今日で今年のブログの執筆は終わりとさせていただきます。1年間、どうもありがとうございました。来年もブログを継続できればと考えていますので、引き続きよろしくお願いいたします。
今日は、「栄養とリハビリテーション」の日本の先駆者を紹介したいと思います。「リハビリテーション栄養」という言葉を作ったのは私ですが、その前から「栄養とリハビリテーション」の重要性を訴え続けている先生がいます。それは近森会の近森正幸先生です。
2005年の静脈経腸栄養ですでに「栄養とリハビリテーションを同時に行う大切さ」を訴えています。
近森 正幸. 非経口栄養管理における管理栄養士の役割 : ―医師の立場から― . 静脈経腸栄養 20: 3_3-3_8, 2005
抄録
管理栄養士の役割は大きく変わり、厨房を出て病棟に行く時代になった。その際「腸管を使う大切さ」を充分自覚し、「栄養の目的は骨格筋の量を増やすこと」から栄養とリハビリテーションを同時に行う大切さを理解してNSTに参加してほしい。経腸栄養は管理栄養士が最も活躍できる舞台であり、なかでも栄養評価と栄養プランの作成は管理栄養士の最大の役割である。
積極的に患者のもとに行き栄養評価を行ない、病態を考えながら栄養プランを作り、NSTカンファレンスを通じて常に栄養プランを経時的に見直し、plan do seeを行なってもらいたい。経腸栄養は、あくまで強制栄養であることから、ぜひ管理栄養士は患者の腹部触診、聴診を行ない、下痢、嘔吐などの合併症を防いでほしい。最終目標はあくまで口から食べることであり、口のリハビリテーションへの参加や嚥下食の提供を通じてスムーズな経口摂取に移行してもらいたい。
下記HPで全文PDFを見ることができます。
http://www.jstage.jst.go.jp/article/jjspen/20/3/3_3/_pdf/-char/ja/
2005年に私はこの論文を拝読させていただきましたが、とても勇気づけられた記憶があります。この頃は前医の院内で嚥下チームとNSTの活動に一生懸命で、院外でのアウトプットはあまりしていませんでした。それでも「栄養とリハビリテーションを同時に行う大切さ」は、臨床現場で認識していました。
2009年の日本老年医学会雑誌には、教育講演「高齢者栄養サポートの実践とその効果について」をまとめた論文が掲載されています。
近森 正幸: “高齢者栄養サポートの実践とその効果について”. 日老医誌 (2009); Vol. 46: 395-397 .
下記HPで全文PDFを見れます。
http://www.jstage.jst.go.jp/article/geriatrics/46/5/395/_pdf/-char/ja/
一部、この論文から引用させていただきます。
「救命後,回復するためには,食べて動くことが必要で,栄養とリハビリテーションのチーム医療が求められている.食べて動かないと骨格筋は減少し,低栄養から免疫能が低下,高齢者は慢性炎症を有していることから感染症を併発,衰弱が進み,死に至る.これらを予防するのも栄養とリハビリであり,チームでの対応が必要となる.」
このように栄養とリハの重要性を訴え続けている先生がいることは、とても心強いです。私も来年も、リハ栄養の重要性を訴え続けたいと思います。
また、近森病院、近森リハ病院の臨床栄養部の西岡心大さんと宮澤靖さんの論文「リハビリテーションと栄養管理」も2007年の静脈経腸栄養に掲載されています。
西岡 心大, 宮澤 靖. リハビリテーションと栄養管理 . 静脈経腸栄養 22: 471-475, 2007 .
抄録
脳血管疾患では、急性期を離脱しても、麻痺や嚥下障害などの機能障害が残存するため、早期からのリハビリテーションが必要である。特に嚥下障害は脱水や低栄養を招き、食べるという基本的欲求を喪失することに繋がる。摂食嚥下リハビリテーションは、まず摂食嚥下評価を行い、摂食嚥下能力を把握することから始まる。食物を用いた直接訓練はゼラチンゼリーから開始するのが安全である。モニタリングを行い、必要栄養量・水分量が適切なルートから投与されるように計画する。また、外科手術前に、心肺機能トレーニングや筋力トレーニングなどの術前リハビリを6~12週間実施すると、手術侵襲、活動量低下による機能低下を抑制することが報告されている。栄養管理とリハビリは相補的にはたらき、リハビリ実施中の患者に対する栄養サポートは、ADL向上という側面からも有効性が期待できるが、明確な基準はまだ存在していない。我が国の実情を考慮した形で、可能な限り早期からのリハビリ実施と、術前の栄養状態の維持改善が推奨される。
下記HPで全文PDFを見ることができます。
http://www.jstage.jst.go.jp/article/jjspen/22/4/471/_pdf/-char/ja/
こういった論文を見ても、近森会グループの病院では、リハ栄養の質が極めて高いことが伺えます。臨床栄養に関しては宮澤さんや真壁さんたちがいますから、当然と言えば当然ですが…。近森会の先生方から学ぶことは実に多いです。
来年は「栄養とリハビリテーション」に取り組む仲間を増やすとともに、リハ栄養をテーマにした何らかのコミュニティもしくは研究会を立ち上げたいと考えています。来年も何卒よろしくお願い申し上げます。
2010年12月30日木曜日
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