2010年12月9日木曜日

第14回日本病態栄養学会:摂食・嚥下障害の最新栄養管理

来年1月15-16日(土・日)にパシフィコ横浜で第14回日本病態栄養学会が開催されます。詳細なプログラムは下記のHPにあります。

http://www.eiyou.gr.jp/gakujutsu/program/index.html

私は16日のシンポジウムIII 摂食・嚥下障害の最新栄養管理に参加します。演題名を見る限り多彩な発表内容ですので、各演者の発表後のディスカッションテーマを1つに絞るのは難しい気がします。

1月16日(日) 10:30~12:00 第3会場(501)
座長 東京医科大学 リハビリテーションセンター 西野 誠一
    地域栄養ケアPEACH厚木 江頭 文江

SIII-1 脳卒中後胃瘻患者における胃排出能と肺炎発症との関連
  慶信会記念病院 内科 上田 章人

SIII-2 4段階の嚥下咀嚼訓練食導入による有用性の調査
  名古屋市立大学病院 臨床栄養管理室 伊藤 明美  

SIII-3 嚥下障害へのチーム対応
  福井県済生会病院 耳鼻咽喉科 津田 豪汰

SIII-4 摂食・嚥下障害患者における補助食品使用による転帰の違い
  NTT東日本伊豆病院 リハビリテーション科 馬渡 敏也 
 
SIII-5 筋萎縮による摂食・嚥下障害のリハビリテーション栄養管理
  横浜市立大学附属市民総合医療センター リハビリテーション科 若林 秀隆

SIII-6 摂食・嚥下機能に配慮した摂食機能訓練パスによる多職種の取り組み
  東京医科大学病院 栄養管理科、NST 佐藤 知世

筋萎縮による摂食・嚥下障害のリハビリテーション栄養管理の抄録です。

 摂食・嚥下障害の原因の1つに、嚥下筋のサルコペニアがある。サルコペニアの定義は、狭義では加齢に伴う筋肉量の低下、広義ではすべての原因による筋肉量・筋力の低下となる。広義のサルコペニアの原因には、加齢、活動(廃用)、疾患(侵襲、悪液質、原疾患)、栄養(飢餓)がある。

 高齢者では加齢に伴い嚥下筋のサルコペニアを認めることが増加する。廃用は活動性や運動量の低下した状態の継続で生じる二次的障害である。絶食で嚥下筋の廃用性筋萎縮を認める。誤嚥性肺炎などの侵襲で嚥下筋も含めた筋蛋白の異化が亢進する。悪液質は、がん、結核、エイズ、関節リウマチ、慢性心不全、慢性腎不全、肝不全、慢性閉塞性肺疾患などで生じ、嚥下筋も含めた筋肉の喪失が特徴である。早期診断・介入のために前悪液質の概念がある(悪液質の原因となる慢性疾患の存在、6ヶ月以内に5%以上の体重減少、慢性・再発性の全身炎症反応:CRP陽性、食思不振の4項目すべて該当で診断)。原疾患による筋萎縮には、多発性筋炎や筋萎縮性側索硬化症などがある。飢餓では嚥下筋も含めた筋蛋白が異化する。

 サルコペニアによる摂食・嚥下障害に対しては、これらの原因の有無を判断した上で、栄養管理と嚥下筋のレジスタンストレーニング(頭部挙上訓練、舌筋力強化訓練)を適切に行う。加齢と廃用が原因の場合、栄養障害を認めなければ主な治療は嚥下筋のレジスタンストレーニングである。栄養障害を合併している場合には、適切な栄養管理を併用する。疾患が原因の場合、原疾患の治療が最も重要である。高度侵襲下では、適切な栄養管理とリハビリテーションを行っても摂食・嚥下機能の改善は難しい。悪液質の場合、エイコサペンタエン酸の投与と廃用や飢餓の予防を同時に行う。飢餓が原因の場合、主な治療はリハビリテーションではなく栄養改善である。栄養改善なしにレジスタンストレーニングを行うとかえって摂食・嚥下障害は悪化する。

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