fried のFrailtyの定義では、体重減少、著しい疲労感の自覚、(握力等の)低下、歩行速度の低下、活動レベルの低下のうち1つ当てはまると脆弱予備状態、2つで脆弱状態あり、3つでFrailtyとなります。最近のトピックの1つです。

Frailtyの最も大きな原因はサルコペニアだと考えます。サルコペニアからFrailtyに至る図を示します。拒食、不活動、炎症、ホルモン変化(インシュリン抵抗性含め)、慢性疾患などの結果、サルコペニアを生じ、そのためにFrailtyになるという流れです。

つまり、これらへの対策が重要となります。最も有効な治療方法はレジスタンストレーニングになりますが、その効果が出る栄養状態であるか、全身状態であるか、原疾患と栄養管理は適切かなどの条件が整っていなければ意味がありません。やはりリハ栄養的なアプローチが重要と考えます。

Abstract
The frailty syndrome is increasingly recognized
by geriatricians to identify elders at an
extreme risk of adverse health outcomes. The physiological
changes that result in frailty are complex
and up to now have been extremely difficult to
characterize due to the frequent coexistence of acute
and chronic illness. Frailty is characterized by an
decline in the functional reserve with several alterations
in diverse physiological systems, including
lower energy metabolism, decreased skeletal muscle
mass and quality, altered hormonal and inflammatory
functions. This altered network leads to an extreme
vulnerability for disease, functional dependency,
hospitalization and death. One of the most important
core components of the frailty syndrome is a
decreased reserve in skeletal muscle functioning
which is clinically characterized by a loss in muscle
mass and strength (sarcopenia), in walking performance
and in endurance associated with a perception
of exhaustion and fatigue. There are a number of
physiological changes that occur in senescent muscle
tissues that have a critical effect on body metabolism.
The causes of sarcopenia are multi-factorial and can
include disuse, changing hormonal function, chronic
diseases, inflammation, insulin resistance, and nutritional
deficiencies. In this review, we will explore the
dysregulation of some biological mechanisms that
may contribute to the pathophysiology of the frailty
syndrome through age-related changes in skeletal
muscle mass and function.

2010年8月9日月曜日

早わかりPEG(胃瘻)ケア・ノート

岡田晋吾編、早わかりPEG(胃瘻)ケア・ノート、照林社を紹介します。下記のHPで試し読みができます。

https://www.shorinsha.co.jp/detail.php?bt=0&isbn=9784796522236

病院・在宅など、あらゆる療養の場におけるPEGケアに必要な最新の知識・技術を、コンパクトかつ視覚的にまとめたポケット版の書籍・ハンドブックです。試し読みしていただければと思いますが、とてもわかりやすくPEGについて記載されています。

まずはこの本を手元に置いて、より詳しく知りたいときにもっと大きいPEGの書籍を参考にするという使い方がよいと思います。先日の西山先生の書籍といい、PEGはいい書籍に恵まれています。

目次
早わかり「PEGカテーテル」分類
ここだけは! PEG管理のチェックポイント

PART1 PEGとは
PEGの目的と適応
PEGと胃瘻
胃瘻からの栄養投与とは
胃瘻の適応と禁忌
PEGのメリット
PEGの造設方法
PEGの造設を行う前に
PEGの造設に伴う手技
PEGの造設方法
術直後の~術後2週間以内のケア
PEGカテーテルの交換
PEGカテーテル交換時の観察ポイント
PEGカテーテル交換の実際

PART2 栄養投与の方法
栄養剤の選び方
胃瘻で用いる経腸栄養剤
経腸栄養剤選択時のポイント
半固形化の方法
「半固形化」とは
半固形化の実際1:半固形化補助食品・増粘剤を用いる場合
半固形化の実際2:寒天を用いる場合
栄養剤の投与法
栄養剤「投与前」に実施すること
栄養剤投与の実際
栄養剤「投与後」に実施すること
薬剤の投与法
簡易懸濁法とは
追加水や不足成分の投与法
追加水
ナトリウム(Na)
食物繊維
微量元素

PART3 日常のケア
瘻孔の管理
洗浄
入浴
こよりティッシュによる滲出液管理
PEGカテーテルの管理
1日1回はカテーテルの回転を確認
定期的に外部ストッパーの向きを変更
PEGカテーテルの根元を立てる
PEGカテーテルをきれいに保つ
PEGカテーテルの引き込みに注意
PEGカテーテル破損を起こさない
栄養剤の管理
栄養剤は薄めずに使用する
栄養剤の汚染を防ぐ
栄養剤投与時の腹部圧迫を避ける
事故抜去の予防
事故抜去は「チューブ型」で起きやすい
バルーン型では自然抜去も起こる

PART4 PEGのトラブル解決法
PEGで起きやすいトラブル一覧
スキントラブル(発赤、びらんなど)
漏れ・滲出液
不良肉芽
下痢
嘔吐・胃食道逆流
バンパー埋没症候群(BBS)
PEGカテーテル閉塞
事故抜去

パーソナルブランディング

今日は、ピーター・モントヤ著、本田直之翻訳:パーソナルブランディング 最強のビジネスツール「自分ブランド」を作り出す、東洋経済新報社を紹介します。アマゾンで578円から中古品を購入できます。

http://www.amazon.co.jp/%E3%83%91%E3%83%BC%E3%82%BD%E3%83%8A%E3%83%AB%E3%83%96%E3%83%A9%E3%83%B3%E3%83%87%E3%82%A3%E3%83%B3%E3%82%B0-%E6%9C%80%E5%BC%B7%E3%81%AE%E3%83%93%E3%82%B8%E3%83%8D%E3%82%B9%E3%83%84%E3%83%BC%E3%83%AB%E3%80%8C%E8%87%AA%E5%88%86%E3%83%96%E3%83%A9%E3%83%B3%E3%83%89%E3%80%8D%E3%82%92%E4%BD%9C%E3%82%8A%E5%87%BA%E3%81%99-%E3%83%94%E3%83%BC%E3%82%BF%E3%83%BC%E3%83%BB%E3%83%A2%E3%83%B3%E3%83%88%E3%83%A4/dp/4492555374

パーソナルブランド、自分ブランドの重要性を訴えている書籍は少なくありませんが、具体的にどう作ればよいかについて記載されている本はあまりありません。その点で参考になる書籍だと思います。自分ブランドに興味のある方はご一読をおすすめします。

この書籍にも「あなたのブランドは何か」という項目がありますが、大切なことは作り方よりも何をブランドにするかです。この点では、ドラッカーの「何によって憶えられたいか」の答えを自問自答することや、自分のキャリアで上る山を決めることのほうが重要です。これらが明確になっていないのに、ブランド化のHowに力を入れてもあまり効果的ではありません。

その上でHowが役立ちます。パーソナルパンフレット、パーソナルロゴ―名刺、スローガン、アイコン、パーソナルウエブサイト、パーソナルポストカード、PR、ネットワーキングが紹介されています。私もすべて工夫しているわけではありませんが、一部参考にしています。ブランドのWhatがよくでもHowがよくないとやはり有効なブランドにはなりません。

現在はIT、Webを使ったパーソナルブランディングがお金もかかりませんし、有効だと考えます。ブログ、SNS(mixi、Facebook)、ツイッター、MLでの活発な投稿などは、その気になればすぐにできることです。その気になれるかどうかが私にとっても1つ課題ですが…。

また医療人の場合は、執筆や講演、学会での活発な質問が有効です。特に学会や研究会で人の発表や講演に質問するのは、自分の学習にもパーソナルブランディングにも効果的です。日本人は質問する人が少ないですが、パーソナルブランディングの点からはとてももったいない話です。学会に参加したら必ず1回以上、質問することを義務にするとよいです。

あとがきで究極の「自分メディア」である本の出版とあるように、書籍の刊行は自分の名刺代わりになると考えます。私の場合は、書籍企画を自分で作って医歯薬出版さんに相談したら幸運にも受け入れていただけました。本の出版は簡単にはできませんが他人事だと思わずに、自分の中期目標、長期目標の1つにしておくのはよいことだと思います。

目次
1 パーソナルブランドとは何か(パーソナルブランドをなぜ作り上げるのか
販売とは、マーケティングとは、そしてブランディングとは何か ほか)
2 あなたのブランドは何か?(ビジネスニーズに合ったブランディング
個人的な要素をパーソナルブランドに取り入れる)
3 ブランディング戦略(特化か、それとも衰退か
ポジショニング―自分の場所を確保する ほか)
4 パーソナルブランドのための最強ツール(パーソナルパンフレット
パーソナルロゴ―名刺、スローガン、アイコン ほか)
5 自分のパーソナルブランドを一二カ月で構築する(自分のブランディングとマーケティングの年間プランを書き上げる
ブランドを維持し、防御する ほか)

2010年8月8日日曜日

早期経口摂取実現とQOL向上のための摂食・嚥下リハビリテーション

今日は、小山珠美監修、東名厚木病院摂食・嚥下チーム執筆、「早期経口摂取実現とQOL向上のための摂食・嚥下リハビリテーション」メディカルレビュー社を紹介します。昨日この書籍刊行のダイジェストセミナーがありました。

http://www.ws-k.co.jp/dsemina.pdf

結論から言うと、今までの摂食・嚥下リハの書籍の中でもっともすぐれた実践書です(研究書ではありません)。今までは嚥下リハの書籍を1冊と言われたら「嚥下障害ポケットマニュアル」を勧めていましたが、これからは、「早期経口摂取実現とQOL向上のための摂食・嚥下リハビリテーション」をまずお勧めします。

・フルカラーで実践の写真の量が圧倒的に多く、ビジュアル的に実践内容がよく伝わります。
・全体的にとてもわかりやすく最新の取り組みが紹介されています。
・内容がとても充実していて、明日から現場で実践するための十分な情報が十分含まれています(A4サイズ、250ページ)
・3000円(税込)と内容を考えると極めて安価です。
・知識、技能だけでなく情熱や愛が伝わってくる書籍です。こんな本はそうそうありません。

昨日の書籍刊行ダイジェストセミナーも感動、感激しましたが、この書籍からも十分感動が伝わります。摂食・嚥下リハに関わる人の必読書だと私は考えます。

問題点として、アマゾンや通常の書店で入手できないことが挙げられます。申込書のファイルをアップロードしますので、これをダウンロードしてFAXで申し込んでいただければと思います。よろしくお願いいたします。

2010年8月6日金曜日

道南摂食嚥下セミナー

9月25日に函館で道南摂食嚥下セミナーで講演を行ないます。「摂食・嚥下障害のリハビリテーション栄養の実践」というテーマで、今年の1月16日に函館で話す予定だったのが、悪天候などの為に話せなかったものです。案内ビラと参加申込書は下記のHPで入手できます。

https://sites.google.com/site/noventurenoglory/

函館近隣の方はご参加していただけるとありがたいです。ご検討よろしくお願い致します。

第32回日本臨床栄養学会総会・第31回日本臨床栄養協会総会第8回大連合大会

8月28日(土)~29日(日)に名古屋国際会議場で、第32回日本臨床栄養学会総会・第31回日本臨床栄養協会総会第8回大連合大会が開催されます。

http://www.macc.jp/2010rinsho-eiyo/

私は初日朝一の栄養ケア連携のシンポジウムに参加します。

8月28日9時~
シンポジウム1 栄養ケア連携
座長:長谷川 潤 名古屋大学医学部附属病院 老年内科
佐々木雅也 滋賀医科大学医学部附属病院 栄養治療部 教授

1 横浜南部地域一体型NST における栄養ケア連携
若林 秀隆 横浜市立大学附属市民総合医療センターリハビリテーション科 助教
2 北勢・地域連携栄養カンファレンスを運営して分かった課題
石川 雅一 いなべ総合病院 副院長、北勢・地域連携栄養カンファレンス代表世話人
3 地域連携における聖隷浜松病院の取り組み
古橋 啓子  社会福祉法人聖隷福祉事業団 保健事業部 聖隷予防検診センター
健康支援課 課長補佐
4 小児領域の栄養連携
位田  忍  大阪府立母子保健総合医療センター 消化器・内分泌科主任部長
在宅医療支援室室長兼務

リハ栄養的には、栄養とサルコペニアのシンポジウムが興味深いです。

8月29日10時30分~
シンポジウム7 栄養とサルコペニア
座長
葛谷 雅文 名古屋大学大学院医学系研究科 老年科学 准教授
大荷 満生 杏林大学医学部 高齢医学 准教授       

1 Astaxanthin 摂取と筋萎縮抑制
杉浦 崇夫 山口大学 教育学 スポーツ健康科学 教授
2 加齢におけるアナボリックペプチド グレリンの意義とトランスレーショナルリサーチ
中里 雅光 宮崎大学医学部内科学講座 神経呼吸内分泌代謝学分野 教授
3 アミノ酸によるサルコペニアの改善
小林 久峰 味の素株式会社アミノサイエンス研究所 機能製品研究部 アミノ酸機能研究室 室長
4 ポリフェノールと身体機能
原水 聡史 花王株式会社 生物科学研究所

その他にも嚥下リハや高齢者の栄養ケアマネジメントなどのシンポジウムもあります。管理栄養士と医師が中心の学会のようですが、興味のある方はご参加ください。

2010年8月5日木曜日

リハビリスタッフに求められる薬・栄養・運動の知識:内部障害のケアのために

今日は、上月正博編集、リハビリスタッフに求められる薬・栄養・運動の知識:内部障害のケアのために、南江堂を紹介します。

http://www.nankodo.co.jp/wasyo/search/syo_syosai.asp?T_PRODUCTNO=2253921#shohyou

内部障害のリハに関して、リハスタッフが最低限知っておいたほうがよい薬物療法、栄養指導、生活習慣の改善などをコンパクトにまとめた書籍です。リハの書籍というよりは内部障害の疾患の書籍と言えます。

運動療法に際しての薬物投与の注意点が特徴的で、薬物と運動・リハの関連に関する記載がある書籍は他にはあまりないと思います。また、エイズも含めてすべての内部障害のリハでは食事療法を無視できないことがよくわかります。

運動療法に際しての食事療法の注意点が記載されていれば、リハ栄養的にはなおよいと感じました。目次だけでも一通り目を通す価値はあるかと思います。

【主要目次】
総論
1章 内部障害とは?
 内部障害の定義
 内部障害の疫学

2章 内部障害のチーム医療とリハビリテーション
  ◇医療のパラダイム変化とは?
  ◇コンプライアンスからアドヒアランスへ
  ◇包括的リハビリテーションとは何か?
  ◇チーム医療とはどうあるべきか?
  ◇コメディカルに薬物療法・栄養指導の知識がなぜ必要なのか?
 1 心臓機能障害のリハビリテーション
 2 呼吸器機能障害のリハビリテーション
 3 腎臓機能障害のリハビリテーション
 4 肝臓機能障害のリハビリテーション
 5 膀胱・直腸機能障害のリハビリテーション
 6 小腸機能障害のリハビリテーション
 7 ヒト免疫不全ウイルスによる免疫機能障害のリハビリテーション

3章 薬物療法の基本
A 薬の種類と効き方
 1 薬理作用
 2 剤形
 3 体内動態
 4 要注意薬
B 望ましい投与量の決め方
C 分解のされ方
D 病気の種類による投与量の違い
E 薬の飲み合わせの禁忌・注意点

各論
1章 虚血性心疾患
 疾患の解説
  ◇安定狭心症
  ◇不安定狭心症
  ◇冠攣縮性狭心症
  ◇急性心筋梗塞
  ◇無症候性心筋虚血
A 食事療法の要点
B 生活指導の要点
C 薬物療法の要点
 1 狭心症
 2 心筋梗塞
 3 無症候性心筋虚血
D 使用薬剤の知識
 1 β遮断薬
 2 Ca拮抗薬
 3 硝酸薬
 4 利尿薬
 5 アンジオテンシン変換酵素(ACE)阻害薬・アンジオテンシンⅡ受容体拮抗薬(ARB)
 6 HMG CoA還元酵素阻害薬(スタチン系薬剤)
 7 抗血小板薬
 8 抗凝固薬
E 服薬中の注意
 1 β遮断薬
 2 Ca拮抗薬
 3 硝酸薬
 4 利尿薬
 5 アンジオテンシン変換酵素(ACE)阻害薬・アンジオテンシンⅡ受容体拮抗薬(ARB)
 6 HMG CoA還元酵素阻害薬(スタチン系薬剤)
 7 抗血小板薬
 8 抗凝固薬
F 運動療法に際しての薬物投与の注意点
Q&A

2章 高血圧症
 疾患の解説
A 食事療法の要点
 1 食塩制限
 2 食塩以外の栄養素
 3 カロリー制限
B 生活指導の要点
 1 運動
 2 節酒
 3 禁煙
 4 その他の生活習慣の修正
C 薬物療法の要点
D 使用薬剤の知識
 1 Ca拮抗薬
 2 アンジオテンシンⅡ受容体拮抗薬(ARB)
 3 アンジオテンシン変換酵素(ACE)阻害薬
 4 利尿薬
 5 アルドステロン拮抗薬,K保持性利尿薬
 6 β遮断薬(含αβ遮断薬)
 7 α遮断薬
E 服用中の注意
F 運動療法に際しての薬物投与の注意点
Q&A

3章 不整脈
 疾患の解説
A 食事療法の要点
B 生活指導の要点
C 薬物療法の要点
 1 心室性期外収縮の意義と抗不整脈薬治療
 2 抗不整脈薬の種類
D 使用薬剤の知識
E 服薬中の注意
F 運動療法に際しての薬物投与の注意点
Q&A

4章 心不全
 疾患の解説
  ◇左心不全
  ◇右心不全
  ◇急性心不全と慢性心不全
  ◇拡張期心不全
A 食事療法の要点
B 生活指導の要点
 1 心不全の誘因と生活指導
 2 家庭での自己管理とモニタリング
 3 日常生活上の指導
 4 運動の可否と注意点
C 薬物療法の要点
D 運動療法に際しての薬物投与の注意点
Q&A

5章 気管支喘息
 疾患の解説
  ◇気管支喘息の定義
  ◇気道の慢性炎症
  ◇気道過敏性の亢進
A 食事療法の要点
B 生活指導の要点
 1 予防
 2 治療継続に関する指導
C 薬物療法の要点
 1 長期管理薬(コントローラー)
 2 発作治療薬(レリーバー)
D 使用薬剤の知識
E 服薬中の注意
F 運動療法に際しての薬物投与の注意点
Q&A

6章 慢性閉塞性肺疾患(COPD)
 疾患の解説
  ◇COPDの病態
  ◇COPDのスパイロメトリー
  ◇COPDの疫学
A 食事療法の要点
 1 COPDと栄養
 2 COPDの食事
B 生活指導の要点
 1 禁煙
 2 酸素療法
 3 摂食嚥下対策
 4 感染対策
C 薬物療法の要点
D 使用薬剤の知識
E 服薬中の注意
F 運動療法に際しての薬物投与の注意点
 1 COPDと脈拍
 2 COPDと吸入薬
Q&A

7章 糖尿病
 疾患の解説
A 食事療法の要点
 1 規則的な食事
 2 摂取エネルギーの算出
 3 栄養のバランスを考える
 4 合併症対策
 5 食事指導の実際
B 運動療法の要点
 1 運動療法の開始
 2 2型糖尿病患者運動療法の基本的考え方
 3 1型糖尿病患者運動療法の基本的考え方
 4 運動の強度や種類の選択
 5 具体的トレーニングプログラム
 6 運動療法の課題
C 薬物療法の要点
 1 経口糖尿病薬
 2 インスリン
Q&A

8章 脂質異常症
 疾患の解説
  ◇診断のための検査
  ◇血清脂質とリポ蛋白
  ◇脂質異常症と動脈硬化
  ◇脂質異常症の原因
A 食事療法の要点
B 生活指導の要点
C 薬物療法の要点
D 使用薬剤の知識,服薬上の注意
 1 スタチン(HMG CoA還元酵素阻害薬)
 2 陰イオン交換樹脂
 3 プロブコール
 4 ニコチン酸製剤
 5 フィブラート系薬剤
 6 EPA(イコサペンタエン酸)製剤
 7 小腸コレステロールトランスポーター阻害薬
E 運動療法に際しての薬物投与の注意点
Q&A

9章 痛風,高尿酸血症
 疾患の解説
  ◇高尿酸血症の定義
  ◇痛風の診断
A 食事療法,運動療法,生活指導の要点
B 薬物療法の要点,使用薬剤の知識,服薬中の注意
 1 痛風関節炎の治療
 2 高尿酸血症の治療
 3 尿路管理
Q&A

10章 腎不全
 疾患の解説
  ◇急性腎不全
  ◇慢性腎不全
A 食事療法の要点
 1 急性腎不全
 2 慢性腎不全
B 生活指導の要点
 1 運動
 2 禁煙
 3 飲酒
C 薬物療法の要点
 1 原疾患の治療
 2 残存糸球体,尿細管の保護
 3 腎不全で生じる病態への対症療法
D 使用薬剤の知識
 1 副腎皮質ステロイド
 2 免疫抑制薬
 3 抗血小板薬
 4 抗凝固薬
 5 降圧薬
 6 利尿薬
 7 造血因子刺激薬(エリスロポエチン製剤)
 8 P吸着薬
 9 活性型ビタミンD
 10 副甲状腺機能亢進症治療薬
 11 アルカリ化薬
 12 Kイオン交換樹脂薬
 13 経口活性炭吸着薬
E 服薬中の注意
 1 副腎皮質ステロイド
 2 免疫抑制薬
 3 抗血小板薬
 4 抗凝固薬
 5 降圧薬
 6 利尿薬
 7 造血因子刺激薬(エリスロポエチン製剤)
 8 P吸着薬
 9 活性型ビタミンD
 10 副甲状腺機能亢進症治療薬
 11 アルカリ化薬
 12 Kイオン交換樹脂薬
 13 経口活性炭吸着薬
F 運動療法に際しての薬物投与の注意点(投与時間,部位の工夫,休薬の必要性)
Q&A

11章 脳卒中
 疾患の解説
  ◇脳内出血
  ◇くも膜下出血
  ◇脳梗塞
  ◇一過性脳虚血発作
A 食事療法の要点
 1 急性期治療
 2 急性期の栄養管理
B 生活指導の要点(危険因子対策)
 1 高血圧
 2 糖尿病
 3 喫煙
 4 脂質異常症
 5 肥満
 6 メタボリックシンドローム
 7 飲酒
 8 心疾患
C 薬物療法の要点
D 使用薬剤の知識
 1 血栓溶解薬
 2 抗凝固薬
 3 抗血小板薬
 4 脳保護薬
 5 抗脳浮腫薬
 6 血液希釈薬
E 服薬中の注意点
F 運動療法に際しての薬物投与の注意点
Q&A

12章 パーキンソン病
 疾患の解説
  ◇疫学
  ◇病理
  ◇症状
  ◇診断,鑑別
A 食事療法の要点
B 生活指導の要点
C 薬物療法の要点
D 使用薬剤の知識
 1 L-dopa
 2 ドパミン作動薬
 3 モノアミン酸化酵素(MAO-B)阻害薬,カテコール-O-メチル転移酵素(COMT)阻害薬,ゾニサミド
 4 アマンタジン,抗コリン薬
E 服薬中の注意
F 運動療法に際しての薬物投与の注意点

13章 感染症
 疾患の解説
A 栄養状態と感染症・服薬指導の要点
B 生活指導の要点
C 抗菌化学療法の要点
D 抗菌薬の知識
E 抗菌薬の副作用
Q&A

14章 炎症,アレルギー疾患(喘息を除く)
 疾患の解説
  ◇炎症とは
  ◇自己免疫疾患とは
  ◇代表的自己免疫疾患
A 食事療法の要点
 1 全般的注意
 2 炎症に対する食事療法
 3 食事療法の注意点
B 生活指導の要点
 1 生活指導の有効性
 2 具体的生活指導
C 薬物療法の要点
 1 使用される薬剤
 2 薬剤使用のポイント
D 使用薬剤の知識,服薬上の注意
 1 非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs)
 2 ステロイド薬
 3 免疫抑制薬
 4 抗リウマチ薬
 5 生物学的製剤
Q&A

15章 小腸機能障害
 疾患の解説
  ◇小腸機能障害の原因となる疾患
  ◇小腸機能障害の病態
  ◇小腸機能障害の治療
A 食事療法の要点
 1 短腸症候群
 2 広範な病変による小腸機能障害
B 生活指導の要点
C 薬物療法の要点
 1 在宅中心静脈栄養と注意点
 2 その他の使用薬剤と注意点
Q&A

16章 排尿障害
 疾患の解説
  ◇過活動膀胱(overactive bladder:OAB)
  ◇低活動膀胱(underactive bladder)
  ◇前立腺肥大症(benign prostatic hyperplasia/hypertrophy:BPH)
  ◇女性の腹圧性尿失禁(stress urinary incontinence:SUI)
A 食事療法の要点
B 生活指導の要点
C 薬物療法の要点
 1 使用薬物の知識
 2 服用中の注意
D 運動療法に際しての薬物投与の注意点
Q&A

17章 排便障害
 排便障害とは
  ◇排便のメカニズム
  ◇排便障害のアセスメント
1.下痢
 疾患の解説
  ◇急性下痢
  ◇慢性下痢
A 生活指導の要点
B 食事療法の要点
C 薬物療法の要点
 1 急性下痢
 2 慢性下痢
2.便秘
 疾患の解説
A 薬物療法の前に
B 生活指導の要点
C 食事指導の要点
D 薬物療法の要点
E 使用薬剤の知識
 1 膨張性下剤
 2 塩類下剤
 3 大腸刺激性下剤
 4 浸潤性下剤
 5 その他
3.過敏性腸症候群
4.炎症性腸疾患
A クローン病
B 潰瘍性大腸炎
5.便失禁
 疾患の解説
A 生活指導の要点
B 食事療法の要点
C 治療
 1 薬物治療
 2 外科治療
 3 その他
Q&A

18章 ヒト後天性免疫不全(AIDS)ウイルス(HIV)による免疫機能障害
 疾患の解説
  ◇HIVの構造と感染機序
  ◇HIV感染の経過
A 食事療法の要点
 1 栄養状態の改善
 2 自分自身の管理
B 生活指導の要点
 1 感染予防
 2 服薬支援
C 薬物療法の要点
 1 薬物療法の原理
 2 開始時期
 3 開始にあたっての注意
 4 急性期の加療
D 使用薬剤の知識
 1 融合阻害薬T20
 2 侵入阻害薬
 3 NRTI
 4 NNRTI
 5 インテグラーゼ阻害薬
 6 PI
E 服薬中の注意
 1 乳酸アシドーシス
 2 代謝異常と動脈硬化疾患
 3 リポアトロフィー
 4 肝機能障害
 5 腎障害
 6 薬疹
 7 中枢神経・精神症状
 8 抗HIV薬と他剤の併用について
F 運動療法に際しての薬物投与の注意点
Q&A

付録
重大な副作用の症状
妊娠と薬剤

第12回日本褥瘡学会

来週8月20-21日に幕張メッセで第12回日本褥瘡学会が開催されます。プログラムは下記のHPで確認できます。

https://apollon.nta.co.jp/jspu12/program.html

今回、栄養に関するシンポジウムが2つ開催されます。特に「QOL向上を目指した栄養管理」では、シンポジストに理学療法士とリハ医がいます。従来の栄養に関するシンポジウムでは、リハ関連職種がシンポジストに入ることはほとんどなかったので、このシンポジウムはとても楽しみです。

「栄養とリハビリテーション医療」、「食べる楽しみを大切にするために~口のリハビリテーションのすすめ~」どちらもとても大切です。

シンポジウム3 【8月20日(金)15:30~17:00 第3会場】
「栄養介入は創傷治癒を促進させる」
司会
大村 健二 (山中温泉医療センター)
中條 俊夫 (医療法人財団青葉会 青葉病院)

演者
大浦 武彦 (医療法人社団廣仁会褥瘡・創傷治癒研究所)
足立 香代子 (せんぽ東京高輪病院 栄養管理室)
田村 佳奈美 (独立行政法人労働者健康福祉機構 福島労災病院 栄養サポートセンター)
下田 雅子 (特定医療法人 原土井病院 内科)
岡田 晋吾 (医療法人社団守一会北美原クリニック)

シンポジウム5 【8月21日(土)13:30~15:00 第1会場】
「QOL向上を目指した栄養管理」
司会
美濃 良夫 (阪和第一泉北病院)
判澤 恵 (京都橘大学看護教育研修センター)

演者
美濃 良夫 (阪和第一泉北病院):ガイドラインに示された栄養管理と問題点
飯田 有輝 (厚生連海南病院 リハビリテーション科):栄養とリハビリテーション医療
栗原 正紀 (長崎リハビリテーション病院):食べる楽しみを大切にするために~口のリハビリテーションのすすめ~
井上 善文 (医療法人川崎病院 外科):QOLからみたTPNとPEGのメリット・デメリット
幣 憲一郎 (京都大学医学部附属病院 疾患栄養治療部):QOLを重視した食のコーディネート
木下 幸子 (岐阜大学医学部附属病院生体支援センター):褥瘡予防・治療における栄養管理とQOL-看護師/皮膚・排泄ケア認定看護師(WOCN)の立場から―

2010年8月4日水曜日

Liverpool Care Pathway

Liverpool Care Pathway(LCP)とは、Dr. Jhon Ellershaw(Marie Curie Center
Liverpool)により2003年に提唱された看取りのクリティカル・パスです。

チェック・リスト形式のパスで、患者を看取るまで、そして看取り後の治療とケアの手引きとなり、経過記録を支援することを目的として作られたそうです。下記のHPで内容やワークショップのスライドを見ることができます。

http://www.lcp.umin.jp/

看取りのクリティカル・パスというと機械的に看取るのかというイメージを持たれる方もいるかもしれませんが、むしろ逆でよりよい看取りを目指したものといえます。

使用基準は、患者に関わる多職種チームが予後数日または一週間程度と判断し、かつ以下の項目のうち2項目以上が当てはまる場合です。

・患者が終日臥床状態である     
・半昏睡/意識低下が認められる
・経口摂取がほとんどできない
・錠剤の内服が困難である

LCP使用上の留意点として、下記の3点が紹介されています。
・LCPは看取りのケアを事務的に行うためのものではない
・LCPに記入すれば看取りのケアの質が向上する訳ではない
・LCPを使用することにより、看取りのケアを常に意識して、見直しながら統一したケアが行われることが利点である

現時点でのパスは下記のHPで入手できます。興味のある方は見てください。
http://www.lcp.umin.jp/NagoyaLCPver09.pdf

NST加算疑義解釈資料

NST加算の疑義解釈資料が厚労省HPに掲載されています。

http://www.mhlw.go.jp/bunya/iryouhoken/iryouhoken12/dl/index-124.pdf

以下、NST加算関係の抜粋です。摂食・嚥下障害看護認定看護師は、臨床栄養の知識と技能を十分有しているという判断ですね。

(問6) 看護師、薬剤師又は管理栄養士が日本病態栄養学会の「NSTセミナー(新規研修コース)」を修了した場合又は看護師が日本看護協会の認定看護師(摂食・嚥下障害看護)となるために必要な研修を修了した場合は、栄養サポートチーム加算にある、所定の研修を修了したとみなされるの
か。
(答) これらの研修は、いずれも合計40時間以上の研修であり、必要な研修内容を満たしているものであり、所定の研修を修了したとしてみなされる。

(問7) 日本病態栄養学会のNSTコーディネーターとなるために必要な研修を看護師、薬剤師又は管理栄養士が修了した場合、栄養サポートチーム加算にある所定の研修を修了したものとみなされるのか。また、NSTコーディネーターとなるために必要な研修と併せて、看護師、薬剤師又は管理栄養士が日本病態栄養学会の行うNSTセミナー(追加研修コース)を修了した場合は、所定の研修を修了したとみなされるの
か。
(答) NSTコーディネーターとなるために必要な研修は、栄養サポートチーム加算にある所定の研修の内容としては不十分であり、所定の研修とは認められないがNSTコーディネーターとなるために必要な研修と併せて、NSTセミナー(追加研修コース)を修了した場合には、合計40時間の研修となり、必要な研修内容を満たすものとなるため、栄養サポートチーム加算にある所定の研修を修了したとみなすことができる。

(問8) 医師が、日本静脈経腸栄養学会の認定教育施設における指導医の資格要件となっている研修を修了した場合または日本病態栄養学会のNSTコーディネーターとなるために必要な研修を修了した場合は、栄養サポートチーム加算にある、所定の研修を修了したとみなされるのか。
(答) これらの研修は、いずれも合計10時間以上の研修であり、必要な研修内容を満たしているものであり、所定の研修を修了したとしてみなされる。

2010年8月3日火曜日

転倒予防とリハ栄養2

9月に家庭医療サマーフォーラムin 福島という研修会で、「家庭医ができる転倒予防を学ぼう:リハビリテーション栄養の視点から」というワークショップを行います。

http://www.fmu.ac.jp/home/comfam/documents/s.f2010iwaki.pdf

今その資料作成をしていますが、栄養も含めた包括的介入の症例検討(小グループでのディスカッション)をどう進めればよいか少し苦慮しています。

在宅リハで徐々に歩行困難となり自宅で転倒が増えたので、転倒予防の住環境整備依頼があって訪問すると160cm、27kgでした、などということは少ないので、やはり栄養以外の面も評価、介入できるようにしなければいけません。

コクランでは在宅と施設とで転倒予防のエビデンスを別々にメタ分析しています。

在宅:Gillespie LD, et al: Interventions for preventing falls in older people living in the community. Cochrane Database Syst Rev. 2009 Apr 15;(2):CD007146.

AUTHORS' CONCLUSIONS: Exercise interventions reduce risk and rate of falls. Research is needed to confirm the contexts in which multifactorial assessment and intervention, home safety interventions, vitamin D supplementation, and other interventions are effective.

施設:Cameron ID, et al:Interventions for preventing falls in older people in nursing care facilities and hospitals. Cochrane Database Syst Rev. 2010 Jan 20;(1):CD005465.

AUTHORS' CONCLUSIONS: There is evidence that multifactorial interventions reduce falls and risk of falling in hospitals and may do so in nursing care facilities. Vitamin D supplementation is effective in reducing the rate of falls in nursing care facilities. Exercise in subacute hospital settings appears effective but its effectiveness in nursing care facilities remains uncertain.

在宅と施設でエビデンスが少し異なるのが興味深いです。今回は家庭医対象ですので、在宅ケースで考えています。そうすると、質の高いエビデンスがあるのは運動介入のみということになります。実際、効果がなかったという質の高いランダム化比較試験もありますし、なかなか難しいところです。

それでもやはり包括的介入をすべきだろうなあと思っています。といっても一方で転倒予防に限度があることも理解しています。0にするよりも転倒回数を減らすことと転倒しても骨折しないことが現実的な目標ですし。

2010年8月2日月曜日

学問のすすめ

今日は、福沢諭吉著、伊藤正雄監修他、学問のすすめ、講談社学術文庫を紹介します。

http://www.bookclub.kodansha.co.jp/bc2_bc/search_view.jsp?b=1597590

1万円札でおなじみの福沢諭吉ですし、学問のすすめのタイトルや「天は人の上に人を造らず、人の下に人を造らず」という最初の言葉は誰でも知っているはずです。ただ、学問のすすめをすべて読んだことがあるという方は少ないと思います。私も読んだことがありませんでした。

竜馬伝を見ている(竜馬の生き方に憧れます)ので、この時代への関心が高まっていて、たまたま手にとってのかもしれません。

言わずと知れた明治のベストセラーで、現代では当てはまらない古いこともありますが、一方で現代にも通じることは少なくありません。明治と平成とで、科学技術の進歩と恩恵は大きいですが、国民のレベルはそんなに変わっていないのかもしれません。

スピーチのことを日本語で演説といいますが、演説ということばは福沢諭吉が作ったそうです。つまり、江戸時代末期までは演説という概念がなく、西洋文化が入ってきてはじめて行われるようになったようです。

「学問の要は活用にあるのみ。活用なき学問は無学に等し。」も名文だと私は感じました。特に医療人にとっては、学問のための学問では意味がないですし。そのためには、専門の知識・技能+FDの能力が必要だと言っているように感じます。

「視察・推究・読書はもって智見(知識)を集め、談話(ディスカッション)はもって智見を交易(交換)し、著書・演説はもって智見を散ずるの術なり。」ということで、演説と談話を推奨しています。

私たちは学会、研究会、講演会などで普通に発表をしたり、論文や書籍を執筆したりしていますが、これも明治初期には当たり前のことではなかったと言えます。現代は実に演説や談話を行うのに恵まれた時代ですが、その恵みを個人的に十分活かしているかと言われると…ですね。

現代のベストセラー(もしドラなど)ももちろんよいですが、明治のベストセラーも夏休みなどに読んでみるのはいかがでしょうか。

目次
初編
 端書
第二編
 端書
 人は同等なること
第三編
 国は同等なること
 一身独立して一国独立すること
第四編
 学者の職分を論ず
 付録
第五編
 明治七年一月一日の詞
第六編
 国法の貴きを論ず
第七編
 国民の職分を論ず
第八編
 わが心をもつて他人の身を制すべからず
第九編
 学問の旨を二様に記して中津の旧友に贈る文
第十編
 前編の続き、中津の旧友に贈る
第十一編
 名分をもつて偽君子を生ずるの論
第十二編
 演説の法を勧むるの説
 人の品行は高尚ならざるべからざるの論
第十三編
 怨望の人間に害あるを論ず
第十四編
 心事の棚卸し
 世話の字の義
第十五編
 事物を疑ひて取捨を断ずること
第十六編
 手近く独立を守ること
 心事と働きと相当すべきの論
第十七編
 人望論

ツイッター始めました

一昨日の京都の京滋摂食嚥下を考える会記念講演会でご一緒させていただいた金谷節子先生が、ツイッターをやっていると聞いて私も始めることにしました。

https://twitter.com/HideWakabayashi

まだ全然使い慣れていませんが、少しずつ呟いていきたいと思います。リハ栄養のブログのコピーが多いかもしれませんが、よろしくお願いいたします。

2010年8月1日日曜日

胃ろう(PEG)ケア はじめの一歩

今日は、小山茂樹監修、西山順博著、伊藤明彦、山田圭子執筆協力:胃ろう(PEG)ケア はじめの一歩、秀和システムを紹介します。

http://www.shuwasystem.co.jp/products/7980html/2675.html

胃ろうの書籍は何冊か読みましたが、この書籍がもっともわかりやすいと感じました。QandA方式でイラストが多く理解しやすいだけでなく、豊富な経験に基づいた様々なコツや熱い思いが紹介されています。医療職はもちろんですが、介護職や在宅医療に関わるスタッフに特におすすめしたい書籍です。

また、PEGクリニカルパス、PEG地域連携パスも紹介されていて、特にPEG地域連携パスは優れたものです。これを改訂したものを神奈川でもPEG地域連携の際に導入できればと思います。

目次
第1章 PEGをつくる(造設)前の疑問
1-1 胃ろう(PEG)って何?なぜ必要なの?

1-2 PEGのメリットと他の栄養療法との違いは?

1-3 PEGはどうやってつくるの?

1-4 PEGカテーテルにはどのような種類があるの?

1-5 つくったPEGを元に戻すことはできるの?

コラム PEGは命綱

1-6 小児や高齢者の方にも安全なの?

1-7 PEGについて、患者さんやご家族にはどう説明すればいいの?

1-8 手術前はどうやって過ごせばいいの?

コラム 胃壁固定の必要性と手順

第2章 手術中と手術直後(急性期)の疑問
2-1 PEG手術中は何に気をつければいいの?

2-2 PEG造設直後の合併症は?対策はどうするの?

2-3 術後の処置は、どうすればいいの?栄養剤注入の開始はいつから?

第3章 PEGカテーテル・必要物品に関する疑問
3-1 PEGカテーテルの構造はどうなっているの?

3-2 PEGカテーテルは交換の必要があるの?どのくらいの間隔ですればいいの?

3-3 PEG管理に使う必要物品の名前と特徴は?清潔の保ち方は?

3-4 「減圧」ってなに?どうすればいいの?

3-5 PEGカテーテルや必要物品をよりうまく扱うコツは?

第4章 栄養剤注入に関する疑問
4-1 栄養剤ってどんなもの?何を準備すればいいの?

4-2 栄養剤の注入はどうすればいいの?水分補給はどのくらい必要なの?

4-3 どんな姿勢で栄養剤を注入すればいいの?注入時間はどのくらいかければいいの?

4-4 栄養剤の半固形化ってなに?注入方法は違うの?

4-5 薬剤投与の簡易懸濁法ってなに?

まとめ 日常のケア(栄養剤注入・簡易懸濁法・酢ロック) 一連の流れ

第5章 日常生活に関する疑問
5-1 PEGをつくって口から食べなくても、歯磨きは必要なの?5-2 PEGをつくったら口から食べれないの?

5-3 PEGをつくった後はお風呂に入ったり、リハビリをしても大丈夫なの?

5-4 PEGをつくったら施設に入りにくくなるのかな?

第6章 PEG周囲のスキンケアと事故抜去に関する疑問
6-1 日常、どんなことに気をつけてPEGの周囲を観察すればいいの?

6-2 PEG周囲のスキンケアはどうすればいいの?

6-3 スキンケアに必要なものは?

6-4 事故(自己)抜去を防ぐ工夫はどうすればいいの?

第7章 PEGのトラブル予防と起こった時の対処法
7-1 PEGのトラブル予防のために

7-2 カテーテル・漏れ・老廃物の状態

 カテーテルの状態

 漏れの状態

 老廃物付着の状態

コラム 客観的指標の作成こそPEG患者さんへの思い

7-3 皮膚の状態

 発赤

 硬結(しこり)

 湿疹

 水疱

 びらん・潰瘍

 肉芽

7-4 PEG管理中のトラブル

 嘔気・嘔吐・胃食道逆流

 便秘

 下痢

 栄養剤が滴下しない

 微量元素・ビタミンの欠乏

第8章 経口摂取に向けて
8-1 口から食べられるようにリハビリするにはどうすればいいの?(間接嚥下訓練編)

8-2 口から食べられるようにリハビリするにはどうすればいいの?(直接嚥下訓練編)

第9章 継続的なPEG管理のために
9-1 PEGクリニカルパスってなに?

9-2 栄養管理の専門家っているの?多職種がうまくかかわるためにはどうすればいいの?

9-3 退院前に、スタッフが集まって在宅療養生活の支援体制を検討するシステムはあるの?

9-4 患者や援助者を支え合うネットワーク・情報を得るための本・HPは?

巻末資料
資料1 PEGのトラブル具体例

資料2 掲載キット・用品・栄養剤 取扱会社一覧

資料3 PEGカテーテル造設・交換用キット(一部)

資料4 PEG関連用品・口腔ケア用品(一部)

資料5 経腸栄養剤(一部)

資料6 PEGに関する診療報酬の基本

本書掲載の書式
PEG造設時の説明書・同意書

PEGカテーテル交換時の説明書・同意書

PEGカテーテル交換予約・準備表

胃ろう評価スケール

胃ろうケアフローチャート

胃ろう評価表

胃ろう管理シート

PEGクリニカルパス(医療者用)

PEGクリニカルパス(患者用)

PEG地域連携パス(患者用)

PEG地域連携パス(医療者用)