2011年3月2日水曜日

がん患者における栄養スクリーニングと低栄養の早期治療


がん患者における栄養スクリーニングと低栄養の早期治療に関するレビュー論文を紹介します。

Lidia Santarpia & Franco Contaldo & Fabrizio Pasanisi: Nutritional screening and early treatment of malnutrition in cancer patients. J Cachexia Sarcopenia Muscle DOI 10.1007/s13539-011-0022-x

以下のHPで全文見れます。

http://www.springerlink.com/content/w764142760545761/fulltext.pdf

詳細な栄養評価には以下の5つの項目が必要とあります。詳細な栄養評価では当然、どれも重要です。ただ、単独で最も重要なパラメーターは体重減少とありました。

1. Social demography (gender, age, professional status, and living conditions)

2. Primary tumor (site, disease stage at diagnosis) and the management of the disease (previous and on-going treatments)

3. Anthropometry (actual weight, body mass index [BMI, the weight in kilograms divided by the height in centimeters squared], usual healthy body weight, unintentional weight loss since the start of the illness, or appearance of the first symptoms; weight loss during the last week, the last month, and over the last 6 months;

4. Clinical examination, Subjective Global Assessment and Karnofsky Index (evaluating functional capacity)

5. Biochemical data: serum albumin, prealbumin, total lymphocyte count cholesterol, C reactive protein (CRP), pseudocholinesterase (PChE)

このうち、Pseudocholinesterase(偽性コリンエステラーゼ)は私は初めて聞きました。コリンエステラーゼは栄養指標に用いますが、偽性コリンエステラーゼとの違いはよくわかりません。ご存知の方がいましたら、教えていただけると嬉しいです。よろしくお願いいたします。

論文に掲載されていた栄養評価のアルゴリズムを示します。概ねこの通りに進めていけばよいかと思いますが、1点だけ納得いかないところがあります。消化管を使用できるかどうかの後に嚥下障害がないかどうかを判断していますが、この順番はおかしいと考えます。嚥下障害の有無を先に評価して、その上で消化管を使用の可否を判断すべきです。

がんのリハビリテーションの項目が論文内にあることは嬉しいです。栄養の論文の中にリハの記載が、リハの論文の中に栄養の記載がもっと増えることを期待しています。

Abstract
Background Malnutrition is a frequent complication in
patients with cancer and can negatively affect the outcome
of treatments. On the other hand, side effects of anticancer
therapies can also lead to inadequate nutrient intake and
subsequent malnutrition. The nutritional screening aims to
identify patients at risk of malnutrition for prompt treatment
and/or careful follow-up.
Methods and results This manuscript highlights the need of
an interdisciplinary approach (oncologist, nutritionist, dietitian,
psychologist, etc.) to empower patients who are
experiencing loss of physiological and biological function,
fatigue, malnutrition, psychological distress, etc., as a result
of cancer disease or its treatment, and maintain an
acceptable quality of life.
Conclusions It is necessary to make all healthcare professionals
aware of the opportunity to identify cancer patients
at risk of malnutrition early in order to plan the best
possible intervention and follow-up during cancer treatment
and progression.

2 件のコメント:

  1. みかち3/03/2011

    いつも拝読して勉強させていただいています。

    消化管が使えるかどうかの判定の前に嚥下障害を評価するべき、というのは一概にはいえないと思います。
    食道がんや口腔・中咽頭がん等では、経管栄養のためのチューブを手術の時に同時に留置しますし、ほとんどの外科手術では縫合不全等がないかどうかを先に調べて、経腸栄養から開始をすることがほとんどです。(その際は、造影剤を飲ませないで、チューブ等で注入して調べます)消化管が使用できることがわかった上で、さらに嚥下障害があれば経腸栄養を継続し、なければ経口に少しずつ切り替えていく、というのが順序になっています。ERASプロトコールのように、術後すぐに経口摂取開始、という外科もありますので、その際は先に嚥下障害の評価をする、というのが順序になります。手術の方法や、その病院の栄養管理のパスによって、嚥下障害の評価が消化管使用ができるかどうかの評価に前後する、というのはあると思います。

    もしかして日本でそんなやり方をしている病院は少ないのでしょうか?いきなり造影剤を飲ませて消化管造影したりしてるんでしょうか。それだと誤嚥がこわいですけど…。

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  2. みかちさんから以下のようなコメントをいただきましたが、うまく掲載されていなかったので、私のほうで再掲させていただきます。以下、コメントです。

    いつも拝読して勉強させていただいています。

    消化管が使えるかどうかの判定の前に嚥下障害を評価するべき、というのは一概にはいえないと思います。
    食道がんや口腔・中咽頭がん等では、経管栄養のためのチューブを手術の時に同時に留置しますし、ほとんどの外科手術では縫合不全等がないかどうかを先に調べて、経腸栄養から開始をすることがほとんどです。(その際は、造影剤を飲ませないで、チューブ等で注入して調べます)消化管が使用できることがわかった上で、さらに嚥下障害があれば経腸栄養を継続し、なければ経口に少しずつ切り替えていく、というのが順序になっています。ERASプロトコールのように、術後すぐに経口摂取開始、という外科もありますので、その際は先に嚥下障害の評価をする、というのが順序になります。手術の方法や、その病院の栄養管理のパスによって、嚥下障害の評価が消化管使用ができるかどうかの評価に前後する、というのはあると思います。

    もしかして日本でそんなやり方をしている病院は少ないのでしょうか?いきなり造影剤を飲ませて消化管造影したりしてるんでしょうか。それだと誤嚥がこわいですけど…。

    以上、みかちさんからのコメントです。以下、私のコメントです。

    貴重なコメントをくださり、どうもありがとうございました。

    食道がんや口腔・中咽頭がん等で経管栄養のためのチューブを手術の時に同時に留置することは確かに多いですが、これは術後に嚥下障害で経口摂取が難しいことを術前に評価したうえでのことだと私は解釈しています。嚥下に支障が少ない手術であれば、チューブを同時に留置する必要はないのではと思います。

    外科手術後に縫合不全等がないかどうかを先に調べる際に、造影剤を飲ませないで、チューブ等で注入して調べるのは、そのほうが安全なだけでなく容易に検査できるから(胃排出後まで時間をかけて観察するのは時間的に面倒ですよね)だと思います。いきなり造影剤飲ませる病院は少ないでしょう。

    その後、嚥下機能を評価せずに経管栄養から開始してしまうのはどうかと私は感じています。一方、ERASだからといって嚥下機能を評価せずに、安易に5分食あたりで経口摂取を進めていくと誤嚥しやすい食事なので誤嚥性肺炎になる可能性もあります。

    評価の順番が若干前後することは構わないと思いますが、腸管機能しか評価しないでしばらく進めていくことには問題があると考えています。今後ともよろしくお願いいたします。どうもありがとうございました。

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