2011年3月23日水曜日

被災地の脳卒中・リハビリ医療の苦境を緩和するための提言

澤田石先生から仙谷官房副長官宛の「被災地の脳卒中・リハビリ医療の苦境を緩和するための提言」を転載します。以下、転載です。

澤田石 順と申します。私は鶴巻温泉病院(神奈川県秦野市)の回復期リハビリ病棟に勤務
している医者です。リハビリ棄民政策(日数制限と成果主義)に反対して行政訴訟を二つ戦
い、最高裁が上告不受理で法廷闘争は終結しましたが、故多田富雄先生との約束を果たす
べく今日まで微力を尽くしております。
上先生らの「現場からの医療改革推進協議会」で幾度が仙谷先生のご挨拶を拝聴し、医
療改革のための先生のご尽力を知り、医療改革への熱意に感動しました。昨年三月、土屋
良介先生と村重直子先生のご苦労様会でのご挨拶のおり、先生はほとんど涙ぐまれて土屋
先生と村重先生に言葉をかけられておりました。日本国は先の敗戦後、最悪の非常事態に
いたってしまいました。報道によると、菅総理は「官邸の被災者生活支援の態勢を強化す
るため」に仙谷先生に巨大な責任を与えられたとのことであります。このメールで訴える
ことは、仙谷先生からすると各論のなかの各論でありますが、厚生労働省ないしその偽装
機関である中医協の委員に意見を具申しても単に無視されることが確実なので、お願いし
ている次第です。
今ここにある危機(clean[now] and present danger)に直面した時、首相官邸・内閣の
指導性発揮が必要です。このメールでは私見を述べ、最後に被災地の医師の訴えを掲載い
たします。どうか熟慮の上、必要と判断された方策を断行して下さるようお願い申し上げ
ます。

■被災地でのリハビリ医療の現状と明白な諸問題
医療人はいろいろな分野でそれぞれ可能な限りの努力をしているところであります。被
災地におけるリハビリ医療の状況が明らかになって参りました。厚労省告示である日数制
限や成果主義制度が適切かつ必要な医療提供を阻害し、良心的な医療機関を苦しめること
になる(なっている)のです。

a.被災者における脳卒中発症が増加している(骨折等に起因してのリハビリ必要者も増加
していると推察されます)⇒リハビリを必要とする患者の絶対数増加

b.救急病院に入院している脳卒中等でリハビリが必要な患者が回復期リハビリ病棟に入院
することが困難⇒回復期リハ病棟には「発症」(受傷)から60日以内でないと入院できない
ために必要なリハビリを受けることができない患者が増加している(ないしは確実に予想
される) (※もともと60日以内の日数制限の問題点は幾度も指摘されてきましたが厚労省
は無視しており、中医協の医師委員も無視)

c.回復期リハビリ病棟からの退院先確保が狭まっている すなわち、i)自宅に退院できる
患者の場合、自宅が消滅していたり被災してたり ii)自宅に退院できない患者の場合、
老人保健施設、療養病院、特別養護老人ホーム等が被災しているため行き場がない。

d.a~cの結果として、救急病院から回復期リハビリ病棟に移動すべき患者が急性期病院の
ベッドを埋め、回復期リハビリ病棟から退院すべき患者が回復期リハ病棟に入院し続ける
ことが多くなっている。老人保健施設や療養病院から自宅に退院する道筋ももちろん狭ま
っている。

e. 回復期リハビリ病棟は「自宅等退院率」が6割を切ると、診療報酬で懲罰的な減額を受
ける。このままでは被災地の回復期リハビリ病棟が受け取る診療報酬が激減して経営危機
に陥りかねない

f.リハビリ開始から最長180日でリハビリが打ち切られる制度が存在する。被災地の医療
資源不足はリハビリ医療でも生じており、一日あたりリハビリ時間が減少していることは
確実。したがって日数制限を超えてもリハビリを継続すべき患者の絶対数が増加する。厚
労省は「医師が改善可能性を認める書類を作成・提出したら、日数制限から除外される」
としているが、現実には書類を作成しても支払い基金等は個別の事情を無視して診療報酬
の打ち切りないし削減をしてきたため、医療機関は日数制限を越えてリハビリを提供する
ことがまれになっていた⇒リハビリ日数制限による被害者の増大は確実と考えられる

■解決手段
行政刷新会議のライフイノベーションWG(土屋良介先生が主査)の結論文書に「リハビリ
日数制限廃止」が明記されています。三月中に閣議決定の見込みですが、この混乱状態な
のでいつになるかわかりません。

1.ライフイノベーションWGの結論であるリハビリ日数制限廃止だけは速やかに閣議決定し
、厚労省告示である「リハビリ日数制限」を速やかに廃止する。診療報酬制度の変更は中
医協での賛成を必要とすると厚労省は苦情を言うであろうが、官僚の抵抗など無視して厚
労大臣の告示を出せばよい

2.発症(受傷)から60日以内でないと回復期リハビリ病棟にいけないという告示も、内閣主
導で廃止する。「医師がリハビリによる回復可能性を認める患者は回復期リハビリ病棟に
入院できる」との告示を発する。

3.回復期リハビリ病棟の患者の6割以上が自宅等(自宅、高齢者専用住宅、特別養護老人ホ
ームなど医者不在のところ)に退院しないと、病院への診療報酬を大幅に減額する告示(成
果主義)を廃止する

これらの政策を断行することにより、被災地の救急病院から回復期リハビリ病院への流
れは改善します。回復期リハビリ病院(病棟)からの退院先確保はこれらにより速やかに改
善はしませんが、リハビリ日数制限や成果主義により「良心的」な回復期リハビリ病院(
病棟)が金銭的な懲罰を受けることがなくなれば、リハビリ病院が増床することが可能と
なり、結果として救急病院からリハビリ病院への流れは改善します。

内閣が上記の解決手段を厚労省に提案すると必ずやこう主張することでしょう。
○被災地に限り、リハビリ日数制限(60日以内との入り口制限、180日まで
という中途切捨て)と成果主義を「一時的に猶予」することは認める
被災地のリハビリ医療資源の絶対量が減じている現実を顧慮すると、リハビリを必要とす
る患者を被災地外に移送せざるを得ないことは明白です。したがって、「被災地」に限り
「猶予」するような施策は不十分であります。

■東北大リハ科 西嶋一智先生よりの意見
「リハビリ医療と東北関東大震災を考える」 http://rehayjishin.jugem.jp/ より

//引用開始
【制限緩和の働きかけの要望】(3月22日付 日本リハビリ医学会会員用掲示板より)

厚労省は今回の震災に関して保険診療上の取り扱いについて幾つかの基準緩和の通達を出
していますが、まだ物足りない点があると思いますので、次の点の緩和策をぜひ厚労省へ
働きかけていただきたいと思います。

その立場にある先生方にご検討いただけると幸いです。

1. 回復期リハビリテーション病床への入院基準
(発症から入院まで2or1ヶ月以内)の一時的撤廃or延長

2. 疾患別リハビリテーションの算定日数上限の一時的撤廃or延長

1.により、震災に伴う混乱で回復期リハビリテーションへ進む機会を逸してしまった患者
さんを救済できます。

また、2.と合わせることで、十分なリハビリテーション介入を受けることなく退院してベ
ッド確保にご協力いただいた患者さんに対して、遅ればせながらも最大限のリハ介入を提
供することができるようになります。

より患者さんの協力を引き出しやすくするためにも、急性期病院の懸念を少しでも解消す
るためにも、早めにこの「配慮」を取りつけたいところです。

どうぞよろしくお願いします。
(既にその方向で動いていらっしゃるようでしたら、申し訳ございません。)
//引用終了

■おわりに
仙谷先生、是非とも現場の声を是非とも直接聞いてください。
http://rehayjishin.jugem.jp/ に掲載されている被災地で奮闘しているリハビリ専門医
は以下のとおりであります。
1) 東八幡平病院(岩手県) 及川忠人先生
2) 盛岡繋温泉病院(岩手県) 小西一樹先生
3) 南昌病院(岩手県) 本田惠先生
4) 国立病院機構岩手病院(岩手県) 佐藤智彦先生
5) いわてリハビリテーションセンター(岩手県) 大井先生
6) 大崎市民病院(宮城県) 今田元先生
7) 国立病院機構宮城病院(宮城県) 大隅悦子先生
8) 宮城厚生協会坂総合病院(宮城県) 冨山陽介先生、藤原大先生、阿部理奈先生
9) 東北大学病院(宮城県) 上月正博先生、森信芳先生、長坂誠先生、海老原覚先生
、伊藤修先生、田中尚文先生、近藤健男先生、瀬田拓先生、古澤義人先生、杉山謙先生、
西嶋一智先生、森隆行先生
10)宮城厚生協会長町病院(宮城県) 水尻 強志先生
11)東北労災病院(宮城県) 原田 卓先生
12)東北厚生年金病院(宮城県) 渡邉裕志先生
13)東北公済病院宮城野分院(宮城県) 小川 美歌先生
14)北福島医療センター(福島県) 大槻剛智先生
15)太田西ノ内病院(福島県) 高橋博達先生、金成建太郎先生
16)寿泉堂綜合病院(福島県) 菅野裕雅先生
17)星総合病院(福島県) 阪本次夫先生
18)医療生協わたり病院(福島県) 佐藤武先生
19)国立病院機構いわき病院(福島県) 千葉勝実先生
20)南相馬市総合病院(福島県) 藤原正敏先生

2 件のコメント:

  1. 匿名8/23/2013

    澤田石はリハビリ専門医じゃないだろ。
    専門医が1つもないだろ。

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  2. 匿名8/30/2013

    被災地のドクターは賛同してるのかな。代弁しているような引用は、法的にも問題だろ!?

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